第2話【恋敵の乱入】4/8(火)

黒薔薇のトリカゴ第1章。




ぽかぽか暖かい春日和。
桜がちらちらと舞い散る景色の下で、二人の男女がいちゃいちゃしていた。

――現在の時刻は八時過ぎ。天稟てんぴん高校の生徒たちがちらほら登校してくる時間帯。新一年生は教室が分からず迷子になりかけ、新二年生と三年生は前年度の教室へ間違えて向かいかけ……慌てて引き返す。入学式・クラス替えから一週間以内はこの光景が日常茶飯事となるだろうと、職員室の先生方は目を細めて見守っていた。
そんな中。

「ふみちゃん、離れたくない……
「さく、もうそろそろ教室に行こう?」
「やだ」

中庭の桜の木の下で、朔叶さくと文花ふみかに抱きついて肩口に顔を埋めていた。文花は背中をポンポン撫でつつも静かに教室へと促すが、朔叶は首を横に振るだけ。一度駄々こねモードに入ると、本人の気が済むまで動かない。朔叶マスターの文花の言うことすら聞いてくれない。非常に面倒である。しかしこれも彼らの日常茶飯事。
職員室の窓から眺めていた日本史担当の皐月さつきは、「今年も変わらないわね」と苦笑した。

「ふみちゃん……僕ふみちゃんの背後にぴったりくっついていたい。僕なら教室に違和感なく溶け込めるから問題ないよ」

「問題大ありよ」と皐月は距離的にも物理的にも聞こえてないにもかかわらず、朔叶の発言に正確なツッコミを返す。すぐ近くにいた新任で古典担当の雨野あめのが「えっ!?」と肩を跳ねさせる。トーンが真面目すぎて自分に言われたのかと思ったらしい。皐月は「違う違う」と手を振って誤解を解いた。



「うおおおおおい!!!!!」

突如そこへ割り込む大声。桜の木がビリリッと一瞬震え、桃色の花びらが数枚落ちた。皐月と雨野、その他の教師陣の肩が大きく跳ねる。新一年生は前のめりにコケて、新二年生と三年生は「ああ、日常だなぁ」と流した。全校集会の校長の話並みに興味関心が無い。

「何しに来たの。相馬そうまれん

朔叶は文花の肩口から顔を上げて冷たく呟く。
朔叶が口にした名前の男は、昨日「弓庭ゆば文花さんの心を奪う!」と最も無謀で愚かな宣戦布告をしたスポーツ少年である。どれくらい無謀かと言うと包丁をまっすぐ向けている相手の真正面から無防備で突進するのと同じ。最悪死ぬ。間違いなく死ぬ。

「弓庭さん! 空木うつぎ! おはよおおおぉぉぉ!!!」
「おはy」
「しっ……返さなくていい」
「でも……
「いいから僕の言うことを聞いて、ふみちゃん」

煉の全力挨拶にぽやんと返しかけた文花の口を咄嗟に手で塞ぐ。手のひらの内側でもごもご口が動くが、朔叶は力を緩めないし離さない。珍獣に声かけるな死ぬぞと言わんばかりの静かな気迫だけが漂い、文花はスッ……と大人しく口を閉じた。