七海ななみ
2025-12-26 06:45:57
3163文字
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面影④

ルカキリであってルカキリでないシリーズです。宣戦布告する曾孫とファルカの区別がごっちゃ混ぜになってきているフリンズ。
一話目 面影① | Privatter+ https://privatter.me/page/69495d64d1bc7
二話目 面影② | Privatter+ https://privatter.me/page/694b630e933ab
三話目 面影➂ | Privatter+ https://privatter.me/page/694c05137064e

あのあと、西風騎士団により魔物は無事に討伐された。
僕は、ずっとファルカに手をつながれていたため、逃げられなかった。でも、チャンスはあるはずだ。
西風騎士団に連れてこられ、個室で一人待つよう言われる。
今しかない。
棚の上にランプだけの状態になる。ここなら、視界に入らないだろう。

「待たせたな! キリル?」

ファルカが個室でキョロキョロ見回す。大丈夫だ。見つからないはずだ。このまま、隠れていたら、きっと───

「ここにいたのか」

棚の上にあるランプを持ち上げられる。

綺麗な蒼炎だな」
『おまえの蒼炎、本当に綺麗だ』

声が、重なる。
固まりそうになるが、それどころではない。
何故、ランプに隠れているのがバレている?

「さっき、手をつないだ時に風元素で印をつけておいたんだ。 本当に妖精、なのか?」
………はい、僕はフェイです」

もう隠れてても無駄だろう。諦めて姿を現す。

「道理であれだけ探しても見つからない訳だ。それともうひとつ。そのランプ、俺の実家にあるやつ、だよな?」
………はい」
「もしかして、ずっと実家で一緒にいたのか?」
………そうです」

探していた相手は家の中にいた。
その事実にファルカが悔しそうにしていた。
あまり見たことがない顔だ。
顔をじっと見ていると、少し照れ臭そうにしている。
たが、真剣な表情になり、見つめ合う。

「改めて礼を言わせてくれ。キリルがいなければ本当に危なかった。共にモンドを護ってくれて本当に感謝している」

敬礼をされる。
そうだ。僕はモンドを、ファルカを護りたい。
ファルカから礼を言われ、心が舞い上がる。
マカライトのような緑色の瞳が、嬉しそうに細められる。
緑色の瞳?
僕は、ファルカを重ね、区別が、つかなくなっている?

「西風騎士団大団長ファルカとして、キリル・チュードミロヴィッチ・フリンズに蒼炎騎士の称号を与える」

そんな声も聞き取れないほど動揺していたため、気がつけば西風騎士団として所属することになっていた。



──────



確かに、バレているなら西風騎士団に所属するのは悪いことではない。
これなら堂々とモンドを護ることができる。
ファルカがいなければ、もっと素直に喜んでいたかもしれないが。
余所者の僕が西風騎士団で浮かないか心配していたが、アビスの封印に助力したのは予想以上感謝をされていたらしく、他の騎士からも歓迎された。
どちらかと言うと、生暖かい目で見られることが多い。

「キリル! 今日も綺麗だな」
おはようございます、大団長」
「ファルカと呼んでくれてもいいんだぞ」
「上司に対して礼節に重んじて接しているだけです」

仕事以外で口説いてくるファルカのせいである。
どうやら、“ファルカの初恋”は西風騎士団で有名な話だったらしい。多くの女性が玉砕したそうだ。
誰とも付き合わず、初恋の相手を探し続ける姿に、まるで吟遊詩人が唄う愛の話のようだと。初恋の相手が男性であろうと関係がなかったようだ。
西風騎士団はまあいい。仕事も、ワイルドハントを殲滅させたライトキーパーでも似たようなことをしていた。生暖かい目は流せばいい話だ。
問題は、僕自身だ。このまま近くにいて、いいのだろうか。
少しずつ、無意識に、ファルカの面影を重ねている。
離れたい、でも離してくれないのだ。どうすれば
そう思案していると、カレンダーが目に入る。
そういえば、もうそんな時期か。
ファルカの命日が近づいていた。

ファルカの命日に合わせ、休暇申請を提出する。
提出先は、大団長だ。
なにか言われるが不安だったが、休暇申請を受理してくれた。
だが、ファルカの表情は暗い。

「もしかして、曾祖父さんの墓参りか?」

継げれた言葉に、思考が止まる。
固まっていると、やっぱりな、と小さく笑った。

「俺も休む。だから、一緒に墓参りをしよう」

否定することなど、できなかった。


────────


セシリアの花を匂いを漂わせながら、歩く。
普段は深夜に一人で行っていた。昼間に行くのは初めてだ。

………
………

互いに口数が減り、何も喋らなくなる。
ファルカの墓の前に着き、セシリアの花を供える。
静かに祈りを捧げる。
何時もはモンドのことや、ファルカの子孫について語っていた。でも、今回は言葉が浮かんでこない。
必死に言葉を探していると、

………曾祖父さんを愛しているのか?」

告げられた言葉に、目を見開く。
ファルカに向き合うと、悲しげな表情をしていた。

「あの絵本は曾祖父さんがスネージナヤから取り寄せたものだし、なんでキリルが実家にいたのか不思議だったんだ。曾祖父さんの血を継いでいるから、だろ?
互いに愛し合って───「それは違います!」

言葉を遮る。違うのだ。愛し合っていなかった。

………確かに、かつてファルカさんとお付き合いしていたことはありました。でも、互いに譲れないものがあったので別れました。その後、ファルカさんは結婚されました。あの別れから、亡くなるまで会っていません。
今でも、愛しているのは、僕だけなんです」

ファルカには愛する妻と子供ができた。
僕のことなど、忘れているはずなのだ。僕だけが、未練がましいだけなのだ。
僕の言葉を聞いたファルカが、墓石に触れる。

「曾祖父さん、あんたの蒼炎、俺が貰うぞ」

手を繋がれ、歩かされる。
ファルカの表情は、見えなかった。


───────


ファルカの部屋に連れ込まれる。
両肩を力強く握られる。
ファルカは、悲痛な表情で、苦しそうで。

「キリル、好きなんだ。あの時からずっと好きなんだ」
………僕は、あなたを好きになる資格がありません」
「曾祖父さんに似てるから、か?」
………

言葉を出せずにいると、顎を持ち上げられ、口付けをされる。
抵抗をするが、頭まで押さえつけられてしまい、逃げられない。
それでも暴れていると、舌が入り込んでくる。
舌を絡み取られ、口の中の空気を奪い合う。
与えられる熱に、涙が溢れてくる。
口が離れると、ベットに押し倒される。

「頼む、俺を見てくれ」

ファルカの涙を見ていたら、抵抗などできない。
これからされるであろう出来事に、何も見ないように、目を閉じた。


────────


わかっていたのだ。俺を通して誰かを見ていると。

俺は、最低だ。
好きな人を無理矢理抱いた。
キリルは、目を閉じて、泣いていた。抵抗は諦めていた。
それでも俺は抱いた。俺を見てほしかった。
こんなことをして、見てくれるわけ、ないのに。

翌朝、キリルは手紙を残して姿を消した。
手紙には“ごめんなさい”とだけ書かれていた。
それは告白の返事なのか、俺に対する謝罪なのか、わからない。
でも、諦めることなどできない。そう簡単に、諦められない。

騎士団にて、俺とキリルの長期休暇を申請する。
周りから新婚旅行か?とからかわれたが、軽く流す。
居場所は以前つけた風元素があるから、ある程度わかる。
後は、キリルを説得する材料が必要で。
あまり気が乗らないが、そうも言ってられない。
実家に戻り、曾祖父さんの遺品を探す。
何か、手掛かりはないのか。そんな願いを込めて。
曾祖父さんが愛用していた引き出しを探すと、隠し引き出しがあることに気付く。底板を外すと、機械の筒が出てきた。

機械の筒には“蒼炎に捧げる”と掘られてあった。


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