tonami
2025-11-20 19:49:23
5960文字
Public 50音
 

50音/あ行

50音短文詰め



あ/原作軸



 明けてしまわなければいい。この夜が、ずっと。このまま朝になることなく、朝を待つことなく。二人だけの夜が、永遠に続けばいいのに。
「そうも言ってられねェのは、お前もわかってんだろ」
 夜色の瞳が存外柔い色でおれを見る。真っ暗な部屋では暗い色に染まる濃い灰が、太陽の下では銀に透かされることに気づいたのはいつだっただろう。
「おれは野望と約束を叶えるために朝を迎えなきゃならねェ」
……おれをひとりにするのか」
「ばぁか。お前も一緒に行くんだよ」
 目的があんだろうが、と優しい手つきでおれの髪を梳く。ゾロ屋と違って硬めの髪は撫でても楽しくないだろうに、お前のだからいいんだ、と細まる隻眼は確かに甘い。
「このままずっと夜の中にはいられねェだろ。おれも、お前も」
……わかってる。言ってみただけだ。忘れろ」
「話を最後まで聞けって、このせっかち」
 咎めるにしては穏やかな声音で、つんと軽く髪を一房引っ張られた。特に痛くもないが、抗議のために胸元に額を押しつけると背をあやすように叩かれる。甘やかされている。
「おれだって夜が明けるのは惜しいんだ」
 だから、と。顎をすくわれ、ざらり、指の腹が髭を撫ぜた。徹底的に甘やかすつもりらしかった。
「だから、おれの野望とお前の目的を果たした暁には、ずっと夜にいようぜ」
 真夜中には不釣り合いな、暖かな日向の温度をまとって、恋人がまろく微笑む。これに抗える術を、おれは持たない。
「──その時がきたらすぐに攫ってやる」
「ははっ、楽しみにしてるよ」




可惜夜、居明かして