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もち粉
2025-12-06 23:03:57
9742文字
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残響
カブミス
カブ43歳 復縁話
※カブの息子を捏造しています
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カブルーは何も言わなかった。
室内には暖炉の火がはぜる音だけが、響いていた。
肩に置かれたミスルンの手が、腕を滑るように下がっていく。
ひんやりとした指が二本、彼の袖の内側にそっと差し入れられ、脈を確かめるように手首を撫でた。
「
……
ずるいよ」
一瞬、息を呑んで、泣きそうな顔をしたカブルーは、その手を捉えて、額を押し当てた。
あの日々は、いつだって
――
残響のように、身の内に鳴り止みはしなかった。
「十四年
……
十四年もかけて、忘れようとしていたのに」
「でも、お前は私を忘れられなかった。子供に私の名をつけるほどには」
捕らえられていない方のミスルンの手が、彼の頬を包む。薄く老いた人間の肌、その下にある熱。十四年前と同じように熱かった。
カブルーが何か言いかけた唇を、ミスルンの人差し指がそっと押さえる。
「
……
ずるくても、いい」
唇に触れられ、言葉を封じられたカブルーは、ただじっと目の前の小さな影を見つめる。その黒い瞳の奥に、銀色の星のように不安が瞬いていた。
――
ああ、本当に、ずるい。
カブルーが力を抜いたのを感じたミスルンは、名残惜しげに指を離し、静かに立ち上がって手を差し出す。
「夜は冷える。
……
部屋に、案内を?」
カブルーもまた、ゆっくりと立ち上がる。下からミスルンの手を取り、確かめるようにその指を強く握った。
そのまま二人は廊下を抜けた。寝室に、近づくに連れて足が早くなる。
ドアの中では、暖炉の炎が微かにゆれていた。
夜の静寂の中に、鍵の音がひとつ溶ける。
異なるふたつの心音が、長い時を経てようやく拍を重ねる。
十四年を越えて戻ってきたのは、恋ではなく、赦しだった。
ただのカブルーと、ただのミスルンは、名を呼ばなくても、名前の主がここにいる僥倖に、深く、長く、満ち足りた。
今夜は、それだけでよかった。
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