いを
2025-09-24 21:12:45
3074文字
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刀神
浮き島の魔法使い
それぞれフォロワーさんのお子さんお借りしています。


 月を取ってきて、と彼は言った。
 月というものは誰のものでもないので、お金をたくさんためて彼を月に連れて行っても取ってきたことにはならない。
 白梅氷華がのぞむものはなんでも取ってきてあげたいけれど、月は一葉にとってはお手上げなのは事実である。
……
 彼がそう強請って二日がたった。
 駅に物産展のテントがはられていた。興味本位で眺めていると、月の名のつく丸い和菓子があったので、それを一箱購入する。
 この和菓子で納得するのか不明だけれど、きっと彼は一葉を困らせたいだけなのだということは知っている。だからさんざん悩んだのだ。
 そしてその夜、ちょうど満月の日。ベランダにお椀をおいて、月を映した。
「白梅。ほら、見て。月だよ」
 上半身を伸ばして、彼はお椀に浮かんだ月を見下ろしている。
「まあまあだな」
「あとね、これ。ちょうどいいと思って買ってきたんだ」
「?」
「今日の月みたいにまん丸で、中にクリームが入ってるんだって。おいしそうでしょ。月の名前のお菓子だよ」
「ふうん」
 と、すげない相槌だけれど、目がきらりと輝いた。
「月は誰のものでもないから借りてくることも、連れて行ってあげることもできないけど、これでいい?」
 彼は指先で包み紙を剥ぎながら、「まあ、いい」といった。
「かぐや姫もなかなか無理難題を出すよね。俺もちょっと思い知ったかもしれない」
 そっと笑い、ふわふわの和菓子に口をつける彼を眺めた。