【GLR: SHERLOCK|Ep. 02】犯人は二匹

山岳写真家のジョン・ワトソンは、雪山からの滑落をきっかけにパルデア地方から故郷のガラル地方へ戻った。そして新たな生活を始めようとフラットを探し、ベイカー・ストリート221Bへ辿り着く。
そこで出会ったのは、探偵業を営む謎多き青年、シャーロック・ホームズ。
二人の出会いを描く「十三番目の依頼人」、そして大きな陰謀が顔を覗かせる「犯人は二匹」、さらにシャーロックの秘密が明かされる「ワイルドエリア・インシデント」、そして物語は最大の敵との対峙「伽藍の密室」へ──。
ポケモンとホームズの融合、華麗なる現代推理劇をご覧あれ。

【主な登場人物】
シャーロック・ホームズ
シュートシティ、ベイカー・ストリート221Bに暮らす探偵。
嘗ての名探偵と同じ名を名乗る謎多き人物。

ジョン・ワトソン
山岳写真家。諸事情からガラル地方へ戻り、221Bへ転がり込む。

【エピソード】
プロローグ
Ep. 01 十三番目の依頼人
Ep. 02 犯人は二匹
Ep. 03 ワイルドエリア・インシデント
Ep. 04 伽藍の密室
エピローグ


 二階の一室を借りて荷解きをし、一息つく間もなく私は驚かされていた。ゆらり、と窓の外に紫色の影が這いよったのだ。
 シャーロックの言った通り、三階には先住民がいる。階下にやって来た人間の顔を拝みに来たのだろうが、音もなく現れられると流石に肝が冷えた。それがランプラーとシャンデラだと気付いた頃には、もう部屋の明かりですっかり目が慣れていたが。
 カーテンを閉め、私はベッドに横たわる。柔らかな暖色のミルクランプが灯る部屋だが、ゴーストタイプのポケモンたちが真上にいるせいか、少し肌寒い。ボールホルダーからモンスターボールを外し、キャビネットに転がらないようタオルを敷いて並べる。するとそのうちのひとつが──右へゆらり、とひとりでに動き、次にはポンと音を立てて室内に現れた。
 雲をそのまま羽毛にしたような、ふわふわの羽。晴れた青空を写し取った体。そして、軽やかな鳴き声。幼いころから苦楽を共にしたポケモン──チルタリスが、じいっと私の疲れた顔を眺めている。

「ちるっ」

 チルタリスが一声鳴く。ベッドに軽々と飛び乗り、柔らかな羽毛を私の顔に押し付けた。

……やめてくれ、寝落ちてしまう」
「ぢゅい~」
「わかった、わかったから」 私はふわふわの誘惑に必死で抗って、上体を起こした。「……、はあ

 疲労した頭に過ったのは、シュートシティ・モノレール駅での出来事だった。はっきりと瞼の裏側に鮮血の色がこびりつき、思わず胃酸がせり上がってくるような感覚を覚える。
 突然豹変し、頭を床に何度も打ち付けて死んだ男──マイケル。彼は確かにフィルムカメラを何個も盗んだ窃盗犯だったが、何故あのようにして死ななければならなかったのか。さらに奇妙なのは、彼が口走った言葉たちだ。
『〈教授〉が話しかけてくる』。彼は間違いなくそう言った。きっとシャーロックが指摘した通り、単独犯ではないのだろう。マイケルに盗みを教え、実行に移させた教唆犯がいる。私は背に伝う冷たい感覚に、思わず両手を握り合わせた。

「ちる」 むくれているチルタリスは、思案に耽って己に構わない私をつつく。「ちっ、ちっ!」
「そんなにミアレガレットが食べたかったのか?」
「ち!!」

 相変わらず食い意地が張っている。そもそもミアレガレットはカロス地方の名物で、ガラル地方のものではない。何故か最近はガラルでも大流行しており、そこら中で売られていた。

「明日以降だぞ」
「じゅ

 目に見えてしょぼくれている鳥は、すごすごとモンスターボールへ戻っていく。賢い子であることは間違いないが、ミアレガレットの前にはその賢さもなりをひそめてしまう。
 ふと気になってカーテンを少し開ける。窓の外にはもう、シャンデラたちはいなかった。