このシリーズはルカキリであってルカキリではないです。
おおよそのあらすじを書くと、
ナドクライで期間限定恋人のルカキリ
ファルカがモンドに帰還する際にお別れ
ファルカ、とある女性とお見合いして結婚して子供をもうける
ファルカ老衰で亡くなる
フリンズ、ファルカの子孫を護るようになる
ファルカの曾孫があまりにもファルカに似ているため、ファルカと名前がつけられる
曾孫ファルカ、フリンズに惚れて猛烈アタック
というわけで、最終的には(曾孫)ルカキリになります。
今回はまだルカキリです。ファルカが亡くなるまでのお話。
ファルカが女性と結婚して子供ができます。
地雷の方は逃げてください。
────────
全てが終わってしまったのだ。
ナドクライでの騒動が終わり、長かった遠征も終わりを迎えようとしていた。
帰還の準備で慌ただしい中、恋仲のキリルに話したいことがあったため、なんとか都合をつけて時間を作った。
夜明かしの墓に向かうと、真剣な面持ちのキリルがいた。
挨拶もそこそこに、向き合って座る。
「キリル、俺と一緒にモンドに来ないか?」
ずっと思っていた。共に帰りたいと。
モンドの酒も、花も、町も、一緒に見ていきたいと。
どうか、俺の手を取ってほしい、そんな願いを込めて、キリルを見つめた。
キリルは、俺の言葉を聞いて慌てることもなく、冷静に言葉を返した。
「
…できません。ここで、お別れをしましょう」
キリルの言葉に、息が止まる。
「元々、いずれ別れが訪れるものだと思っていました。
貴方はモンドを、僕はライトキーパーを。
互いに譲れないものがある。違いませんか?」
ワイルドハントは減ったが、壊滅はしていない。
ライトキーパーはナドクライのために、戦い続けなければならない。
「僕からライトキーパーを奪うおつもりですか?」
「
…違う、俺は、ただ、キリルと一緒にいたくて」
「なら、貴方がナドクライにいればいい。ライトキーパーとして歓迎しますよ」
「
……………」
返す言葉が、ない。
モンドを捨てれば、キリルと共にいることが、できる。
脳裏にモンドが、愛すべき住民が、西風騎士団の皆の顔が浮かぶ。
俺は、俺は
………。
「それが、貴方の答えなんです」
まるで思考を読まれたかの言葉に顔を上げる。
「貴方がモンドを愛してるのと同様に、僕もライトキーパーを愛しています。
…だから、もう無理なんです」
お別れを、しましょう。
否定の言葉も、肯定の言葉も、何も言えなかった。
何を答えるのが正解だったのか、今でもわからない。
キリルと別れることになった。
帰りの船に乗るとき、ナドクライの仲間達が見送りに来てくれた。キリルの顔をじっと見つめても、キリルはいつも通り微笑んでいた。
…俺だけが、未練がましいだけだったのだ。
姿が見えなくなるまで、キリルを見つめる。
見えなくなってもナドクライを見つめてる俺は、アルベドが声をかけるまで動けなかった。
──────────
これで、よかったのだ。
涙を見せることなく、別れることができた。
フェイと人間には寿命の差がある。
立場もあったが、いずれ貴方は僕をおいて先に逝く。
一緒にいればいるほど、別れが受け入れがたいほど辛くなる。
なら、このタイミングで別れるのが一番なのだ。
これで、よかったのだ。
夜明かしの墓に戻ると、部屋が広く感じた。
ファルカの私物がなくなっているのだ。
一人の部屋は、こんなに広かったのか。
気がつくと、頬には涙が伝っていた。
───────────
キリルとの過去を思い出す。
…あれから、かなりの時間が過ぎた。
モンドに帰還するや否や、お見合いをすることになった。
正直、乗り気ではない。こちらとて失恋したばかりなのだ。
でも、相手の女性も同様だった。
家の都合でお見合いを受けることになり、恋人にフラれたらしい。
最初はフラれた者同士として仲良くなり、互いに忘れられない人がいることを承知で結婚した。
キリルには手紙で結婚を知らせた。互いの相手は結婚式には来てくれなかった。当然のことだが、妻と共に泣いた。
男の子も生まれ、元気に育ち、騎士の道を選んだ。
妻も、息子も、愛している。
…でも、未だにキリルの事を忘れていない。
妻は昨年、先に逝ってしまった。
最期に謝っていた。俺を一番に愛せなくてすまないと。
俺も、同じだ。一番に愛せなくてすまない。
そう答えると、妻は泣き笑いをし、貴方がいてくれてよかった、そう言って眠るように亡くなった。
俺も、もう長くはない。
筋肉も衰え、ベットから立ち上がることもできないくらいに衰えてしまった。
天井にあるランプを見つめる。
暖かい光を放つランプが蒼炎にかわることを、ただ願っていた。
────────
ファルカが亡くなった。
そう聞いて、僕はライトキーパーの退職届を出した。
長きに渡る戦いの果て、ワイルドハントは壊滅した。
今のライトキーパーは警備員のような役割をしている。
それに、何時までも老けない僕は、人外の存在として怪しまれているだろう。
マスターライトキーパーになったイルーガは驚いていたが、受理してくれた。
旅支度をして、モンドに向かう。
もう、夜明かしの墓に戻るつもりは、ない。
モンドに到着すると、ファルカの葬式が執り行われていた。
西風騎士団の元大団長ということもあり、国中で壮大な葬式になったようだ。
一般客として参列する。周りを見ると、他国の人間も多数いた。本当に、人望がある人だ。
ファルカの息子がスピーチをする。
…ファルカの面影が、ある。
結婚の手紙が届いた時、既に終わった事なのに胸が傷んだ。
もし、結婚式に参列していたら、冷静を保てる自信がなかった。正解だったのだろう。
西風騎士団にも、国民にも、家族にも尊敬された素晴らしい人だったと、スピーチは締め括られる。
…正解、だったのだ。
深夜、セシリアの花を手にファルカの墓に訪れる。
セシリアの花を供え、墓石の文字をなぞる。
ファルカは、地脈に還ったのだろうか。
彼の死が安らかなものであるよう、祈る。
愛しているのだ。
他の女性と結婚し、子供が産まれ、亡くなった今でも。
ごめんなさい。あの時、手を取ることができなくて。
僕を愛してくれていたのに、僕は
…。
気がつけば涙が溢れ落ちる。
墓石にすがり、一人泣いた。
夜が明ける頃には涙は枯れていた。
…せめて、残されたものを、護りたい。
墓石に口づけを贈り、背を向ける。
今度は、貴方が愛したものを護らせてください。
──────
男は悩みがあった。
息子にイマジナリーフレンドができたのかもしれないのだ。
ランプとお喋りをしたなどという。ランプが話すわけがないのに。
息子は絵本を掲げながら言う。
「このえほんにはらんぷがおはなしするってかいてあったもん!」
息子の手には妖精のフェイにまつわる絵本があった。
…俺も昔、よく読んでいた絵本だ。
父がスネージナヤからわざわざ取り寄せたらしい。
そういえば父は、妖精に会ったことがあると言っていた。
妖精の事を聞くと、父は寂しそうな表情をしながら、
『とても、綺麗な蒼い炎だった』
そう、言っていた。
…本当に、妖精がいたのかもしれないな。
視界の隅で、蝋燭が蒼い炎を揺らいでいた。
面影② | Privatter+
https://privatter.me/page/694b630e933ab
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