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万丈
2025-07-10 12:24:53
9027文字
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小説
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千年の果てに
【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
インドラ様とヴィシュヌ様、1000年の紆余曲折の話。
シュラト小説版のキャラクター、アータバッカさん登場。
前の話→
雷帝の贖罪
次の話→
月光の誓い
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第三章:慈愛という名の戸惑い
インドラが淹れる茶を飲む、静かな夜。それが二人だけの習慣となってから、幾百年という歳月が流れていた。
数百年に及ぶ長い年月は、インドラの纏う氷を少しずつ、しかし確実に溶かし始めていた。ヴィシュヌの前でだけは、彼は「完璧な総司令官」という仮面を外し、不器用ながらも素顔に近い表情を見せるようになっていた。
その変化は、ヴィシュヌの心に、喜びと共に新たな感情の波紋を広げていた。調和神として、彼の魂が癒されていくのを見守るのは当然の務め。だが、彼の僅かな微笑みや、自分の話に耳を傾ける真摯な眼差しに触れるたび、胸の奥がきゅっと締め付けられるような、甘い痛みを感じる。
(インドラ
……
)
玉座から、政務に勤しむ彼の姿をそっと目で追う。かつて抱いた憐れみは、とうの昔に消え失せていた。
彼のひたむきさ、不器用な優しさ、そしてその奥に今も横たわる深い孤独。その全てを知るうちに、ヴィシュヌの心には、彼を「一人の男」として愛おしいと思う気持ちが、はっきりと育っていたのだ。
その孤独を、自分が埋めることができたなら。その凍てついた心を、自分の愛で完全に溶かすことができたなら。そう願ってしまっている自分に、ヴィシュヌは気づいていた。
(いけないわ
……
わたくしは
……
)
ヴィシュヌは自らの心を戒めるように、小さく首を振った。自分は、天空界すべての命を等しく愛し、調和を司る存在。特定の個人に、このような個人的な情を抱くべきではない。ましてや、彼は自らの罪に深く縛られている。この恋心は、ようやく安らぎを見出しつつある彼にとって、新たな重荷となり、その心を再び苦しめてしまうだけかもしれない。
この行き場のない想いを、どうすれば良いのだろう。
インドラの幸せを心から願いながらも、その安らぎの場所が自分の腕の中であればと願ってしまう。女神の心に芽生えた恋は、彼女自身をも戸惑わせていた。
そんなある日の午後、ヴィシュヌは庭園で一人の老将と茶を共にしていた。大元帥明王アータバッカ。彼は、ヴィシュヌが調和神を引き継ぎ、右も左も分からぬ頃から傍で支え続けてくれた、祖父のような存在でもあった。
「ヴィシュヌ様。近頃、少々お顔に曇りが見えるようですな」
アータバッカの鋭い瞳は、ヴィシュヌの心の揺らぎを見透かしているようだった。
「
……
そんなことはありません。天空界は平和そのものです」
「ほう。ならば、その平和を支える総司令官殿のことは、どう見ておいでか」
不意に投げかけられた問いに、ヴィシュヌは息を呑んだ。アータバッカは、静かにお茶をすすると、諭すように続けた。
「あやつは、随分と変わった。千年前、この天空殿に来た頃に比べれば、まるで別人のようだ。それは、ひとえにヴィシュヌ様、貴女のお力があってこそでしょう」
その言葉は、労いのようでありながら、どこか探るような響きを持っていた。
「だが、深入りは禁物ですぞ。その慈悲が、かえってあやつを追い詰めることにもなりかねません。あやつが背負う闇は、貴女が思うよりもずっと深い」
それは、軍の重鎮として、そしてヴィシュヌを孫娘のように思う親心からの、偽らざる忠告だった。
アータバッカもまた、インドラと自分の関係の変化に気づいている。そして、その行く末を案じているのだ。
「忠告、感謝いたします。アータバッカ」
ヴィシュヌは、静かにそう答えることしかできなかった。
その夜、ヴィシュヌは一人、自室のバルコニーから星空を見上げていた。インドラを想う。彼の幸せとは、一体何なのだろう。彼が本当に望むものは、今もなお「滅び」なのだろうか。それとも、あの仮面の下で、ようやく「生きる」ことへの意味を見出し始めてくれているのだろうか。
わからない。だが、一つだけ確かなことがある。わたくしは、彼を失いたくない。シヴァの呪いも、彼の罪も、すべてを包み込んで、ただ彼の傍にいたい。
調和神としての使命と、一人の女性としての想い。その二つの間で揺れ動きながら、ヴィシュヌは天に祈った。どうか、あの哀しい神将の魂に、いつか本当の安らぎが訪れますように、と。そして、その安らぎが、自分の腕の中にあることを、密かに願いながら。女神の恋は、千年の時を経て、静かに、しかし深く、その色を濃くしていた。
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