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あけみ
2025-07-25 21:50:01
11224文字
Public
MCU(小説)
【MCU】あたたかな光は君だった【バナトニ】
2019年発行しました最後のバナトニ本からの再録。ピクブラにupしているものと同じです。
エンドゲームのバナトニ。中身を少し加筆修正してます。
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バナーはぼんやりと顔を上げ隣で眠るトニーを見つめる。
「ハルクは地球に留まるのを恐れている」
自らそんな話をしたのはいつだったか。
そう、確か、あれはソコヴィアの戦いの後バナーが離れ再び各地を転々とし身を潜めていた時。トニーが会いに来たあの夜だ。
二人の間で少し悶着があったが、すぐにお互い会えなかった隙間を埋めるように身体を繋げた。
ベッドの中で二人はピロトークともいえないそんな会話を始めた。
「地球にいるハルクは厄介者だと思うのか?」
顔を上げたトニーは眉を寄せバナーに視線を寄こした。もちろん君はそうは思わないだろう、けれど、異端を嫌う人間はそう考える。
アフリカの地で理性もなく暴れたハルクは、はっきりと「恐れ」を感じた。怒りだけが感情の発端だった。バナーはそう思っていたが、トニーはそうじゃなかった。
「君は、怒りだけじゃない喜びも悲しみも感情として持っている。一緒に遊んだ私が知っている」
まるでハルクに話しかけるようだとバナーは思った。ふと、自身の手の甲を見れば緑の大きな手になっていた。あの頃の自分はまだブルース・バナーだったはずだ。けれど、すぐにこれが記憶ではなく潜在意識だと知る。
マインド・ストーンの発動で意識が途切れたのだ。同時に、恐れと虚無感、焦燥といった負の感情がいっきに流れ出した。これらは全てハルクが抱えていたものだ。戦いから逃げて何もかもを放り投げた。
自分なんかいらない。
妬みと卑屈が交差しさらに臆病になる。全部ハルクの感情だ。本来ならバナーが持っていたものだ。
顔を歪める。
ハルクの体を宿した時から妙に落ち着き、穏やかな情が纏わりついたことに不自然に思った。怒りだけではなく、陰鬱な感情まで全てハルクが抱え隠していたのか。掌を見つめたまま動けなくなる。震えだしたそれは、ハルクを否定した己にも非があった。目を固く閉じたバナーは、手を重ねあわせたトニーの体温に目を開く。
トニーは顔を覗かせ、ゆっくりと言葉を紡いだ。ハルクにも分かるようにゆっくりと。
「私も怒りを抱えて奥に仕舞い込んだままこの5年間生活していた。誰だってそうだ。君だけじゃない。間違った道を歩むことだってある。利用されて害を及ぼす事態になれば行動を変えれば良い。そこには全て責任がつく。ハルク、君にもある。何年かかっても良い。君の責任を果たすんだ」
『その時は、トニーもそばにいるか?』
ハルクの言い分にトニーは曖昧に笑う。
そんなふうに誤魔化すなんてズルイ。ハルクは眉を歪ませた。
トニー・スタークは眩しいと思った。
あたたかい光。
ハルクも同じように感じた。触れたら光は消えてしまわないかハルクは不安だったが、今、手を伸ばさないと一生触れない気がした。
ゆっくりトニーの顔に近付く。体格差でどうしてもハルクが屈むようになるので、トニーの顔を覗きこむ形になる。彼の瞳が伏せられ長い睫毛がはっきりと見えた。ハルクは少し胸を高鳴らせたかもしれない。そっと口付けた。
君に初めてキスした日のこと、昨日のことのように思い出せる。まさか、ハルクともこんな口付けをしてないだろうね。
薄く口を開け、唇を優しく啄ばんだ。
バナーの意識はそこで浮上した。
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