レースカーテンを通して、白く部屋を照らすように光が差し込んでいた。隙間から見える空は青く澄み、雲の気配を感じない。今日は一日、天候に恵まれて過ごせそうだ。神奈川はゆっくりと伸びをした。
長風呂で、芯からあたたまった体の熱を逃さぬように、濡れた髪を素早く乾かす。ほんの僅か、空気の中にぬくもりを感じられるようになってきてはいるが、まだまだ屋外には冷たい風が吹いている。晴れた空と、あたたかみをまとった窓を通して、部屋に入り込む日射に惑わされてはいけない。十分に備えをして外出する必要がありそうだと、本日の服装について改めて見直すことにする。まだ約束までは時間があるが、早めに身支度を進めていった。
姿見の前で全身をくまなく確認し、身だしなみの総仕上げにかかる。最後に慣れた手つきで、寝室にあるサイドチェストの引き出しを開けた。そこにある、赤く小さなピアスを手に取るのだが、ちらりと視線をずらすと、もうひと組、視界に飛び込んでくるものがあった。軽く息を吐いて、そのままそれをみつめる。隣に並べて置いてあるのは、リングピアスだ。室外からの明るい日差しを受けて、まるで自己主張するかのようにきらりと光る、金色の小さな輪がふたつ――。千葉から受け取ったそれを、神奈川はまだ一度も身につけた事がない。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.