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柩木
2025-10-27 22:12:53
12222文字
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崩壊:スターレイル
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丹穹|約束の朝を、二人で
くるっぷに投稿していた「約束の朝」の短編5本をまとめました。パンケーキをテーマとした丹穹の現パロです。
この小説は
こちら
のワードパレッドをお借りしています。
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丹恒との半同棲生活も彼の仕事が無事に終わったことで満了となった。少々後ろ髪を引かれながらも穹は久々に下宿先へ戻ってきたのだが、自前のベッドで横になっても全く寝付けない。ずっとあの狭いベッドで身を寄せ合って眠っていたからだろうか。使い慣れたベッドの中で人肌恋しくなって、夜中にも関わらずついつい丹恒に「寝られない。丹恒との同棲生活に体が慣れたみたいだ」なんてチャットを送ってしまった。
丹恒もひと仕事終えたばかりできっと疲れているだろうから返事は返ってこないだろうと思っていただけに、わずか数秒で「既読」の文字が浮かび上がった時には驚いた。それから短く「俺もだ」と返ってきていよいよ笑ってしまう。
そこからチャットでのやりとりが少し続いて、そのうち文字を打つのが面倒になり音声通話に移行した。気が付くと朝日が昇っていて、寝る直前のことが思い出せない。丹恒と話していた事は確かに思い出せるので、通話の途中に寝落ちてしまったようだ。それを裏付けるように通話の終了通知の直後には丹恒からの「おやすみ」が残っている。
そんなことがあった翌週の休日。穹は朝から上機嫌だった。久々に丹恒の家に泊まったというのもそうだが、監督業のお礼としてゆっくり朝食を食べた後は出かける約束をしている。つまりは今日、デートなのだ。パンケーキを焼く時も鼻歌が止まらない。
ところが、どれだけ前から予定を立てていたとして。その準備が念入りだったとしても、そう上手くはいかない事もある。
今日はそういう星の巡りだったのだろう。
「穹、すまない」
丹恒が苦々しい顔をして声をかけてきたことからただならぬ雰囲気を感じた穹は、短く「トラブル?」とだけ尋ねた。
ただでさえ苦々しい表情をしているのに眉間のシワをより深くした丹恒は、胸の内に溜め込んでいた呼気を全て吐き出す勢いで大きくため息をつくと、そのトラブルについて話し始めた。
「先週作成した資料は他の者も見られるようにしてあるんだが、肝心の教授が電子機器に疎くて、それで
……
」
「あー。データが見られないとか?」
「
……
どういう訳かデータが飛んだ」
「うわぁ」
「そうなった経緯も尋ねてはみたが、どうにも要領を得ない」
幸い、元データは丹恒の手元にあるのでデータが消されても問題ない。しかし件の教授曰く、丹恒が作った資料で確認したいことがあるのだという。電話口で操作説明をしてもいいのだが、それだと理解のハードルがあがる上にまた同じ結果になる事も否定できない。
つまり、丹恒が教授に実地で操作説明するか、印刷した資料を渡した方が手っ取り早いという結論に至ったそうなのだ。
「教授って全文ひらがなでテキチャ送ってくる人?」
「そうだ。一応、電子機器を扱うスキルは少しずつあがってきているんだが」
「こればっかりはしょうがないか。あ、朝ごはんどうする? 今作ってる途中なんだけど」
ハマってから何日かに一回作っている為、すっかり手際が良くなったパンケーキ作り。久々に作っても狙い通り完璧な焼き目が出せるようになった。普段通り二枚の皿にそれぞれ二枚のパンケーキが盛り付けられている。
「あとで食べられるように冷凍しておこうか」
「いや、食べていく。そのまま貰えるか?」
バターを塗った以外、何の味付けもされていないパンケーキを皿ごと渡す。フォークも渡そうとしたのだが、その前に素手でパンケーキを掴んだ丹恒は、まるでトーストを食べるようにそのまま口へと運んだ。
一口は普段通りだが、その咀嚼と嚥下の間隔で急いでいる事は分かった。ただ、この勢いで食べていては後々苦しくなる事は目に見えている。穹は急ぎ冷蔵庫の中を確認して牛乳パックを掴んだ。時間があればコーヒーでも出すのだが、今すぐ出せるのはこれしかない。
「はい、牛乳」
もぐもぐと咀嚼し続けている丹恒の前にコップ一杯分の牛乳を置けば、直ぐ様掴んで一口。それからはパンケーキと牛乳を交互に、胃へと納めていく。
二枚焼いたパンケーキはあっという間になくなった。そしてコップに残った牛乳も一息に飲み干すと「ご馳走様」と一言残して慌ただしく家を出る準備に戻っていく。
「丹恒のそういうところ好きだなぁ」
「なんだ急に」
穹の素直な「好き」という言葉に眉間にシワを寄せる程困惑しているのかと思いきや、実はその裏で恥ずかしがっているのだ。そういうところも可愛いと思う。
普段の丹恒は品行方正というか、所作が綺麗なのだ。ただ座っているだけの姿勢であったり、言葉選びであったり、気の使い方であったり。普段の身の振り方にもそれは滲み出ている。
そんな丹恒が時折若干粗暴になる瞬間が穹は好きだった。彼のそういった側面はきっと、多くの時間を共に過ごす事でしか知り得ないことだろう。それを知っている自分は丹恒に許されており、隙を見せても良い存在と思われているのだ。
そんなの優越感を得ずにはいられない。
「言いたくなっただけ。あ、でも今日のデートがつぶれたのは許さないから。ちゃんと時間取ってくれよ」
「勿論だ。帰ったら改めて計画を立てよう」
「約束だからな! あ、いってらっしゃいのチューしてあげよっか」
急遽休日出勤となってしまった丹恒に労いの意味も込めて冗談っぽく提案した。穹としては頬に軽いキスをすればいいかなどと考えていたのだが、丹恒の表情に若干の驚きが滲み出た後で、両肩をがっちり掴まれた瞬間に流れが変わったことを悟る。
これ、軽いキスではすまないやつだ。
間髪入れずに唇を塞がれ、唇を優しく食んだあとに舌が唇の合わいをノックするようにつついた。より深いキスへのやけに性急なお誘いに内心笑いながらそれを受け入れる。直ぐ様入ってきた丹恒の舌が自分のそれをさらって、弄ぶ。
「ん
……
、ふ
……
ぁ
――
んん゛!?」
いつになく、やけに、深くないだろうか。どう考えてもいってらっしゃいのキスに収まる可愛らしいものではない。
いつの間にか身体をがっちりと抱え込む腕や、逃さないと言いたげな後頭部の掌だとか。体の隙間を埋めるように密着しているところとか。自分の足の間に丹恒の足が差し込まれていて、身動ぐとその、当たるというか。これは確信犯だろうか。
――
え、朝からする気でいる? 時間ないんじゃなかったっけ?
「ァ、ん
……
っ! んん、ッ」
情事の時を思い起こさせる情熱的なキスが穹の感覚を支配して、粘膜が合わさることで立つ水音により興奮を揺さぶられる。ゾクゾクとした痺れが腰から背中全体を駆け上がり、体を時折跳ねさせた。
気持ちが良くて腰が抜けそうだが、がっちりと丹恒に支えられているので膝から崩れることはない。だが、このままでは色々と限界極まってしまう。
どれだけの時間丹恒のキスを享受していただろう。二人の間を繋げる銀糸がぷつりと途切れ、酸欠気味の頭でぼんやりと目の前の丹恒の顔を見る。どちらの物かも分からない唾液で濡れた唇を舌で舐め取る丹恒の仕草がくらっとする程の色気を含んでいて、これから本格的にいただかれてしまうんだろうかなんてついつい思ってしまった。
だってそれ程にエッチなキスだったのだ。
「お前の素直さに救われる時がある。ありがとう」
先程まで苦々しい顔をしていた丹恒だが、キスを経て心なしかスッキリしたようにも見える。
仕上げと言わんばかりに穹の唇の端へとおもむろに舌を這わせ、こぼれた唾液を拭った。小さなリップ音を立てて一度離れた丹恒だが、最後にぎゅうと穹の体を抱き、傍らに用意していた鞄を持って立ち上がる。
「
――
行ってくる」
「
……
い、いってらっしゃい」
足音の後に玄関の扉が開く音がして、そして閉まった。バタンという音を合図に穹の膝が崩れ落ちる。なんとか送り出す事ができたが、あともう少しでもっとして欲しいと請うてしまうところだった。
何が丹恒の琴線に触れたのだろう。情事を思わせる程エロいキスをお見舞いされて、それでも丹恒を見送った自分を褒めてやりたい。
「
……
っ、そういうところだぞ丹恒!!」
へなへなと力が抜けていく足と、砕けかけの腰では重力に従うしかない。穹はその場にへたり込んで、いまだ余韻が残る唇と、ゾクゾクとした興奮が冷めやらぬ体の熱をどうにかやり込めようと自分で自分を抱きしめ、両腕を擦ったのだった。
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