七海ななみ
2025-12-24 12:50:38
2069文字
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面影②

ルカキリであってルカキリではないシリーズ。前回を読まないとわからないと思います。
面影① | Privatter+ https://privatter.me/page/69495d64d1bc7
ようやく、ファルカの曾孫のファルカくんが登場です。名前がごっちゃになってややこしいため、ファルカの愛称で『ファルキ』と表記しています。(ドイツ風な愛称)

フリンズがファルカの子孫を守るようになり、数十年が経過した。
一人で寂しさのあまり泣き出していたファルカの孫も成長し、親となり、曾孫が産まれた。
あまりにも顔立ちがファルカに似ているため、“ファルカ”と名付けられた。
赤子の寝顔を見つめる。 確かに、似ている気がする。
唯一違うのは瞳の色だ。この子はマラカイトのような不透明で深みのある、鮮やかな緑色をしている。
両親からは愛称の“ファルキ”と呼ばれ、愛情を注がれていた。
ファルキの成長を見守るのは、ファルカも同様に成長したかと思うと心が踊った。
あんなに小さかったファルキも大きくなり、フェイの絵本を嬉しそうに読んでいる。
あの絵本はファルカがスネージナヤから取り寄せたもの、そう聞いた。
ファルカが僕の事を思い出してくれている、その事実だけで嬉しかった。


──────


ある深夜、ファルキが家を抜け出そうとしていた。
これは着いていったほうがよさそうだ。
久々に人の姿をとり、ランプを拝借して蒼炎を移す。
気配を消し、ファルキの後を追いかける。
ファルキはモンド城を抜け出し、風立ちの地方面へ歩き出す。
すぐに引き返すといいのだが。
ファルキは怯えながらも、少しずつ歩を進めていく。
視界の先に、ヒルチャールがいた。
ヒルチャールがファルキに気付き、棍棒を片手に近づく。
咄嗟にファルキを庇い、ヒルチャールに蒼炎で焼き払う。
ファルキを見ると、怯えてる様子はない。むしろ、見惚れているようで。

「きれい
「こんばんわ。良い夜ですね。 お怪我はありませんか?」
えっ、あっ、ありがとうおにいさん!ほのおがあおくてすごくきれい!」

『おまえの蒼炎、本当に綺麗だ』

ファルカも同じことを言っていた。
ファルキは僕のランプを見つめ、瞳には宝石のような輝きを秘めていた。

「もしかしてえほんにでてきたようせいさんなの?」
バレてしまいましたか。内緒にしててくださいね」

指を立てて微笑むと、ファルキの顔が赤くなった。

「顔が赤いですよ。風も冷えますし、送っていきます」
ありがとう」

手を繋ぎ、二人歩く。
ファルキの小さな手を握りながら、愛しさを感じる。
ファルキはというと、うつむいてあまり話さなかった。
緊張しているのだろうか。そういえばファルキに聞きたいことがあった。

「そういえば、何故一人でここへ来たのですか?」
きもだめし、したくて」
「一人で、ですか」
「ひいじいちゃんがすごいひとだから、ひとりできもだめしできるだろっていわれた

でも、できなかった。そう悲しげに呟くファルキに、歩みを止め、視線を合わせるためにしゃがみ、ファルキの頭を撫でる。

「大丈夫です。あなたは勇敢な騎士ですよ。
でも、ご両親が心配するから、お出かけすることをちゃんと伝えましょうね」

ファルキの顔がりんごのように真っ赤になった。

「顔が真っ赤ですよ。熱はないようですね」

額を合わせて熱を測ると、そこまで熱くない。念のため、早めに帰るべきだろう。
モンドに帰り、ファルキを家の前まで送る。
ファルキはこちらを向き、叫んだ。

「ぼく、ファルカ!おにいさん、なまえおしえて!」
「僕は
「ファルキ!そこにいたのか!」

名を教えようとしたら、両親がファルキを必死に探す声がする。咄嗟にランプに戻り姿を隠す。

「おとうさん、おかあさん」
「よかった、ファルキ、無事だったのね」
「こんな深夜にどこに行っていたんだ」
「きもだめししようとして、おにいさんがたすけてくれて

ファルキがこちらを向くが、誰もいない。
両親に抱き締めながらも、視線は僕を探しているようだった。


───────


あのあと、ファルキは僕を探すことが増えた。
フェイの絵本を宝物のように大切に扱い、家の中や街中で僕を探している、らしい。
ファルキの前に姿を現すつもりはない。僕はただ、護りたいだけなのだ。
時は経ち、ファルキは騎士の道を選んだ。
家を出ることになり、ファルキのいない家の中は静かになってしまった。
寂しい。
でも、いずれ戻ってきて、素敵な女性と恋をして、結婚するだろう。そう、考えていた。成長したファルキを見るまでは。

「ファルキ、成長したなぁ。ファルカ大団長にそっくりじゃないか!」

ファルカが、いた。
顔立ちも、声も、ファルカそのもので。
ファルカの、面影が、重なる。
思考が、止まる。

「ファルキ、そろそろ結婚も考える頃だろ? いい相手いないのか?」
実は好きな人がいるんだ。子供の頃、深夜に抜け出した時に助けてくれた人を、今でも探している」

そう愛しさを込めて話すファルカの声が、頭から、離れない。
護りたい、それだけだったのに。
ファルカの面影を、探している自身に嫌気がさした。


面影➂ | Privatter+ https://privatter.me/page/694c05137064e