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tonami
2025-11-20 19:49:23
5960文字
Public
50音
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50音/あ行
50音短文詰め
1
2
3
4
5
え/原作軸
永遠なんてない、とトラ男は言う。
「お前は信じてるか」
「永遠を? あるわけねェ」
だよな、と肯いたトラ男がグラスを煽る。おれも同じように流し込めば、高いだけのアルコールがカッと喉を焼いた。おれは呑めりゃなんでもいいが、お隣の外科医サマはどうも口に合わないらしい。眉をしかめたまま、出るぞ、と低く退店を促す。
「で、永遠がどうしたって?」
「特に意味はねェ」
嘘つけ、吐き捨てた言葉は胸の裡に留める。元からおれに対して他と比べて態度が違ったが、今日は特におかしい。永遠なんて信じてもいないくせに確かめてきたのが、その証拠だ。
「
……
おれのオペオペの実は、極めれば不老手術も可能なんだ」
「へェ。ぞっとしねェな」
「だろう。しかも使えばおれは死ぬ。そんなリスクを負って、誰かを不老不死にしたところでおれにメリットはひとつもねェ」
「おれに使うなよ」
幾分か先回りしてピシャリと拒絶を叩きつける。トラ男が息を呑んだ。冷静を装っていた目が大きく見開かれている。存外、この男はわかりやすい。
「おれは死んだらそこまでだと思ってる。ただの治療ならともかく、不老不死なんて意味不明なモンでおれの死を捻じ曲げるようなことは許さねェ」
「
…………
誰が、てめェに使うかよ」
「そうか。そりゃ安心したぜ」
妙に空いた間には気づかないふりをして肩を竦める。深くかぶった帽子に遮られて、トラ男の表情は見えなかった。
そんな、いつだったかも覚えていない会話を思い起こしながら、肩口に額を押しつける男を見やる。どうもおれは半月眠っていたらしい。今度こそもうだめかと思った、と小さく落とした弱音を拾い上げる前に、トラ男に抱きしめられていまに至る。
「
……
永遠なんて、ねェんだ」
吐息に混ざって、かすかに声が震える。
「てめェは死んだらそこまでなんて軽く言いやがるが、遺される人間の気持ちを少しは考えたことがあるか。今度こそもうだめかもしれないと覚悟する人間の気持ちがわかるか。おれが、どれだけ
……
っ」
ぎり、と歯軋りが聞こえて、抱きしめる力が強まる。それも一瞬で、すぐに両腕からは力が抜けた。死の文字が入った指が縋るようにおれの服を掴む。
「
――
喪いたくない」
かつて誰かが死ぬくらいなら作戦失敗でいいと言った男は、言葉通り誰かを喪うことを恐れていた。それがおれのことだとは察してはいたが、こうまで深く恐怖を植えつけているとは思わなかった。けれど、おれにはトラ男の希望通りに動いてやることはできない。野望を果たすまでは、生き急ぎだと言われようとこの足は止められない。
「お前、使わなかったんだな。なんちゃら手術とかいうの」
「使うなと、てめェが言ったんだろうが。それに言ったはずだ。不老手術はおれの命と引き換えになる。ただの他船のクルーに使うわけがねェ」
「そうじゃなきゃ使ったのか」
ばっとトラ男が顔を上げる。いつもきりっとした眉は八の字に下がって、不安からか両目が揺れている。情けねェツラ。いっそう濃くなった隈をなぞってやると、ますます表情が歪んだ。
「なァ、トラ男」
意識を失う最後に見た時よりやつれた頬を包む。男前なのにもったいない。
「おれと一緒になるか」
「
――――
は?」
呆気に取られて飴玉みたいな目が丸くなった。水の膜が張ってぼやけた色は、普段よりもいっそう甘そうに見える。
「その代わり一つ約束しろ。どうなろうが、おれに不老手術とかいうもんは使わねェと」
それさえ守るのであれば、この先を共に生きてもいい。残りの人生をくれてやる程度にはこの男のことが好ましかった。船長でも一味でも他の誰でもなく、憔悴するほどおれを喪いたくないと願う他船の船長に。
トラ男が唇を戦慄かせながら何か言おうと開いて、けれど結局何も出てこなかったのか引き結んだ。いまにも泣きそうなくしゃくしゃな顔で、ゆっくりと頷く。
「
……
わかった。約束する。お前に不老手術は、絶対に使わねェ」
「よし。永遠なんてねェんだ。悔いのないように生きようぜ」
笑いながら硬い髪をわしゃわしゃ撫でてやる。やめろと口では拒否しながらも、トラ男は脱力したように再びおれの肩に額をこすりつけた。
好きだ、と涙混じりの告白には、おれも、と返してやった。
とこしえを語らない
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