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来羅
2025-07-31 22:42:09
10390文字
Public
トワウォ
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空言(風信)
さわマル開催おめでとうございま……した……!
落とした兄貴記憶喪失話です。
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「すまない、心配をかけたようだ」
「まったくだよ!」
ソファの前で腕を組み、仁王立ちする信一に、いつになく小さく見える龍捲風が神妙な顔で謝罪した。
急に意識を失って倒れた龍捲風に、泡を食って四仔を呼びに行き、ちゃんとした医者の判断を仰ぐべきだという指示のもと、外の病院に運び込んだのは二日前。
いつまで経っても意識の戻らない龍捲風を心配して、けれども四六時中張り付いているわけにもいかずに、不安の中で城砦の些事を片付けて、やっと二日。
目が覚めたという連絡に全てを放り出して駆け付けた信一を待っていたのは、悠々と病室で煙草をふかして部下をおろおろとさせる龍捲風の姿だった。
「大佬
……
?」
「信一か」
どうした、なんて汗だくで駆け込んだ信一に言い放った龍捲風に、ふたつ隣の病室まで信一の怒鳴り声が響いたのは言うまでもない。
「二回だよ、二回! 二回も、目の前で、大佬が意識失って倒れて、俺がどんだけ心配したかわかってる!?」
申し訳ない。
すまない。
馬鹿の一つ覚えのように繰り返す龍捲風は、きっと反省しているようでいて、あまり反省はしていないに違いない。同じようなことが起これば、同じように手を差し伸べるのが龍捲風で、それは信一もよく知る彼の良い所で悪い所だからだ。
「信一」
しおらしく見上げる龍捲風は、ここ数日のことをすっかり忘れて、『いつもの』龍捲風に戻っていた。
それなのに、お前が側にいてくれて良かったなどと言うのだから、本当にこの人は狡い。
「
…………
嘘つき」
ぼそりと毒づいて、信一は安堵と共に苛立ちを吐き出した。
「うん?」
「なんでもない」
「信一」
「心配したんだ。階段から落ちて、俺のことも忘れちゃって、俺、」
「本当にすまなかった。その、記憶がない、というのも覚えていないが、世話を掛けたな」
「
……
うん」
「ほかにも何かあったのか?」
「なんで」
「そんな顔をしてる」
「
…………
」
こんな人でも、嫌いになれないから悔しい。
とても信一の想いなど気づいていなさそうな顔は、苦笑いの中に全てを隠してしまう。
龍捲風は親だ。
龍捲風はボスだ。
「どうしたら機嫌を直してくれるんだ、信仔?」
子供を宥めるようにそう呼んだ龍捲風が、膨れっ面の信一を覗き込んだ。
「お前にそんな顔をされると哥哥は弱い」
ひくりと頬が引き攣れた。
そんな呼び方は普段はしない。するときはいつだって。
いつだって──?
「哥哥」
ああ、煙に巻こうとしているのだと、わかった。わかってしまった。
『だから、言え、信一。言ってやれ』
全部忘れてしまったくせに。
無責任に煽って、縋るように言った男の残した言葉は、もう信一の中にしかない。
それでもそこに嘘がないというのなら。
記憶があってもなくても、変わらない龍捲風は確かにいる。
『俺は『俺』だ』
何もかも忘れてしまっても、本当に同じだというんだろうか。
本当に?
誤魔化しでもなんでもなく、『龍捲風』は『信一』に弱いのか。
「信一?」
急に黙り込んだ信一に、龍捲風が首を傾げる。
親だけど、ボスだけど、そんな境界をとうに超えてしまった特別な人。愛してしまった、唯一の人。
「
…………
大佬」
信一はゆっくりと顔を上げる。
鼓動が耳の奥でがなり立てていた。
嘘つきだったのは、どっちなんだろう。
「俺、」
乾いた唇をなんとか開いて、信一は真っ直ぐに龍捲風を見つめた。
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