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普賢のまわりの人たち
黄金花園伝
道行天尊&韋護の金庭山師弟本「黄金花園伝」に掲載した書き下ろしです。
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種は一種類蒔き終われば、また新たに別の種を持たされた。そのたびに前に埋めた場所を避けなければいけなかったし、そうすると嫌でも時間はかかった。それでも、不思議と苦痛に感じなかったのは、手間がかかるとかなんとか言いわけをすれば、日がな一日、庭で過ごしても咎められなかったからだった。古い木々はよく見ると、枝のあちこちに新しい葉が出はじめていた。こんなんでもちゃんと生きてるんだなと思いつつ、仕事に疲れれば土の上にごろんと仰向けになって空を仰いだ。師もうすうすわかっているはずだけれど(背中だけ汚れるからバレないわけがない)、これも「適性を見ている」うちに入るんだろう。よほど適性がないなら破門だそうだが、それならそれで、そのときに考えればいい。
韋護が蒔いた種は、蒔いた順番に順調に芽を出しはじめた。ときどき来る嵐に負けて、土に萎れるものもあったが、師は「そういうこともありまちゅね」と涼しい顔をする。
「なあ、師匠。こういうの、仙人の力で生き返らせたりできねえの」
萎びた苗を差し出すと、道行はそれをぽいぽいと手元の籠に放り込んだ。
「今日の夕飯にちましょうかね」
「食う?!」
「そのまま捨てるよりいいでちゅよ」
「そりゃそうだけど」
「それがイヤなら、キミがなんとか考えればいいでちゅ。自然に淘汰されるのをほっといてもよし、工夫ちてもよし」
仙人の力って案外役に立たないのかもしれない。
というか(食えるのか、あれ)
結局その日の夕餉の汁物に、間引いた苗が入っていた。しんなりした青菜は、べつだん旨くも不味くもなかったが、師は「命をいただいているんでちゅから感謝して食うよーに」と念を押した。
「いいでちゅか、韋護」
すべてきれいに平らげてから、師はとりすました顔で口を開いた。
「仙人道士は自然の摂理を覆す超人じゃないでちゅよ。どれだけ修行を積んで、常人にはない力を得ても、できることとできないことがありまちゅ」
「できないこと」
「死んだものを生き返らせたりでちゅね。ボクにもとうてい無理な話でちゅ」
「へえ
……
」
「でも、危険から守ることはできまちゅ。そのために宝貝を使うんでちゅ」
「宝貝」
「仙人のチカラを増幅させる必殺へーきでちゅ!」
「じゃあ、それくれよ」
「キミにはまだ無理でちゅ」
「なんで」
「適性を見てると言ったでちょ」
なんとなく腑に落ちない心もちで「じゃあどうすればいいんだよ」と反論すれば、師は「そうでちゅねー」と思案するそぶりをしてから、
「まずはあの庭をなんとかちてからでちゅかね」
「庭
……
」
漠然としすぎている。結局どうすればいいんだ?
むくれる子供をなだめるみたいに、道行は笑った。
「宝貝はなんでもいいわけじゃないんでちゅ。キミにふさわちいものじゃなければ、いくら勇まちい宝貝を振り回ちたところで、夕餉の汁の具にもならないんでちゅよ」
だったらさっさとそれなりの修行をして、とっととふさわしいものをくれればいいのにと、韋護は思うのだけれど、案の定、翌日からもただ平穏で変化のない日常が続くだけだった。
一見、邪気のない赤んぼみたいな風貌で油断させ、立派な仙人になれます!などと大ホラ吹いて連れてきておいて、あとはほぼ放置なんて、これじゃあ人さらいと同じだ。
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