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ミズクラゲ
2025-10-12 03:28:13
9544文字
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ウデ
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【さわマル6】ウルデプ創作台詞企画2
【支部再録済:そして、日常は続く2】
ネコマさん主催のウルデプ創作台詞企画2に寄せて、それぞれの台詞を使ってSSを書きました。各話に繋がりはありません。
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4
5
俺のヒーロー
「あれ。ウルヴィーだ! 奇遇だね」
背後から聞こえてきたはしゃぎ声を聞いて、ローガンは眉間に深い皺を刻みながら振り返った。
「
……
お前の方こそ。どうしたんだ?」
「俺? 俺はね、たまたま帰り道の途中で強盗に出くわしたから、ちょっとした慈善活動に取り組んだわけ。こういうちょっとしたサービスが顧客の信頼にも繋がるからね。アンタは?」
陽気な口調のウェイドは、確かに頭から紙袋を被せられた上に荒縄で雁字搦めにされた男を連れていた。二人の男を見比べたローガンは僅かに鼻をヒクつかせる。火薬、鉄、血、乱闘の形跡を残して派手に破れているマスク。投げかけられた質問の答えなど、ローガンはほとんど考えてもいなかった。
「まぁ、少し、野暮用でな」
上の空のまま言葉を濁すと、ウェイドは「ふうん」とさして興味もなさそうに言って、歩み寄ってきた警察官に連れていた男を引き渡した。既に話はついていたのだろう。調書を取ろうとする素振りもなく、警察官は敬礼をひとつ残して男を引き立てていく。
「そんじゃ、俺は先に帰るね。ヒーロー活動、がんばって!」
ひらりと手を振ったウェイドが身軽に踵を返す。その背を唖然としたまま見送りかけて、我に返ったローガンは咄嗟に大声で呼びかけていた。
「ウェイド! 待て!」
「へぁっ!?」
飛び上がったウェイドが目を丸くして振り返る。ローガンは大股で赤いスーツの傍へ歩み寄ると、両手で肩を掴んだ。
「ちょっと、待ってろ。俺の用はすぐに済むから」
「な
……
、なんで? いや、俺はただ帰るだけよ?」
「俺も後は帰るだけだ」
いいか、ココで大人しく待ってろよ。幼児にでも言い聞かせるかのような口調で言ったローガンが警察署の中へと向かい、捜索を頼まれていた保護対象の居場所を簡単に伝えて戻ると、ウェイドは道端の塀の上で両足をぶらつかせていた。
「ホントに早いな。俺のことなんて気にしなくていいんだぜ」
「俺が、お前と一緒に帰りたかったんだ。なぁ、こないだ新しく出来たっていうドーナツ屋に寄っていかないか」
「スーツ姿で?
……
ウルヴァリンとデッドプールが、仲良くスイーツだって?」
肩を竦めてみせたウェイドのマスクの破れ目からは、皮肉げに上がった口端が覗いている。ローガンは「今更何だ」と眉間に皺を寄せて、塀から飛び降りてきたウェイドの肩を強引に抱いた。
「ちょっと、重いって。自分の体重が何トンあるか忘れたわけ?」
「うるせぇ。これくらいでへバる質じゃないだろ」
「おいおい。俺はキュートでセクシーな傭兵であって、別にパワー系で売ってないんだけど」
「お前はカッコよくて強いヒーローだろ。誰が何と言おうと、俺は知ってる」
ローガンがぶっきらぼうに言い放つと、ウェイドはほんの一瞬だけ目を丸くした。それから口元を覆ったグローブは、上がろうとした口角を隠そうとしたのだろう。表情は見えずとも、張り詰めていた気配が一気に緩むのを感じてローガンは小さく微笑んだ。
「なに、そんな、褒めても何も出ないんだからな」
「別にそんなつもりで言ってない。
……
ああ、いや。そろそろ、ちゃんと呼んでくれないか?」
不審そうな顔をしたウェイドは間近にあるローガンの横顔を見つめ、要求されたことに思い至ったようだった。ひび割れた唇が僅かに開いて、すぐに閉じる。痘痕だらけの顔を赤らめて、ウェイドはほんの少し上擦った声で囁いた。
「
……
ローガン」
「ああ」
お前の、ローガンだ。そう言うなり喉を鳴らして笑った男は、マスクの破れ目から覗く肌に触れるだけのキスを贈った。
「そう固くなるなよ。これくらい、親しい友人の挨拶だろ」
「どの顔で言ってんだよ。その目、スモアドーナツより甘ったるくて胸焼けしそう」
言葉とは裏腹に上機嫌に笑ったウェイドは、自らもローガンの腰に手を回しながら思考をドーナツに切り替えたようだった。
大方。居合わせた強盗の現場でスーツを傷つけられて、覗いた肌か、傷が治っていく様子を見てか「化け物」とでも罵られたのだろうことは想像がつく。
行く手にローガンの姿を認めて浮足立ち、それでもヒーローの名を呼ぶに留めたのは、怪物と英雄の間に一線を引こうとしたのだろう。忙しなく動く唇は泣くのを堪えるように震えていて痛ましかった。先に帰ろうとしたのは、ローガンが戻るまでの間だけでも一人きりで寝室に閉じ籠もり、傷ついた心を抱えて蹲るつもりだったのだろう。
別に、気が済むまで泣いて受けた傷を発散できるのであれば、それでも構わない。八つ当たりをしてくるのなら、疲れ果てるまで派手な喧嘩をしてやる覚悟だってある。けれど、ローガンが我慢ならなかったのは、ウェイドが頑なにローガンをヒーロー・ウルヴァリンとして扱おうとしたことだった。
勝手に星の如く遠い存在にされるなんて、許せるわけがない。お前は俺と肩を並べて歩くべきだ。
「小せぇ男で悪いな」
思わず苦笑すると、ウェイドはきょとんと目を瞬かせた。
「アンタほどビッグな男、そういないと思うけど? 体も、心も、アソコもね」
悪戯っぽく笑ったウェイドは、すっかり普段の調子を取り戻しているように見える。一先ずは安堵しながら、大通りへの角を曲がったときだった。
「デッドプールだ!」
歓声。足を止めたウェイドの前で、無も知らない市民たちが口々に快哉を叫ぶ。
「かっこよかった」「助かったよ」「見直した」「アンタがヒーローだ!」
一時は自分の身を守ることを優先した彼らは、きっと警察署へ向かおうとしていた。恩人に礼を言うために。普段のサービス精神は何処へやら、呆然と立ち竦んでいるウェイドの手を掴み、ローガンはおざなりに振ってやった。
「ほら。ちょっとしたサービスが大事なんじゃなかったのか?
……
俺の、ヒーロー」
片頬を上げて笑ってみせたローガンを、ウェイドが見つめる。その瞳がマスクに隠されていることを惜しむと同時に、ローガンは目の前のヒーローを心から誇らしく思っていた。
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