ぎんちき
2025-08-15 09:38:34
5566文字
Public ブン木手
 

2025.08ワードパレットまとめ

リクエストいただいた3つと、自分が書いてみたかった1つを足した計4篇になります。

自分に課してみたレギュレーション
・タイトル+3ワードからイメージした短文を書く(文中にワードを出すことは必須ではない)
・4つのお題で連作とする
・順不同
・中3のふたり

ワードパレットはこちらを利用させていただきました。
https://x.com/torinaxx/status/1867366928672862327


今は離さないで

 W杯も終わり選手達は無事に帰国した。彼らは、それぞれの場所へと戻っていく。
「キテレツはまた飛行機か」
 長時間のフライトで疲れた伸びをしながら丸井は木手に尋ねる。
「ええ。一泊してからですけど」
「ん〜。そっか。んで、俺らが次会うのは下手したら……来年の夏とか?」
 木手はすぐに答えない。数秒空いてから口を開いた。
「そうでしょうね」
「連絡めっちゃする。通話もしようぜ。俺からだけじゃなくて、キテレツからもくれよ。それと、……約束してたもの、送ってくれる?」
 そんなつもりはなかったのに、自分の声に必死さの色が見え丸井は苦笑する。対する木手の顔を見ると、何やらぼんやりとした雰囲気を帯びていた。
「そうですね。約束の……大丈夫です。ちゃんと、しますから」
「シクヨロ!」
「はいはい……
 そうして話している間に、丸井を呼ぶ声がした。同郷の仲間達だ。
「やべ。行かねぇと……じゃあな、キテレツ。また……何なら今日帰る途中でも連絡、するから……返信くれよ!」
……えぇ。また」
 後ろ髪を引かれながらも手を振って別れを告げる。が、すぐに足は止まった。
 僅かな力だが、何かが自分を止めようとしている。それは間違いなく、木手の方から働いているものだと分かる。引っ張られているというほどではなく、少しだけの抵抗。これだけでも確かに木手が自分の服の裾を掴んでいるのだということが、十分に伝わってきた。
 丸井は唇を噛み、ゆっくりと後ろを振り返る。すると、すぐに木手は手を離した。
「キテレツ……
「すいません。そんなつもりは、なかったのですが、その……
 冷静さを取り繕いながらそんなことを言う木手。丸井は手荷物を放って、目の前の男に飛びついた。
「丸井くん!」
「キテレツ。すぐ会お。冬休みとか……遅くても春休みに。俺、沖縄行くから!」
 そう伝えてから身体を離すと、木手は驚いたような様子だった。が、すぐに表情が柔らかさを持つ。丸井もそれを見て微笑んだ。
「じゃあな!」
「道中気をつけて」
「キテレツもな!」
 荷物を持ち直し、丸井は小走りで仲間達の方へと向かった。そして最後にもう一度振り返り、自分を見ている木手に大きく手を振る。木手が小さくひらひらと手を振り返してくれたのが見える。丸井は既に、頭の中で「次」の時を思い描き始めていた。