tonami
2025-11-20 19:49:23
5960文字
Public 50音
 

50音/あ行

50音短文詰め



い/原作軸



「意気地なしって言われますよ、そりゃ」
 帰ってくるなり自室に引きこもってしまった船長がやけに落ち込んでいたのが気にかかって、古参面子で引き摺り出して聞き出してみれば何のことはない。敬愛するキャプテンが悪いだけの話だった。
 ぐさりとペンギンの言葉が突き刺さって、ローがテーブルに突っ伏す。話を聞く前なら慰めただろうが、聞いてしまってはそうもできない。
 ワノ国を出るまでに腹を括らないのなら、関係はこれっきりで終い。一応まだ同盟関係である他船の二番手にそう告げられ、しかし船長は出航前日となっても覚悟を決められずにいる。戦いであればあっさりと腹を括ってしまうくせに、恋愛事になると途端に慎重を通り越して臆病になってしまうらしい。その上、どうにもこれが初恋ときた。欲を発散することへの経験は豊富でも、恋ともなればそうはいかず。
「本当にロロノアとお別れしちゃうの?」
「キャプテン知らないかもだけど、ロロノアってモテるんですよ。黒足とかユースタスとか、危ないと思うな〜」
「そういえばこの国のお姫様もそうだったよね」
「案外麦わらもだったりして」
「で、いいんですか。このままで」
……よくねェ」
 のっそりと身を起こしたローは不機嫌を張りつけていたが、あくまでポーズに過ぎないことくらいクルーは全員知っている。
「じゃあ、やることは決まってますよね」
「頑張ってキャプテン!」
「おれ達はキャプテンの味方だからね」
「いっそロロノア勧誘してきてもいいんすよ」
「勧誘はしねェ。……ありがとうな、お前ら」
 立ち上がったローの顔は、さきほどまでとは段違いにしっかりしていた。覚悟は決まったようだ。期限は明日、というか明日の午前には出るのだから実質今日までとぎりぎりではあるものの、腹を括ってしまえばこちらのものと言っていい。
 行ってくる、と気合十分に戦いへ向かうキャプテンの背を、ハートのクルー達はハンカチ片手に総出で見送った。
 しかしその後、いざゾロを目の前にしたはいいもののテンパりにテンパって、麦わらの一味もキッド達もいるなかで「結婚してくれ!!」と告白を通り越してプロポーズすることになるとは、知る由もなく。ゾロには大変好評だったことが、せめてもの救いだった。




愛を叫べ意気地なし