コノチャ♀記憶喪失ネタ(仮題)

タイトルの通り

 ずきずきと頭が痛い。
 不快な痛みに引っ張られるように覚醒し、薄っすらと目を開けるとそこは知らない天井だった。
 自宅で寝たはずなのだが。
 身体を起こそうとしたが頭部の痛みに顔を顰めてしまう。
 どこかでぶつけたのか、痛む左側頭部を庇うようにゆっくりと起き上がった。
 着ているものはよくある薄い水色の入院着。場所にも見覚えがない。白い部屋、左手首に巻かれた識別コードの印字されたテープ。枕元の設備や室内の調度品を見るに病院であろうことは判断できた。
 窓から見える景色は見慣れたプラントのものであるが、どこの病院かは見当がつかなかった。
 コンパスへの出向が決まってミレニアムの進宙式も終えて来週には本格的な任務に就くからと最後の休暇を自宅でゆっくりと過ごしていたはずだ。なぜ、いつの間に病院に? 自宅で倒れたのか?
 ぼうっと考えていたら、ノックの音が聞こえて、入室を許可する前にドアが開いて人が入ってきた。
 現れたのは看護師の格好をした女性で、ベッドの上で身体を起こしていたコノエの姿を見てパッと表情を明るくして言った。
「チャンドラさん、目が覚めたんですね。よかったです」
……うん?」
 看護師が自分を知らない名前で呼んだので目を見張る。
「ここは⚫︎⚫︎病院です。頭を打ったところまだ痛むでしょう? ××大学で階段から落ちたらしいですが頭以外に痛いところは?」
「大学の階段から落ちた?」
「ええ、精密検査の結果は異常なしとのことですがまだ無理しないでくださいね。さっきご家族の方と連絡が取れたみたいですぐに迎えにきてくれるそうですから」
「家族が」
 コノエには大学に立ち入る用事も看護師のいう「家族」というものにも全く心当たりがなかった。
 両親はナチュラルで母親は亡くなっているし高齢の父親はユーラシア連邦在住。コーディネイターとナチュラルの関係が悪化していく世界情勢と同時に縁はとっくに切れている。
 現在は特定の恋人もいない。身元引受人が必要な事態に陥った場合には軍を通じて行政が適切に事後処理してくれるよう手続きをしてある。
 コノエの混乱をよそに看護師は続ける。
「一度先生に来て診てもらいますね。あ、私物はそこですから」
 看護師の視線の先にはサイドボードがあり、見慣れない端末と見慣れた腕時計、身分証らしきIDカードにハンカチ、ファスナー付きの小さなビニール袋の中に銀色の指輪が一つ。
 看護師は手際良くコノエのバイタルを確認してから退室していった。一人病室に残されたコノエはサイドボードの私物に手を伸ばす。まず最初に取ったのはIDカードである。
 オーブ連合首長国発行のIDカードには顔写真に名前が記載されている。
「アレクセイ、チャンドラ?」
 IDカードに記載されている自分の名前を読み上げて首を傾げた。
 ファーストネームとファミリーネームの間に挟まっている「K」がもしかして「コノエ」だろうか。
全く身に覚えのない身分証に困惑する。
 そうこうしていると再びドアがノックされ入室を促す。先ほどの看護師と一緒に白衣姿の男性が現れて医者を名乗った。
 階段から落ちた際に頭を打って昏倒したから救急搬送されて来たこと、意識を失って目覚めなかったので脳の検査を済ませたが異常は特になかったことを説明される。
 コノエは医師の言うことを一通り聞いた後、質問した。
「今日はCE何年の何月何日ですか」