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kumazaregoto
2025-11-21 18:49:10
16032文字
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智慧灯明因習村だよ 2日目
橿本お借りしています
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◆
東雲の狩場である森は、街と村とを隔てていたそれよりも、更に鬱蒼と樹木が生い茂っていた。人を拒む様な獣道、ただ囀る鳥の声もやけに反響して不気味にさえ聞こえる。
この付近一帯は深い森が多い様だ。そして国同士の要所にもするにも、入り組んでいる為に整備をしたところで労に見合う益は無い。
東雲が話した昔話の武士から忘れられた、という話も元を正せば放置されたと言うのが正しい場所なのやもしれない。
それがゆくゆく本当に忘れ去られた土地になってしまったのだろう。事実かどうかは今となってはわからないが、と彩貴は周囲を見渡した。
昼間であっても、夜と疑うほどの視界の暗さだ。東雲の襤褸家も薄暗い場所にあったが、まだあちらが明るいと思えるほどに蓊鬱としている。
夜目に慣れている彩貴もこれにはよく見えるなと感想を言えば、東雲は苦笑いした。
「ぼ、僕も全部は、見える訳じゃない、です。こうやって目印を付けたり、して、自分がどこにいるか、調べています」
東雲がほら、と指差す木の幹をよく見れば、刀疵にしては少し小さい、しかし金属の何かで切られたような跡がいくつもある。言われてみると、と後ろにあった木の幹を探る。東雲が見せてきた跡とは少し異なる形をしていた。
「誰かが印を増やしたらどうするんだ?」
「それは、無いです。ここは
……
僕以外は来ない、ので」
東雲は眉を下げて自嘲げに笑う。少しだけ目を伏せてから、あの、と彩貴を見つめた。
「あの
……
本当に、良いん、ですか?僕の、手伝いなんて」
「暇を持て余しているからな、持ち運びくらいならどうということはない」
背負った籠に薪用の木や枝を次々と入れ、彩貴は淡々と答えた。人の手が入っていない分、木自然に落ちた枝ばかりであるが、これなら薪には困らないだろう。
彩貴がここにいるのは、今晩は冷えそうだ、と再び森に向かう東雲に手伝うと申し出たことに端を発するが、それはどうやら東雲にとっては予想外のことだった様だ。この裏山に足を踏み入れる前からも、東雲は何度も彩貴へ尋ねては同じ回答を受けるのであった。
「そ、そういうこと、じゃなくて
……
」
しかし求めている答えは、彩貴が返すものでは無いらしい。不思議そうに彩貴は首を傾げる。
「では何だ。はっきり言え」
「あっ、え、えっと
……
その」
言い淀んでから、息を吐き東雲は意を決したかのように口を開いた。
「村の人たち、見ていたでしょう。僕と関わると"ケガレ"が移る、んだそう、です」
言葉尻はほとんど消え入り、東雲の欝欝たる思いが言葉の端々に込められていた。
ケガレという言葉もあまり理解していないのだろう、聞いただけの言葉を復唱するかの様だ。それでもその言葉の意味が決して彼にとって優しいものではないと、彼自身が一番理解しているのは彩貴の目にもわかった。
「村長と小夜だけ、です。僕に普通に、話して
……
くれるのは」
今朝の老人とのやり取りを、彩貴は思い返す。どうやらあの取ってつけたかの様な人好きの良い笑顔は、本当にハリボテの笑顔だったらしい。
それを東雲が知らないことは幸いなのか。否定も頷きもせず、彩貴はただ黙って東雲の話を聞いていた。
「小夜は巫女で、村のみんなから尊敬されて
……
優しくて、僕のことも気に、かけてくれるんです。僕が"ケガレ"でも、声をかけてくれ、ます。でも村のみんなは、ぼ、僕が話しかけるのも、見るのも、嫌がります
……
そ、村長のおかげで、村に入るのは、許してもらえて、います、けど
……
」
東雲は俯いてから暗がりの中、彩貴を見つめる。言葉が痞えて話す癖は変わらないが、止め処無く吐露する東雲の瞳は揺れていた。
「どうして、傭兵さんは、僕を避けない、んですか」
その黒い瞳の奥で静かに、しかし激しく悲歎の炎が燃え上がっている。目を逸らして話す東雲が、この時ばかりは暗がりの中で彩貴をしっかり見据えていた。彩貴は深く息を吸う。
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