保科
2025-09-27 02:08:30
3848文字
Public スタレ
 

うわさばなし

同じ大学でなんとなく仲のいいサフェル(記憶あり)とファイノン(記憶なし)という概念を前に作ったんですけどその2人がお気に入りだなという謎のSS ファイサフェってあるんですか?

11/10 なんか二人の話追記した



「ねえお姉さん、一人?」
――悪いけど人待ってるから他当たってよね」
「まあそう言わずにさあ、俺達と遊んじゃおうよ」
伸ばされた手を、サフェルは体を反らしてするりと避ける。よくまあそんな厭らしい顔で笑えるもんだね、と、正面の男二人組を一瞥したサフェルは、興味をなくしたように手元のスマホへと視線を戻した。
直近、『そろそろ着くよ』と送られてきたチャットに、サフェルは泣いてるミュリオンのスタンプを貼った。続けて文字を打つ――『助けて救世主❗️』
「ちょいちょい、お姉さん感じ悪くない?そんな邪険にしないでよ」
…………
ねちっこい声はまだ止まないようで、視線を向けるのも億劫だ。途切れ途切れに焦った様子の単語が連投されるチャット画面を閉じると、サフェルは手持ち無沙汰の左手で時間を数え始める。いち、にい、さん――すみません、すみません、と、遠く、焦った声が聞こえるのに、忙しないなあ、と息を吐く。
「おーい、聞いてる?何、クールだね」
「な、そんな待たせているやつなんか放っておかない?どうせお姉さんのことなんかどーでもいいって、」
――ああ、そうだな。
確かに、彼女を待たせてしまったのは僕の落ち度だろう。
けれど、それはお前達が彼女に気安く声をかけていい理由には足り得ない。違うか?」
二人組の後ろ。軽く息を切らせながら、彼らより一回り大きい青年が、その脳天を不機嫌そうに睥睨する。背後からの圧に、ぎょっと目を見開く二人組が振り向いた瞬間。青年は真顔で距離を詰める。
「今すぐ、立ち去れ。……悪いが、あまり僕は気の長いほうじゃない」
砂を擦るようなその低い声は、十分な威嚇の効果があったようで。男たちは何やら鳴き声のような捨てぜりふを残して離散した。サフェルはバイバイ〜と手を振りながら、向かいの長身を見上げる。
「いやぁ、ありがとー。助かったよ、『救世主』サマ?」
……心臓に良くないってサフェルさん……
その背を半眼で見送りつつ、はあ、とため息をついた青年――ファイノンが、それまでの剣呑な気配を収めると眉尻を下げる。
「突然のヘルプは、流石にビックリするよ。
ああ、でも……無事で何よりだ。
この辺りは、あまり治安はよくなかったな。今後の集合場所は改めるよ」
「にゃはは、ごめんごめん!良いよ気にしないで。
ま、そろそろあんたが来るって言うからさ、ちょっと急いでもらおうかなーって、悪いね?」
「そんなことは……まあ、うん。
――ありがとう」
「?」
投げかけられた脈絡のないお礼の言葉に、サフェルは目を瞬かせる。
「イヤ、何が?
お礼なら、助けてもらったあたしの方じゃないのこれ」
「だってサフェルさんのことだから、一人でもどうとでもなったろう。
そこで態々僕を頼ってもらえたっていうのは、結構嬉しいものだからね」
……坊やって変なやつだよねえ」
「そうかなあ」
単に良いように使われただけなのは目に見えているのに、心当たりはさっぱりありませんよ、という惚けた顔をする。そんな姿に彼の変わらない性根を感じて、サフェルは口元を綻ばせる。
「あんたのさ、そういうヘンに真面目なところ、嫌いじゃないよ。
ファイノン」
……それは、どうも?」
「あ、でも!
さっきみたい低い声はやめてよね。あーゆーあんたの声苦手なんだよあたし」
びしり。指をさされたファイノンが、あー、と、困った様子で頬を掻く。
「それは……ごめん。怖がらせたかな」
「いや坊やにビビるとかありえないけどさ。こう……土手っ腹めっちゃ痛むから。分かる?」
「分からないな!?何だいそれ、周波数とかの問題……?」
輪廻数の問題とは言わず、さあねえ、とサフェルは、何万回と空いた風穴の辺りを撫でつつ適当に誤魔化した。