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ぎんちき
2025-08-15 09:38:34
5566文字
Public
ブン木手
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2025.08ワードパレットまとめ
リクエストいただいた3つと、自分が書いてみたかった1つを足した計4篇になります。
自分に課してみたレギュレーション
・タイトル+3ワードからイメージした短文を書く(文中にワードを出すことは必須ではない)
・4つのお題で連作とする
・順不同
・中3のふたり
ワードパレットはこちらを利用させていただきました。
https://x.com/torinaxx/status/1867366928672862327
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耽溺タンデム
少し前から、丸井と木手のふたりは交際をしている。他の誰にも知られないよう、秘密裏に。
そこに明確な告白、というものはなかった。合宿終盤のある日、会話の流れで何となくそんなことになり、何となく了承し、何となく付き合い始めた。だからふたりとも、互いを「恋人」とは認識しつつもどこか現実味のない、宙ぶらりんな感情を抱いたまま日々を過ごしている。少なくとも、丸井においてはそうだった。
「おっ。隣、空いてる?」
移動用のバスに丸井が乗車し、少し進むと窓側の席に木手の姿が見えた。声をかけると木手は丸井を一瞥してから眼鏡を上げる。
「ええ」
端的で淡泊な返答。それでも丸井は嬉しげに笑い、木手の隣に座る。周りを見渡すが、まだ空席は多い。
「
……
」
「丸井くん
……
何してるんですか」
「いや、別に。何も
……
」
丸井としては、せっかく付き合っているのだから、と機会があれば木手に触れてみるようにしている。握手やハイタッチではなく、木手という存在の感触を確かめるような触れ方。それは彼への自分の感情を確かめる為の行為でもあった。
「
……
」
今回は、木手の右手の甲を自分の指で軽く撫でてみる。ただ、それだけだった。
一度くらい恋人らしく握ってみようかと、これまでに何度も思いはしたが、未だに成し遂げられていない。今もその考えが過ったがこの空間では誰かに見られてしまう可能性が高いので、避けることにする。
丸井が視線を上げてみると、木手は外を眺めていた。うっすらと窓に反射していて表情も見えるが、そこに浮かんでいるのは少なからず、喜びではないように見える。
「なぁ、キテレツ」
口を開いた瞬間、バスのエンジン音が変わる。間もなく発車するらしい。本日の行程がスタッフから口頭で説明される。チラッと横目で木手の顔を見ると、相変わらず澄まし顔をしていた。
丸井には木手のことがよく分からなくなってきていた。
彼は丸井が触れてくることを一切拒んでこない。かといって、あちらから触れてくるということもない。この現状に、段々と丸井は自分だけが相手を思っているのではないかと思い始めた。
「付き合い始めて」以来、そんな日が続いている。だから昨日、丸井はついに「自分と付き合っている自覚はあるか」ということを確認してみた。すると、「ある」との回答があった。つまり丸井の一方的な感情ではない、はずだ。
しかし、そんなことのあったすぐ後でも反応はこれまでと変わらない。それが丸井をますます混乱させ、また、いくらかの寂しさをも覚えさせていた。
「
……
ふぁ
……
」
昨晩は少し、夜更かしをしてしまった。それに加えてバスの揺れが心地良く、もやもやとした感情を和らげ、丸井を穏やかな眠りの世界に誘う。
「
……
ん。あ、ヤベ。俺、寝て
……
た
……
?」
目を覚ましてまず気がついたのは、左手への違和感だった。妙な温もりを感じる。その熱源が一体何であるのかというのを考えるよりも、そして目視するよりも先に、丸井は窓の方を見る。
「おはようございます」
丸井の方に顔を向けることはなく、外を眺めたまま木手が言う。それは丸井に声を掛けたというよりも、小さな呟きにすぎないようにも感じられるものだった。そして、丸井が左手に感じている温度が増した。
「うん。えっと、
……
おはよ
……
」
繋いだ手を自分の方に少し引き寄せて、膝の上に置く。丸井は目的地に到着するまでの数分間、ジャージ越しにふたり分の体温を堪能しておくことにした。
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