Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
保科
2025-10-19 20:06:02
3708文字
Public
スタレ
Clear cache
口が滑る話
現パロ 酔ったサフェルがアグライアに口を滑らす話
そんなこと絶対ないという信仰があるので、書いた分際で呆然としてる
10/20 Twitterに投げたやつとか追記
1
2
「
……
大丈夫、大丈夫だよ、ライア」
前後不覚に陥るほど酷く泥酔したサフェルは、帰ってからというもの譫言のようにその言葉を繰り返す。
飲み会とは聞いていたものの、どうしてこのような状態に。
不安と怒りに、憂い顔で肩を支えるアグライアを、サフェルは焦点の合わない瞳に収めると、嬉しそうに微笑んだ。そうやって、とろけるような、慈しみに満ちた笑みを向けられるものだから。
アグライアはつい、叱ることも忘れ、愛おしさに口を開こうとして
――
「
……
大丈夫。あんたの世界は、あんたのオクヘイマは
――
あたしが絶対守るから、ね
……
」
「
……
セファリア
……
?」
――
しかし、続く言葉に困惑が勝る。
その言葉が指す意味を、アグライアは知っている。『今』ではないいつか。オンパロスと呼ばれた世界にて、アグライアが統治した都市国家。おとぎ話ような曖昧な記憶は、しかし決して偽りではない
――
目の前の彼女とも共有するものだが、今の言葉はどうにもおかしい。
まるで、今もなお、オクヘイマがアグライアの統治の元存続するかのような言い回し。
意識の混濁が、記憶の混濁までも招いている
――
よもや、今の彼女は、かつて詭術の黄金裔として名を馳せた頃に、戻っているのではないか。
「
……
大丈夫ですか、流石に飲み過ぎですよ」
「うん、勿論、大丈夫
――
大丈夫。大丈夫
……
だから。出来る、できるんだ、あたしは
……
大丈夫、大丈夫
……
」
しかし。励ます言葉は言い聞かせるような、呪言のような重みへと置き換わる
――
ブツブツ、その一心不乱な呟きを、アグライアはかつても今も聞いたことがない。
「
…………
」
聞いたことがないというなら、今、彼女が混濁している記憶の推察は容易だった。
恐らく、アグライアの下を去った後、アグライアが知るよしもない時代の、彼女のものだろう。
――
その頃の彼女に興味を唆られない、といったら嘘になる。
いつも飄々と、風のように生き、鮮やかに笑っていた彼女を、これほどまでに追い詰めるものが、一体何なのか。
オクヘイマを、世界を守る
――
火を追う旅を抜けた彼女が、世界を守るというのは、どういうことなのか。
過去の彼女がした選択についてに、サフェルは頑なに口を開くことがなく、また、金糸で暴くこともついぞかなわなかった。
しかし、今ならば
――
あるいは。
「何を、成すのですか?」
夢現に差し込むような、慎重な問いかけへ。
サフェルは、ぱち、と瞬くと、躊躇う事なく口を開いた。
「
――
黎明のミハニの輝きを、永遠にすること」
ためらうことなく、流暢に返された言葉に。
アグライアは一瞬、幻聴すら疑った。
「あたしが、絶対に消させやしない」
――
心臓が、大きく音を立てる。サフェルが口にする言葉を一音も聞き逃すまいと呼吸が止まる。
「900年、できたんだ、だから」
「
―――
」
「後、少しなんだ。旅の終わりまで
……
火種
……
が
……
あつまれ、
……
。
……
そう
……
、また
……
ライアに
………
」
ぐらり、不安定なサフェルが倒れ込むのを受け止められたのは、奇跡に近かった。動くことすらままらないほど、アグライアは動揺していた。
「
……………………
」
半ば反射で抱きとめたその体が、眠りに落ちる寸前、縋るようにアグライアの服を掴むと、そのままぐったりと力を失う。その熱さを抱えながら、アグライアは早鐘を打つ心臓に背筋を震わせる。呼吸すら忘れそうなほどに思考が回る。
「
――
そう、いう」
辻褄が、合う。
アグライアの死後、黎明のミハニが輝きを失ったということは、トリスビアスから聞いていた。聞いてはいたものの、あくまで知識としての理解しかない。再創世が近づくが故の現象かと、確かめようのない現状は一旦整理を止めておいた。
だが、
――
そうでないのなら。
それが、疾うの昔に、訪れていた終焉なのだとしたら。それが、彼女の権能故だとしたのなら。
「そういう、こと、なのですか
……
?」
――
真に、オンパロスの黎明を照らしていたのは、誰か。
上擦る声に返事はない。すっかり意識のない少女の寝息だけが、静かな部屋にくうくうと響く。
辻褄が合う。合ってしまう
――
全てに。
ならば。この子が抱えて、そして西風の果てへと持ち去ってしまったその責務は、覚悟は、一体どれほどのものか、などと
――
そう考えた瞬間、
「
………
っ、あ、ああ、セファリア、
……
セファリア
――
」
アグライアは。自分の目から溢れるそれが、涙であると気づくよりも早く。
目の前の少女を強く抱き寄せ、言葉にならない感情のままに名前を呼び続けた。
サフェルは未だ、目を覚まさない。
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内