すだ
2025-12-07 19:45:44
23336文字
Public 主スバカグ
 

すず、奔走する

舞手スバルと嫁カグヤ。交際前、絆レベル7くらい。すずちゃんがスバルとカグヤの仲を進展させるために
モコロンと協力しながら頑張るお話。小さい子が主要な語り手なので、読みにくいかもしれません。すみません。
ムラサメさん、ツバメさん、ツイランさん、ワタラセさんが出てきます。
姉妹のご両親はすずちゃんが物心つく前に鬼籍に入った想定です。
いろはさんの恋人後絆クエストを見ていないため齟齬がある可能性があります。ご了承ください。
#スバカグ

 すずはスバルくんが大好きだ。
 かんちがいしないで欲しい。ふぁんとして大切にしているという意味だ。
 あいどるはふぁん全員が恋人だから、だれかひとりと恋をしているひまはない。それよりも、ふぁんを笑顔にすることが大切だ。
 スバルくんはある日竜神社へ落ちてきて、この里に住みはじめた。色々あって、今では四季の里のうんえいをまかされる「里長」だ。でも、そんなりっぱなおしごとをしているのに、全然えらそうじゃない。
 ぼーっと空をながめていたと思ったら、勇ましく魔物をたおしたり。モコロンと変なことをしていたりと、すこし変わったところもある。
 でも、とても優しい。すずがおねだりすると、笑っていっしょに遊んでくれる。すずにとっては、家族みたいな人だ。
 最近、すずのふぁんがひとり増えた。カグヤちゃん。スバルくんの『おさななじみ』で『いいなずけ』。
 すずは、いいなずけの人たちを初めて見たからすごくドキドキした。だって、結婚する約束をしてるんだよ。すずもあいどるを引退したら、誰かと結婚するかもしれないから興味はある。
 カグヤちゃんは、ふぁんでもあり、すずの新しいお姉ちゃんでもある。いろはお姉ちゃんと話し合って決めた。
 カグヤちゃんはスバルくんと同じように、少し記憶をうしなってるんだって。お父さんとお母さんのこともよく覚えていなくて、カグヤちゃんのことをよく知っている人は、もうスバルくんしかいないみたい。いろはお姉ちゃんが教えてくれた。
 そう聞いたとき、すずは「じゃあカグヤちゃんはうちの子になればいいよ」と言った。そうだね、カグヤさんがいいよって言ってくれたらそうしようね、っていろはお姉ちゃんは笑ってくれた。
 すずにはお父さんとお母さんの記憶がない。でも、小さいときからいろはお姉ちゃんとサカキおじいちゃんがいてくれたから、全然さみしくなかった。タクミくんだって遊んでくれたし、春の台地にはお友達も、ふぁんもいる。ムラサメさんとうららかちゃんも新しいお友達だ。
 家族みたいに一緒にいれば、さみしそうな、悲しそうな顔をするカグヤちゃんもいつか笑ってくれるかもしれないから。
 こうして、カグヤちゃんはすずのお姉ちゃんになった。
 すずは、カグヤちゃんに会うと元気よくおはよう! って言って手をにぎるようにしてる。カグヤちゃんの手は少し冷たいんだけど、握ってあげるとだんだんポカポカしてくる。そうすると固まったカグヤちゃんの顔もゆるんでいく。それが嬉しいんだ。
 さいしょは手をにぎると困った顔をしていたカグヤちゃんも、さいきんは笑ってくれるようになった。その笑顔がとても可愛い。あいどるとしてやっていけそうなくらい。
 「カグヤちゃんと『ゆにっと』を組もうかな」と言ったら、スバルくんがものすごく反対してきた。どうしてかな?


 ある日、お姉ちゃんからたのまれて、すずは竜神社へお使いに行った。どうしてどこの里の竜神社もながーい階段があるんだろう? いつも登るのがたいへんだ。
 ふうふう言いながら何とかのぼりきると、入り口のあたりにスバルくんがいた。
 名前をよんでかけよる。スバルくんがひとさし指を唇に当てた。静かにして、ってことなのかな。口をとじてそろそろ近づく。
 スバルくんのとなりを見て、理由がわかった。そこにはしずかに眠るカグヤちゃんの姿。座布団に頭をのせて気持ちよさそう。
 カグヤちゃんの反対側には、疲れた感じのモコロンが横になっていた。つぶれたおまんじゅうみたいになってる。声をかけると「ちょっと休憩……」と弱々しい声がしたので、そっとしておいてあげよう。
「カグヤちゃん、寝ちゃったの?」
 ひそひそ声ですずが聞くと、スバルくんはうなずいた。
 気持ちのいい風がカグヤちゃんの髪をさらさらとなびかせる。スバルくんは大切なものを触るみたいに、手を差し込んだ。指の間からこぼれ落ちる銀色。思わずため息が出た。だって、すごくキレイだったから。
「カグヤちゃんのかみのけ、あまのがわみたいだね」
 キラキラしててキレイ、と言うとスバルくんもそうだね、とうなずく。
 何も言わないでカグヤちゃんの髪をさわるスバルくんを見ていると、すずも何だか眠たくなってきて小さなあくびが出た。いけない、あいどるがあくびなんてたるんでる。シャキッとしなきゃ。
 目の前でスバルくんが笑っていたので、恥ずかしくなった。見なかったことにしてって頼んだら、あっさり受け入れられた。
 そのかわり、すずちゃんもオレがカグヤの髪の毛を触ったことは秘密にしてね、と頼まれる。
 どうして? って聞くと、スバルくんは「勝手に触ってしまって申し訳ないから」って。
 でも我慢できなかったんだよね、と呟いたスバルくんを見上げる。
 そう言ったときのスバルくんが、すずの知らない顔をしていたから思わず聞いてしまった。
「スバルくんは、カグヤちゃんのことが好きなの?」
 すずの質問に、スバルくんは大きな目を丸くした。
「いいなずけは、いつか結婚する人のことだよね? 結婚は好きな人とするんだ、ってお姉ちゃんが言ってたもん」
 困ったように笑いながら、スバルくんはすずに言った。
 結婚にも色々あって、親から決められてする人もいるんだって。そういえば、カグヤちゃんを助けたときスバルくんがそう答えていたかも。
 真っ赤な顔をして必死にせつめいしていたから、みんなあんまり信用してなかった気がする。
 カグヤちゃんを見つめるスバルくんの顔を見る。すずの頭をなでてくれる、いろはお姉ちゃんやおじいちゃんと同じように温かい瞳。でも、その奥にある何かは、ふたりとはちがう気がした。
 でもそうだね、とスバルくんがつぶやいた。
「カグヤの方は分からないけど、オレは好きだよ」
 強い風がふいてスバルくんの声は聞こえにくかったけど、すずには確かに聞こえた。
 スバルくんも、キラキラしてる。
「カグヤちゃん、良かったねえ」
 スバルくんは不思議そうにこっちを見た。
「カグヤちゃんね、スバルくんのことを話すとき、すごくキラキラしてるんだよ。だからきっとうれしいと思う」
 すずがそう言うと、スバルくんは切なそうに目を細めた。そうだといいな、と笑う。
「カグヤちゃんに、好きっていわないの? すず、お姉ちゃんに好きっていわれるの大好き。だからカグヤちゃんもよろこぶよ」
 思ったことを口に出すと、むずかしい顔をしたスバルくんが腕を組む。
「うーん……どうだろうね。カグヤはオレに好きって言われたら困っちゃうかも」
 どうしてだろう、好きにも色々あるのかな? 良く分からない。
「でも」
「あっ、待って。カグヤが起きそう」
 会話を止められカグヤちゃんを見ると、眉がぴくぴく動いていた。しばらくして、透きとおった紫色の瞳が開く。
「おはよう、カグヤ」
「カグヤちゃん、おはよー」
……おはようございます」
 もじもじしながらあいさつするカグヤちゃんに、ぐったりしていたモコロンが声をかけた。
「お前、可愛いオイラの頭を撫でるのはいいけど、そのまま眠るなよ……。抱き込まれて息が止まるかと思ったぞ」
「すみません……
 モコロンに謝るカグヤちゃん。カグヤちゃんは、いつも素直でまっすぐな人だ。スバルくんにだけはなかなか素直になれないみたいだけど。昔から知ってる仲良しなのに、不思議だなあ。
「モコロンはいいよね、モコモコだから」
「モコモコじゃねえ! あと怖い顔すんな! オイラは被害者だぞ! 抱きしめられてうらやましいとか思っ……モゴモゴ」
「もう少し休んでる?」
 口をおさえられたモコロンがふるふると首をふると、スバルくんが手をはなした。ときどきスバルくんって笑っているのに笑っていないときがあるよね。
「カグヤちゃん、モコロンをなでてるうちに寝ちゃったの?」
「はい……
「そっかあ、疲れてたんだね。今日は早く休もうね」
 頭をなでてあげるとカグヤちゃんはくすぐったそうにほほえんだ。スバルくんがうらやましそうな顔をする。
「あ、そういえば……スバル、何かしてました?」
「えっ!?」
 ギクっとした顔をするスバルくん。カグヤちゃんは、じーっとスバルくんを見る。
「夢うつつで誰かが私の髪を触っている気がしたんです。あれはスバルですか?」
 じりじりと近づくカグヤちゃん。スバルくんは目を合わさないよう必死だ。
……スバル?」
……はい、オレです。その——あんまりキレイだったから触りたくなって」
 ほっぺたを赤くして、「すみません」と白状するスバルくんを見て、すずはすごいと思った。あんなに自分が悪いと思ったことを素直に謝れるなんて。
 すずなんて、こっそり食べたお姉ちゃんのおやつのことをまだ怖くて言えていないのに。
 キレイと言われたカグヤちゃんも同じように顔が赤くなる。
「べ、別に構いませんよ。髪くらい……
「そ、そう……? なら良かった。あ、また触ってもいい?」
「そんなにしょっちゅうあなたの前で眠ることはしません」
「さりげなく許可を取ろうとすんなよ」
 本当にカグヤちゃんは、スバルくんのこと何とも思ってないのかなあ?
 すずは首を傾げるしかなかった。