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煩悩
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カラキョウいろいろ
カラキョウSSのまとめ
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✎¦鳩尾の真下にあるものを潰しましょう!
鳩尾の真下にある臓器は何だろうか。胃か、肺か、腸か。何にせよ、臓器が潰れた時点で俺の命は無に還るのだろう。
「この下には何があるんやろなぁ?」
耳元でカラスバさんが囁いた。椅子に座った俺に覆い被さり、片手は背もたれに、もう片手は俺の鳩尾に手を当てて、ここ数分間圧迫し続けている。
「俺の体を人質にとって楽しいですか?」
「楽しいで、どんな娯楽より楽しいわ」
俺はちっとも楽しくありません、という言葉が喉元まで出かかっていたが、寸手のところで飲み込んだ。催眠にかかったようにぐるぐると渦巻くカラスバさんの瞳に語りかけたとて、望んだ結果は得られなさそうだ。
「キョウヤの大事な体やもん、そう簡単には壊さへん」
「
…………
」
当たり前と言えば当たり前だが、人間の体は簡単に壊れる。俺の体を大事にしてくれるのは大変ありがたいが、それならば鳩尾から手を離してほしいというのが正直なところだ。
「冗談はよしてください」
そろそろ離してもらわないと夜のZAロワイヤルに間に合わなくなってしまう。鳩尾にかかる手をどかそうとカラスバさんの胸を両手で押し返したが、おかしな事にびくともしない。それどころか圧迫する力はどんどん強くなっていく。
(苦しい、助けて
……
)
喉の奥でヒュッ、という音がした。胃の底から何かが迫り上がってくる気配がする。今にも鳩尾を押し潰さんとするこの力が、おおよそ人間に加わって良いものではない事をようやく理解した。しかし、今更どうしようもない。
「はな
…
して」
「離したら逃げるやろ?」
「
…
そう、ですね
……
」
ここで馬鹿正直に“はい、そうですね”と言ってしまうのが俺の悪い所だ。煽りスキルが高いとエムゼット団のメンバーによく言われるが、なにもこんな状況でその能力を発揮しなくてもと、自分にほとほと呆れてしまう。生きるか死ぬかの二択に迫れてもなお人を煽り散らかすとは、いかがなものか。
「なあ、この下には何があるんやろ?胃か、肺か、それとも腸やろか」
「あ
……
」
数分前と同じ質問が耳元で繰り返される。加わっていたのは、胃か、肺か、腸かという選択肢。
「なぁ、このままオマエの中にあるもんが潰れて、傷モンになってしもたらどうなるんやろ?もぉオレの元でしか生きていかれへんなぁ」
「う
……
そな
…
」
「かわいい声で鳴いてもあかんで」
なんとか言葉を絞り出しても、続くカラスバさんの声に俺の声は掻き消されてしまう。
「そしたらキョウヤもオレの中にあるもん壊してや お揃いにしよな」
「あ゛ぅ、からす、バ」
耳元でカラスバさんの声が聞こえたが、ザーザーという雑音が邪魔をして何も聞こえなかった。
もう何も聞こえない。もう何も分からない。かといって、カラスバさんが圧迫する力を緩めることもない。遠のく意識の中で最後に見たのは、恍惚とした表情で俺を見下ろすカラスバさんの姿だった。
「堪忍な、でもなぁ
……
もうこうするしか方法はあれへんのや」
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