すだ
2025-08-18 21:10:35
7577文字
Public 婿スバカグ
 

ある日のデートまたは休息

舞手カグヤ婿スバル。
絆レベルは4くらい。
働きすぎのスバルと喧嘩した、働きすぎのカグヤが仲直りしてお休みする話。
投稿者による幼少期の妄想があります。
こんなの書いてますけど、一番ワーカーホリックなのはタクミさんとクサツさんですよね。
#スバカグ



 里で必要な物資を購入し、そろそろ出ようと荷物を取りに家へ向かったスバルは、往来をうろうろ行ったり来たりする幼馴染と遭遇した。
「カグヤ」
 名を呼ぶと、カグヤの体が飛び跳ねた。そんなに気まずかったんだとスバルは苦笑いする。
「お、おはようございます……
 消え入りそうな声でカグヤが挨拶を返す。久しぶりに聞く幼馴染の声がスバルの心を温かくした。やっぱりカグヤと喧嘩をするのは嫌だ。
「オレ、今日一日お休みをもらったんだ。ゆっくり過ごすつもりだから、カグヤは安心してくれ。心配かけて、ごめん」
 ひと息に言い切るとスバルはカグヤに頭を下げた。顔を上げると呆けた様子のカグヤと目が合う。
 彼女の白磁の頬が朱に染まり、表情がみるみるうちに明るくなった。カグヤの愛らしさに思わずときめくが、スバルは何とか顔に出さないよう耐えた。
 最近はカグヤがより一層可愛く見えてしまい、毎日心臓が大忙しだ。だが、知られてしまうのが躊躇われできる限り無表情を貫くスバルである。
「私も、ごめんなさい。いくらスバルが心配だからといって、干渉し過ぎました」
「いや、オレも頑固なところがあるから、あのくらい言ってくれる方がありがたいよ」
 少し立ち話をした後、それじゃあ、とスバルは立ち去ろうとした。慌てた様子でカグヤが彼を呼び止める。
「あ、あのスバル! その……私もついて行ってはいけませんか?」
「えーっと……
 それだとかえって休めないのでは。好きな子とお出かけ。実質デートみたいなものなのでは?
 心中穏やかでないスバルだったが、努めて平静を装った。
「もしかして、オレが休まないんじゃないかって疑ってる?」
「え、いえいえいえ! そ、そんなことないですよ!?」
「本当に?」
「本当ですってば! ……あのですね、私もいろはさんに言われてしまいまして」
「うん?」
「働き過ぎだって」
……
 何を今更、とスバルは思った。
「何を今更、って思いましたよね、今!」
 何故分かった。
「う、うーん? まあ、そうかなあ……?」
「もう! ……でも、その通りなんです、休まなくちゃいけないのは分かってるんです。だけど私、休み方があまり分からなくて」
「カグヤ」
 悄然と佇む幼馴染はいつもより小さく見えた。まるで幼い頃泣いていた小さな女の子のようで、放って置けない気持ちが強くなる。
「オイラからも頼むスバル。オイラも、どうすれば人間が休めるのか分からないんだ」
 同じくしょんぼりと俯くモコロンにスバルは慌てて声をかけた。
「わかった、本当にぼーっとするだけだから退屈かもしれないけど、キミたちさえ良ければ一緒に行こう」
「ありがとうございます、スバル!」
「ほんとか!? ありがとうスバル!」
「それじゃあ少し待っててくれる? 支度をしてくるから」
「はい」
「おう!」


 少し遠出になるからと、弁当の用意はしてある。多めに準備しておいたから何とかなりそうだ。すぐ用意できるカグヤの好きなものを思い浮かべながら家に着くと、スバルは手早く支度を済ませる。荷物袋に弁当と水筒を入れると早々に家を出た。
 足早に幼馴染の元へ向かう。カグヤとモコロンが何かを話しているのが見えた。いつも仲がいい。
 カグヤの横顔を離れた所から見つめる。モコロンと談笑しながら、そわそわした様子で髪を整えている姿が、逢びきを待ち侘びる娘のようでどきりとした。
 まっすぐ前を見つめる紅藤色の瞳は夏の朝陽を浴びてきらめいている。綺麗だな、と思った。
 旅の間ずっと会いたいと願っていた想い人。まさか生きて再び会うことが叶うと思っていなかった。
 昔とは立場が大きく変わったせいで、何度かぎこちなくなることもあった。それでも自棄になっていたスバルの元へカグヤは根気強く訪れてくれた。
 今は彼女を始め、彼女を助けてくれたモコロンや里の人たちに恩返しがしたいと素直に思える。そう思えるようになったことを、嬉しく思う。
 スバルはカグヤへと近づいた。
「お待たせ。じゃあ行こうか」
「はい。今日はどこに行く予定だったんです?」
「うん、野原で横になりながらぼーっと雲でも眺めようかなって」
「ふふ、スバルは野原で寝転がるのがすっかりお気に入りですね」
「故郷では野外でそんなことしたら凍死だからね。ずっと憧れてたんだよ」
「オイラも昼寝は好きだぞ!」
「それは良かった」