「ファルカ、そなたに西風騎士大団長、北風騎士の称号を授ける」
それは、偶然なのか、必然なのか、誰にもわからない。
曾祖父は歴史に名を残す西風騎士大団長の北風騎士ファルカ。
顔立ちが似てるということもあり、同じ名を与えられた。
西風騎士になったとき、肖像画を見せてもらったことがある。
…確かに瓜二つだった。同じ名をつけたくなる親の気持ちもよくわかる。違うのは瞳の色くらいだ。
幼い頃は、よく弄られていた。
『大丈夫です。あなたは勇敢な騎士ですよ』
騎士の道を志すきっかけは、初恋の人の言葉だ。
あの時は両親にえらく叱られたが、今でも忘れることができない。
蒼い炎、長く美しい髪、優しい声、綺麗な瞳も全て覚えている。
あれからずっと探しているが、未だに見つかっていない。
…本当に、妖精なのかもしれない。
初恋を拗らせすぎて両親からも心配されているが、未だにあの人に囚われているのだ。どうしようもないくらい。
あの人の言葉通り、立派な騎士を目指し、ついに曾祖父と同じ北風騎士の名を継いだ。
…せめて、立派な騎士になれたことを、あの人に届いていることを願う。
────────
成長したファルカを見てから、動揺が隠せない。
両親の話から、“ファルカ”と同じく大団長になり、北風騎士の名を継いだ、らしい。
このままだと、ファルカを重ねずに、いられない。
僕は、ただ、モンドとファルカを護りたいだけ、なのに。
…離れないと、壊れそうに、なる。
深夜、寝静まっていることを確認して、人の姿を取る。
ランプだけ拝借し、外に飛び出した。
町に飛び出すと、騒がしい。
耳を澄ませると、騎士の声が聞こえる。
「状況報告を」
「千風の神殿よりアビスの汚染を観測、現在はファルカ大団長が対応されております。状況は芳しくありません」
「すぐに増援を手配する!」
アビスの、汚染。
今なら、逃げられる。
にげ、られる
…。
ナドクライを去るファルカの姿が、脳裏を過った。
────────
「大団長に就任してすぐにこれとは
…」
突如発生したアビス汚染は大量の魔物を産み出し、なんとか前線を持ちこたえてる状況だった。
だが、何時まで持つかわからない。だが、前線を崩壊させるわけにはいかない。
モンドも、あの人も、護りたい。だから、俺は騎士になったんだ!
「大団長、ご報告したいことが!」
「なんだ、手短に言え!」
「千風の神殿より謎の男がアビスの汚染を封じたとのことです! 男性は魔物の残党を討伐しているそうです!」
「
…その男の特徴は?」
「長い髪に長槍を携え、腰にはランプをぶら下げている、と」
「
………!!」
間違いない、あの人だ!!
魔物の勢いが減っている。今なら抜けても大丈夫だろう。
指示を送り、千風の神殿へと走った。
敵を凪払いながら、前へ進む。
夜を彷彿させる長髪が、視界に入った。
───────
蒼炎の力を使い、アビスを封じる。
敵を、一体でも減らす。
逃げるには絶好のチャンスだった。
でも、モンドを、ファルカを、護らなくてどうする!
無心になって戦い、気を抜いていたのだ。
風が、流れた時には、もう遅かった。
「やっと、逢えた」
ファルカの、声が。
「俺は西風騎士大団長にして北風騎士のファルカだ。今度こそ、名前を教えてくれ」
腕を捕まれる。
大きな手で、剣だこがあって、固くて、厚みがあって、大好きな手。
腕も傷だらけで、同じで。
鮮やかな、緑色の瞳が。
…緑色の瞳?
「
…離してください!」
我に返る。違う、ファルカではない!
面影が、重なってしまう!
「また消えられたら困るからな。それは無理な話だ。
…やっと見つけた。あんたは俺の初恋なんだ。どうか、名前を教えてくれ」
鮮やかな緑色の瞳が、肉食獣のような色を宿していた。
にげ、られない。
「
………キリル・チュードミロヴィッチ・フリンズ、です」
言って、しまった。
身体が、抱き締められる。
「
…キリル」
耳元で、ファルカが、僕の名前を呼んで。
記憶にある、声と、同じで。
ファルカでないのに、ファルカにもう一度、愛されて、そう、錯覚して。
僕は、最低だ。
抱き締めかえすこともできず、触れられる熱に、声に、耐えられなくなり、身動きが取れなくなってしまった。
それは、偶然なのか、必然なのか、誰にもわからない。
面影④ | Privatter+
https://privatter.me/page/694db095c41c6
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.