N巡目 愛に生きた男の話(jojoリゾプロ)

十数年前に書いたリゾプロを加筆修正しました
暗殺業のリゾが子どもだったプロを拾う話です
他キャラもちょっと出ます

⚠︎映画「レオン」のオマージュあり
⚠︎ネームドキャラの死があります、すみません。ただこの後実は生きていて、プロと再会するところまで書きたかったのですが、時間が足りませんでした


【P】

 遅めの起床だった。
 グレーのタンクトップにカーディガンを羽織っただけのプロシュートは、良く馴染むボトムを最後に履いた。今日は仕事も特にない。相棒のリゾットが今夜あたり帰ってくる。
 裸足のまま冷たい床を歩くと、下の階のギアッチョという青年が玄関を出る音がした。
 良く通る声の彼は、くるくるとしたクセのある巻き毛で、青みがかっている不思議な色をしていた。それが珍しくて、同業者でたまにアパートへ遊びにくるメローネに見つかって、「なに、あの子かわいいー!」と叫ばれた。「いや、ただ色んなものに腹立ててるキレやすい若者だぜ」と注意しても、メローネは構わずギアッチョに声をかけにいき、案の定キレられていた。
 それからメローネは「ツンギレなのがベネ!」とか言いながら、仕事の無い日はギアッチョの大学までの送迎をしたり、なんと大学構内をうろうろしているらしい。
 今日は、メローネも非番のはずだから、
「ギアッチョ! 乗って乗ってー!」
「またかよ……
 うんざりした面持ちの青年にひるむ様子もなく、メローネはプライベート用の愛用バイクで迎えに来ていた。
「プロシュート、オハヨー! いってきまーす」
「はいよ、行ってらっしゃい」
 窓からのぞくとメローネの投げキッスがきたので、苦笑しつつ手を振った。
(あいつ、顔はいいんだけどなァ)
 とプロシュートは残念に思いながら、ため息をつく。
 メローネのくすんだ風味の蜂蜜色の髪に、あまり日に焼けていない肌、アシンメトリーな髪型が絶妙で、よく女性に声をかけられているのを見たことがある。モデルみたいな体型でスカウトマンの目も光るが、本人曰く、
「パリコレ? やだよめんどくさい、あれ自腹で出なきゃいけないんでしょ?」
 しかしギアッチョには一銭も惜しまない男である。
 素顔はお気に入りのPCでエロ動画を見たり、割とマゾヒストだったりするから、プロシュートはギアッチョを心底哀れんでいる。それを一度だけメローネに伝えたら、
「えーでもリゾットだって好きな子と九年も一緒にいて手出さないんだよ? どんだけ自分追い込むの」
 とのたまわれた。
 そのとき、プロシュートの白い肌が真っ赤に染まり、メローネに思わず額にキスをされてしまったぐらいだ。
「かわいい! プロシュート!」
 と言いながら。
 ホルマジオにも、「お前ら『まだ』なの?」と呆れられ、メローネの言う通り九年の歳月が流れている。
 相変わらず清々しい気候と陽気な日差しに恵まれたイタリアの街角で、プロシュートは思い出して赤面したまま、イライラと洗面台へ向かった。

【R】

 リゾットが所属する政府直属の暗殺集団は、スパイ業も兼ね、かつイタリア警察の泥臭い部分まで手伝わされる。
 最近は特にマフィア抗争が厳しい中で、警察の手に負えないルートにリゾット達の出番がくる。今日も小競り合いの怒号響くパーティーで、マフィアのドン一人を撃った。
 リゾットが持てば細身に見えるライフルから、灰色の硝煙がのぼる。すぐに狙いをつけて二発目を狙ったが必要がなさそうだ。崩れ落ちるドンを確認し、リゾットの彫りの深い双眸が細くなる。
 うすら寒くなってきた空は、藍色をこってり塗ったような中に白く瞬く星が無数に見えた。今夜は月がないから暗く影も落ち、自分たちは間違いなく向こうからは見えない。
 ライフルを抱え直し、低い体勢のまま隠れ、ときが過ぎるのを待つ。恐らく相手側は撃たれた箇所と角度から、スナイパーの場所を確認するに違いない。だが双眼鏡に写るのは空しい影のみだろう。歯がゆそうな相手の声と、呻くドンの声が混じり合って、あまり良い音色とは言えない。
 リゾットは後退した。パーティーホールから離れた距離とはいえ、いずれ見つかってしまう。仲間に無線で合図を送ると、ライフルを手に取り引き上げた。
 ……あのマフィアは、あれで散り散りに終わるだろう。かくも信頼関係とは薄いものか。息絶えたドンに蹴りを入れ、いつかただの街のゴロツキに戻るマフィアの下っ端たちがパーティーホールを出て行く。
 非公認のパーティーで、踊る連中にはすでにドラッグの片鱗が見え始める。ドンの死体はいつしかどこかへ運ばれ、リゾットが最後に見たのは、ドンの指にはめられた、ぎらぎらと照らされた醜い青いサファイヤの指輪だった。

【P】

 夕暮れ。バゲットとワインを買い足して、サラダ用の野菜も持ちながらプロシュートは帰宅していた。レタスの淡い植物の香りと、バゲットの香ばしさが食欲をそそる。
 隣の住人にプロの調理師がいて、アパートにきて三年目の春にレシピを色々教えてくれた。その内のお気に入りで、今日は帰ってくる相棒をもてなすと決めている。暮れていく太陽の赤さを背に、少し肌寒くなった季節に身を震わせてゆっくりと、乾いた白い石畳の坂道を歩く。
 太陽に照らされて所々植わっている花壇の花が輝いて見える。赤、黄色、黄緑、青、たくさんの色彩も、日に当たっていっせいに金色にたなびいた。
 ──かつて、自分を愛してくれたおばあちゃんの飾る花も、色とりどりだった。
「テーブルに飾る時は慎重に、窓に飾るのは美しく」
 おばあちゃんの魔法だと最初は思っていた、その言葉。その内、彼女が昔はずいぶんと人を呼んで社交的であったことがわかった。テーブルは皆が集まる場所だから色々な角度から花が見えるように、丁寧に飾った。一番記憶にあるのは小振りなひまわりで、ペッシが喜んでいた。あのときも窓からこういうまばゆいばかりの太陽が見える夕暮れで、今日よりは少し暑い日で。
 ……通りすがりに紙袋をくしゃりと握り、少し俯き加減で歩くプロシュートを、久しぶりに見た路地沿いのアパートの住人は、彼の手の甲に伝う水滴に、見て見ぬ振りをして坂を下っていった。

【R】

 夜、リゾットは帰還した。アジトで報告をまとめ、「久しぶりのまとまった休暇を楽しんできなよ」とホルマジオに笑われた。
 シャワールームの排水溝に粉塵と埃が流れる。任務での疲れよりも移動距離の長かった今回は、タッグを組んでいたチームも同様に思っていたようで、最後の帰り道は苦笑いしか漏れなかった。
 下着も上着も一新し、ジャケットを羽織る。厚手のジャケットを置いて良かったと、アジトを出て風に吹かれ感じた。寒さが堪えるほどではないが、この調子だとそろそろ本格的に冷えそうだ。
 ──目の前にいる今回の任務には連れて行かなかった相棒が見えて、少し目を見開く。
「お疲れさん」
 やや火照っている顔をして、「先に少し飲んでた」と聞くまえから答えてくれた。寒い中陽気なテンションのプロシュートは、横にいてもわかる体温の暖かさだった。彼が首に大きく巻いた真っ青なストールが、もう冬になるのかと思わせる。
 人通りの少ない道を、小さく光る淡い黄色の街灯が照らす。
 背の高いリゾットは、プロシュートと頭一つ分は身長が違った。風に吹かれるプラチナの髪と程よく焼けた色の肌。こう見ればそこら辺を歩く二十七、八の青年と変わらないはずだ。いや、それよりも老け込んで見られているかもしれない。昔より少し背筋が丸くなった気がする。
 リゾットは休暇をのんびりと過ごす事が好きで、最近は昼間のほとんどを読書で過ごす日もある。育ち盛りのプロシュートの方がしゃきしゃき動いて、リゾットは穏やかにそれを見ているという構図が多い。まるで年を取って落ち着いた大型犬が、よく遊ぶ仲間を見守るようにも見える。背筋の丸みだを劣化だと感じている自分に対し、プロシュートは安堵を覚えることも多いと言われた。そのことに関してはやけに笑ってよく喋る。リゾットが年を取っていくことのなにが嬉しいのか。リゾットには計りかねた。

【P】

「機嫌がいいな、プロシュート」
 トリュフ入りのオリーブオイルで香り高いサラダと、ガーリックトーストとミモレットチーズ、辛口の白ワイン。最後に出された揚げられた白身魚を香草に包みながら、静かな夜にリゾットが口を開いた。
 ドルチェとして取っておいたバニラアイスを すくいながら、プロシュートは酒気を帯びて赤くなった顔で笑う。リゾットが昔からよく見てきた、まだ幼さが抜けない笑顔らしい。プロシュート自身はすでに「俺は大人だ」と言ってやりたいが、老犬のように落ち着いた彼からすれば、大した差はないのだろう。
「さっき、昔を思い出してたんだ」
「おばあちゃんのことか?」
「そう。今度、花買いに行かないか?」
「ああ……どこに飾る? それとも墓参りか?」
「墓は知らないんだ、残念ながら」
 首を振って、プロシュートはリゾットの横で皿を片付ける。銀食器に、自分の白い、骨の浮かんだ指先が露になる。さっきシャワーを浴びたからまだ湿った髪が張り付いて、指でかき上げると水滴が一筋、頭蓋 ずがいから首を伝って行く。
「花はここに飾る。テーブルの上と」
 手を置いたプロシュートは、感慨深く少しテーブルを撫でた。そこがまるでおばあちゃんとの思い出の場所であるかのように錯覚する。めまいのような瞬間が訪れたが、ほんのわずかだ。今、目のまえにいるのはリゾットしかいない。もしかしたら、亡霊というものは本当にいて、ずっと側で見てくれていたんだとすれば、それは僥倖だが複雑でもある。人殺しに身を やつし、おばあちゃんは──ペッシは、悲しんでいないだろうか。これもまた、プロシュートの運命と受け入れてくれるだろうか。
 花を飾ることで、せめてもの慰めになれば。プロシュートは言葉を続けた。
「窓、に……
 その手を、リゾットが上から撫でる。ぞわ……と肌が粟立って、背筋まで震えた。てっきりこの気候で寒いのかと思えば、顔は熱い。
 まどにかざるんだ。
 そう声を出そうとしても、空気を求めて開放されたままの口は、言葉を紡ぎ出せなかった。
「なに……?」
 プロシュートの小柄な頭に、リゾットの手が回る。椅子に座ったままのリゾットに当然もたれかかるような姿勢になり、途端に顔面に熱が集まって恥ずかしくなる。
 まだ、プロシュートは愛されるのには慣れていない。リゾットはそれを知っていた。

 ──昔、いくら女達が手ほどきをしても、任務のためだとわかればプロシュートは愛を演じた。演じる愛に慣れていくプロシュートが怖くなり、最初はリゾットもあくまでも仕事の相棒としての範囲内で彼と話していたそうだ。
 どうして怖くなったのか、考えてみた。ただの軟派なイタリア男になったと懸念したからか、それとも違う理由があるのか。
 そんなことを心の底のぼやけた意識で考えていてしばらく経ち、プロシュートは初めて殺しの任務を遂行した。彼はその足で真っ先にリゾットの所へ駆けた。返り血の濃い匂いに震えているプロシュートの体と、氷のような冷たい指先をリゾットは肌身で感じて、もう一度、どうして彼を怖く思ったかを今一度考えたらしい。
 リゾットは「恐れていた」と言った。
 このままあの「死んでいったおばあちゃんと弟」のくれた小さい愛だけを支えに生きて、演じる愛だけを体に覚えて、プロシュートが壊れてしまうことを。
 リゾットは幼い頃のプロシュートを知る数少ない人物であり、プロシュートは自身の窮地を二度救い出したという、「生ける事実」にすがっているのである。三度目の救いの手を、ここでもし、リゾットが出さなければ。プロシュートは壊れざるを得ない。
 リゾットはそのとき、心の中で、プロシュートへの恐れと共存していた、出会った時から疼く「生きている」感情を言わなければ、と思っていたという。
 リゾットはそれでも、言い出せなかった。やはり彼もこれまで、お世辞にも幸せとは言えない境遇で育った中、人を愛するのには慣れていなかったからだ。
 愛してほしい、と、恐らくプロシュートが生みの母親に散々告げたであろう言葉を聞くまでは。

「おばあちゃんに嫉妬した?」
 プロシュートはリゾットの背中を撫でていた。リゾットがプロシュートを見下ろそうと顎を下げると肩口に鼻を軽くぶつけてしまった。赤い鼻をこすりつつ、自分から漏れるのは笑顔だ。リゾットが少し慌てるのも可笑しい。
「すまない」
「いいって。それより、嬉しい」
「なぜ」
 プロシュートは長い睫毛を瞬かせ、はにかんで顔を逸らす。ただしばらくすると向き直り、抱かれていたリゾットの腕から、するりと出て行った。
「愛してもらってるから」
 リゾットと手だけはつないだまま、プロシュートは俯いた。
 つないだ手が離れないようにリゾットが立ち上がり、先程の落ちて行く水滴を追うように、そっとプロシュートのうなじに口づける。
「っな……!」
 じゅぅ……と音がするような口づけで、最後は高く突き出た頸椎 けいついを、熱い舌がザラリと舐めた。肩を抱かれ、ほぐすようにリゾットの舌がなぞる。歯が立ったり、吸われたり、味わうようにプロシュートに口づけをし続ける。
 そしてひょいと抱えられ、細い体は、思ったより近くにあるリゾットの顔に驚いてしまう。直視できなかった。目を逸らそうとすると、逸らした先は寝室で、二人で眠るツインベッドが見えた。どちらに顔を向けてもただひどく狼狽するだけで、プロシュートの体も意志もガチガチに固まった。
 リゾットが普段眠るベッドで、静かに横たえられる。聞いた事のない早さの心臓の鼓動が、耳の側で聞こえた。互いの音が反響しているようだった。
 上に覆いかぶさって、彼がプロシュートの顔を撫でる。いつも眠るとき、自分が枕につけているローズムスクの香水を気に入ってリゾットもつけるようになった。同じ香りがふわりと漂い、リゾットの皮膚からもアジトのボディソープの香りがした。
 ああ、これ、メローネが、良い匂いだから、ってアジト用に買ってきたやつだ。
「うなじへのキスは、秘めた想いがある、って意味だぜ?リゾット」
 今度ギアッチョにもあげるんだって言ってたっけ。
……で、何だよ、お前の秘めた想いって」
 でもギアッチョは多分もっと爽やかなの好きそうって俺が言ったら、あいつ、
「プロシュート」
 なんて言ったんだっけ? そうだ、そうだった。
「愛してる」
 愛があればいいの! って言ってた。

 リゾットが最初にみ始めたのは足だった。プロシュートの長い足の親指を、付け根に沿って舐め取る。あからさまに見える赤い舌が、リゾットのプラチナの髪と対照的で、目が冴えてきた暗闇の中でもわかる。プロシュートはくすぐったくて、身をよじった。するとそれを遮断するように足の甲を噛まれ、太い血管を歯でなぞられる。
 よく締まったアキレス腱にキスを落とすと、初めてプロシュートは息を詰めた。ボトムが脱がされ、ふくらはぎをまるでマッサージするように揉まれる。膝頭を立てられ、そこにもキスが落ちた。リゾットの目の色は至って冷静だ。
「何で左ばっか
 足を持ち上げ、膝裏を撫でる。神経が集中しやすい膝は敏感だ、またプロシュートは短く息を吐いた。左の太ももの内側を、大きく舐め上げる。
 だんだんと上へ、脳に近いところへ刺激がのぼってくるころ、
「っあ……
 プロシュートは初めて声を上げた。それがみっともなく掠れて、かつて抱いたことのある女たちのような声で、慌てて口を塞ぐ。
 脚の付け根を尖った犬歯が襲う、すぐに いたわるように舌が這う。もう視線の先には、張りつめて快感を露にしたプロシュート自身がある。恥ずかしくて、思い切り顔を背けた。
「は、あ……!」
 背けた首へ、急にリゾットが食らいついた。耳の裏から首筋にかけてどくどくと伝う鼓動を、指でなぞられ、キスが降る。こめかみへ、眉間へ。キスが雨のようで、プロシュートのきれいに揃った睫毛の上にも降り注ぐ。
 少し間が置いて、プロシュートは舌を出した。この行為を、理解してきた。リゾットはキスをせず、その舌に歯を立て、かすめた。リゾットは今度は脇をまさぐり、二の腕を舐める。プロシュートの細くしなやかに鍛えられた体を堪能して、最後に腹と、左胸に、鬱血を残した。血流の良いそこは、赤く膨れた。
……何回殺されたんだろうなァ、今ので」
「九年分だ」
「殺されて、善がるなんてな俺、マゾかも」
乱れた呼吸が整う前に、リゾットが顔を近づけた。伏せていた目をきちんと合わせて、プロシュートの美しく澄んだサファイヤブルーの瞳を覗き込む。
 やっぱり「きれいだ」と言われる。
「あのときの指輪は、淀んで哀れな色だった」
「指輪……?」
 リゾットがなにかを思い出すように苦々しい顔をしていた。そこで軽く、任務の話が始まる。ライフルのスコープの先に見えた、暗殺対象の人間。その人間を取り巻く環境。そして、所持品の中にあったギラリと光る指輪も。他愛のない話だ、ベッドに持ち込むまでもない。だというのに、リゾットとプロシュートは額を小突き合わせ、唇の触れ合いそうな距離のまま話を続ける。そして完全に話し終えたころ、二人の目が合った。今思えば、この任務の話はただの照れ隠しだったのだろう。
 そうして初めて、二人はとうとう唇を重ねた。
 吸いつくようなしっとりした唇に、やや冷たい舌が絡んで、けれとその奥の弾力は熱い。プロシュートの目の奥が、警報を鳴らすようにチカチカした。何度も息を切らし、貪るようなキスに応える。
 その内、涙が流れた。あやすようにリゾットが頬を伝う雫を拾っても、プロシュートはとめどなくはらはらと泣いた。「嫌だったか?」と聞かれれば「そうじゃない、頼むからやめないでくれ」と懇願し、腫れるくらい、痛いくらいキスを交わし続けた。
「あ、あ……
 リゾットがプロシュートの腰を引き寄せて、主張した陰茎をそっと擦った。いかに堪えていたのかがわかる震え具合だ。歓喜と快楽と、これから迎える初めての感覚を覚悟しているのか、プロシュートは目をぎゅっと瞑っている。
 腕を回してリゾットに身をゆだねる、軽く上下するだけで、彼の腰は跳ねた。
「ぃや、あ……あ、イく、イ、くぅ……
 静かに、プロシュートは達した。白濁とした液がぽたぽたと滴り、それでも自身は硬度を失わない。
……リゾット、手……
 汚しちまった。ぽつりと呟くと、リゾットは自身の口にその手を持ってきて、軽く含んだ。
「あ、だめ、だっ……て!」
 再びプロシュートの雄に手を沿わせ、少し強く、なぞるように扱かれた。ゆらゆらと動く腰が卑猥で、快感に我を忘れているのか膝が開いていく様が官能的で、リゾットは止まらなかった。
「ああ、や……っもう……、んん!」
 二度目の射精は、シーツを濡らす。その体液を手にも受けたリゾットが次に目指したのは、プロシュートの後孔だった。
 びくりと肩を戦慄 わななかせ、恐らく訪れるだろう痛みに耐えた。ただそれは予想以上で、リゾットの骨張った指が一つ入っていくのもやっとだった。
 普段、リゾットが本を読んでいる時の背表紙をつかむ指を思い出す。
(しばらく読書中は手を見れねェな)
 と笑おうとした瞬間、体の力が抜けて、プロシュートの内部へ指は侵入していった。
「う、う……
……すまない」
「い、いいから……はは、これ、俺、慣れるのか……?」
 また苦しそうに笑う姿に、リゾットは指を動かすのをスローに変えた。献身的ですらあり、改めて彼に愛しさがこみ上げる。早くなんとかしてやりたい、と焦る気持ちを抑え、「もう一本、いいぜ」と青白い顔で強がった。慎重に二本目の指が差し入れられる。内臓がひときわせり上がる感覚があり、プロシュートが顔面蒼白になる。
「やはり無理か」
 とリゾットは、指を奥まで差し込んで抜こうとした。
 もぞもぞと、なにかが背中を這うような感覚がして、同時に腰が浮くような、痺れるような快楽がじんわりと襲う。
「あ、やああっ……そ、こ……!」
 ひときわ大きい声で喘いだプロシュートは、顔を真っ赤にして唇を噛んだ。しかし、リゾットが意地悪く同じポイントをかすめたり擦ったりするせいで、また涙が溢れそうになる。
「ん、あ、ああ、ぁあっ……
 プロシュートは訳が分からなくなって、目のまえの男にすがりついた。そのとき、自分の勃ち上がった陰茎と、リゾットの布越しに伝わる陰茎が擦り付けられて、熱さと気持ち良さで腰を揺らめかせる。
「いやらしいな」
「あ、う……っ言うなっ……ああ、あ、はぁ……!」
 初めて見せるプロシュートの痴態は、恥そのものだというのに、リゾットの雄は抑えが利かなくなりそうだった。無意識で当たっていたプロシュート自身を握り込まれ、指を抜いて陰茎が入ってくる。
 深くベッドに沈み込む白い肌が、赤く、青く、せわしなく表情を変える。
「っ……つぅ……
 痛みにひきつれた感覚と、圧倒される触感に、プロシュートは歯を食いしばった。
 全てが収まるまでに、何度も何度も抜き差しが繰り返された。リゾットは辛抱強く待っってくれた。体を抱きしめ、荒い息を吐く恋人に、「すまない」と何度か詫びているのが聞こえた。
 きつい収縮に意識が飛んでしまうぐらい、プロシュートの中身は熱くなっている。少し動けば前立腺を刺激して、快感をはっきり表す顔つきで、リゾットを艶かしく見つめる。
 汗で濡れた額も、半開きの唇も、潤んで霞がかった青い目も、なにもかもを使って、言葉にならない感情を訴える。
……っあ」
 リゾットが少しずつ律動を始めると、刺激が変にブレて流れていく。のけぞって抗議するように手で己の顔を覆った。
「い……ん、んん」
「ここか?」
「そこ、もぅ……だめだ、また出る……
……いやなのか?」
 きゅうぅとプロシュートの内部が締まる、恐らく絶頂が近いのだろう。萎えかけていた陰茎も、自分の意識と裏腹にそそり立って零し始めた。
「出る、ぅ……あ、リゾットっ……!」
 誘うように腰がうねり、堪らない。ぐっと力がこもって奥まで突き刺され、グラインドしてかき回してくる。
 その内に、プロシュートから口づけを求めた。絡まる舌が、まるでプロシュートの中で起こっている熱さみたいで、なにも考えられず腰を打つリゾットの波の囚われらる。
「あ、ああ、イくっ……
 ずる……と抜かれた衝動さえも快楽で、二人は同時に達し、互いの腹を汚した。
 ──肩で息をするプロシュートに、リゾットの手が伸びる。慈しむように抱きしめられ、タオルで腹を拭われる。何度も額に、頬に口づけを送られ、あやすようなその行為に、「大丈夫だから」と告げた。美しい顔をリゾットへ向ける。
 またあのきれいなサファイヤで、きらきらとリゾットを映す。
 シーツとブランケットの波の中で、リゾットがまたプロシュートに欲情した。