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ぎんちき
2025-08-15 09:38:34
5566文字
Public
ブン木手
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2025.08ワードパレットまとめ
リクエストいただいた3つと、自分が書いてみたかった1つを足した計4篇になります。
自分に課してみたレギュレーション
・タイトル+3ワードからイメージした短文を書く(文中にワードを出すことは必須ではない)
・4つのお題で連作とする
・順不同
・中3のふたり
ワードパレットはこちらを利用させていただきました。
https://x.com/torinaxx/status/1867366928672862327
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はにかみ屋の頬
試合が終わったあと、丸井が木手に伝えた言葉に嘘偽りはない。だが時間が経つに連れてじわじわと染み出してきたこの感情は、きっと、悔しさに他ならなかった。
晴れやかさと、鬱屈とした気持ち。そのどちらをも抱えながら丸井は木手に言われた場所へと向かう。海風が吹き、星の瞬きの下で木手はこちらを見ていた。
「よっ! 待たせた?」
「いえ」
「ならよかった。つーかさ、キテレツから声かけてくるなんて、珍しいじゃん。通知見てビックリした」
「そうですかね」
「うん。んでもって、すげー嬉しかった! またこうやって気軽に誘ってくれていいんだぜ。俺達、付き合ってんだから!」
笑顔を向けたところで木手は微笑みもしない。決してそれを嘆くような丸井ではないが、以前感じていたような一方通行感を抱く。
「丸井くん」
「ん?」
木手はただ、丸井を見ている。丸井も静かにそれへ応じるように見つめ返した。波の音だけがふたりの間を取り持つ。
「無理をしていないですか?」
木手が丸井へ向けて発した言葉。それはすぐ地面へと落ちてしまうような、小さくて、重い響きだった。
「してない」
反対に丸井の返答は軽く、風に乗ってここから遠くへと飛んでいってしまいかねなかった。丸井はそれを自覚する。木手もまたそうと感じているであろうことも。だから、それを前提として木手に尋ねる。
「なぁ。今、俺のことカッコわりぃって思った?」
「いいえ」
「ホントに?」
「えぇ」
「そっか
……
」
安堵。溜息。脱力。丸井はしゃがんで、波の動きを眺めた。奇しくも、先日と同じ状況になったが、心持ちは全く違う。
「キテレツとなら
……
」
もっと結果を出せると思ったんだけどな。
もっとふたりで先までいって。
もっと俺達の力を示して。
もっと、一緒のコートに立っていたかった。
「結果はさておき、私はアナタを選んだことをこれっぽっちも悔いてはいませんよ」
「
……
」
それは木手の独り言だったのかもしれない。それでも丸井の中に深く刺さり、先ほどまで彼を満たしていた感情とは別のものが広がってきた。
「き、て
……
うわ!?」
「
……
しっかりしてください」
「うん
……
へへ
……
ごめん」
立ち上がろうとして、またもよろけてしまった。今日は転びはしなかったが、見事に木手の腕の中に収まった。骨や筋肉の硬さはあれども、思いの外柔らかな感触に、丸井はどぎまぎする。すぐに身体を離し。息を整えていると、木手が両腕を広げてみせた。
「何?」
「ほら」
「え?」
訳の分からないまま一歩木手に近づくと、腕を広げたまま相手も近くに来る。そうして数歩、互いに歩み寄りとすぐに距離はなくなった。
「わっ」
広げられていたものが、背に回ってくる。力を込められると苦しいのに、それが今は心地よかった。
「
……
」
丸井も恐る恐る、同様にする。木手の身体の厚みと温もりを直に感じられた。
「はは。これ、くすぐったいけど
……
何か、落ち着く!」
木手は何も言わない。けれど彼から響いてくる心音だけでも丸井は十分だった。そして心が満たされたことで、丸井の口からひとことが転がり落ちた。
「俺。キテレツのこと、好きだなー
……
」
「
……
」
それに対して、木手も何かを返した。波音にでも掻き消されそうなくらいに、本当に小さな声だった。けれどそれはしっかりと丸井の耳には届いている。だから丸井は顔を上げ、木手の表情を覗き見た。
「キスしていい?」
「
……
どうぞ」
その言葉を聞いて、丸井はそっと木手の頬に唇で触れる。
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