舎まゆ
2025-08-16 23:39:20
10556文字
Public 小説
 

文学フリマ大阪13新刊サンプル「短編集 紊乱」

文学フリマ大阪13

9/14(日) 12:00〜開催 (入場無料)

ブース:け-12 【あふたるちか】

短編集 紊乱

A6文庫版/228p

700円

WEB再録含む掌編10本、短編5本収録。



【解語之花】

しばらく育てていた鉢植えが、花を咲かせた。
 一輪の花だ。一ヶ月ほど前に、近所の花屋で買ったものだった。窓際に置いてまめまめしく毎日水をやっていたのだがついに朝方、花を咲かせたのだった。
 微睡(まどろ)みから目覚めた時、窓際に咲くそれを見た瞬間、私は咲いた、とただ思った。午前の淡い光に輝く花びらをぼんやりと眺め、時間を忘れるほどには、嬉しかった。
「あなた、水をやりすぎですよ」
 問題は、その花が喋る花だったということである。
 私は驚いて、水やり用のペットボトルを取り落とした。それは床を転がって、寝台の下に転がっていってしまった。そんな私の様子はお構いなしに、花は続けた。
「それと、ここは日差しが直接あたってしまうじゃないですか、肌に悪いのでどこか日陰に移していただきたいのだけど」
 花は口もないというのによく喋った。
 私は面食らいながら、はい、と二つ返事でその鉢植えを丁度よい場所――寝台のサイドテーブルに運んだ。花はよろしくてよ、と満足げにしたが、暫く黙ったあと、なんて狭くて殺風景な部屋なのでしょうと文句を言った。
 私としてはその殺風景さをやわらげるためにこの花を買ったのだが、ずいぶんと理不尽である。