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万丈
2025-07-10 12:24:53
9027文字
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小説
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千年の果てに
【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
インドラ様とヴィシュヌ様、1000年の紆余曲折の話。
シュラト小説版のキャラクター、アータバッカさん登場。
前の話→
雷帝の贖罪
次の話→
月光の誓い
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第一章:贖罪という名の仮面
大戦の終結から百年。天空界は、かつての傷跡を感じさせないほどの穏やかな光を取り戻していた。調和神ヴィシュヌの慈愛の下、再編されたデーヴァ神軍は鉄壁の守りとなり、その頂点に立つ男の名は、畏怖と共に天空界全土に知れ渡っていた。
デーヴァ神軍総司令官、雷帝インドラ。
彼は完璧だった。いかなる任務も冷徹に、寸分の狂いもなく遂行する。その指揮に無駄はなく、彼の前に立つ敵は残らず塵と化す。私情を一切挟まないその姿は、かつて彼を「ルドラ殺しの悪魔」と蔑んだ者たちをも沈黙させ、いつしか絶対的な畏敬の対象となっていた。だが、インドラ自身にとって、その日々は「贖罪」という名の、終わりのない苦行に過ぎなかった。
完璧な総司令官という「仮面」。それを被り、自らの心を殺し続けることだけが、シヴァの呪いに蝕まれ、友が願った自分自身の安らぎに背を向け、そして何よりヴィシュヌという光を前にして、かろうじて正気を保つための唯一の方法だった。
「ご苦労様でした、インドラ。あなたの指揮のおかげで、第二楼の巨岩兵も完全に鎮圧できましたね」
巨岩兵
――
それは、大戦時にアスラ神軍が遺した禍々しき遺物。光流に反応して目覚め、破壊の限りを尽くす自動兵器だ。不発弾のように点在するそれらの処理は、デーヴァ神軍にとって喫緊の課題だった。
報告を終えたインドラに、玉座のヴィシュヌが穏やかな微笑みを向ける。
その声、その微笑み、その存在そのものが、インドラにとっては救いであり、同時に裁きでもあった。彼女の純粋な優しさに触れるたび、その光が眩しすぎて、自分の魂にこびりついた罪の闇を、おぞましいほどに自覚させられるのだ。
「もったいないお言葉です、ヴィシュヌ様。すべては、貴女の御心のままに」
インドラは深く頭を垂れ、決して彼女と視線を合わせようとはしなかった。これ以上、この清らかな光に心を照らされてはならない。彼女を敬愛すればするほど、シヴァの反魂の術に縛られたこの身が、いつか彼女を汚し、傷つけてしまうのではないかという恐怖が、心を締め付ける。
(私は、貴女の傍にいてはならない存在)
そう、心の内で繰り返す。この完璧な総司令官という仮面は、彼女から距離を置くための盾でもある。
謁見を終え、回廊を歩いていると、前方から重厚な気配が近づいてきた。
大元帥明王アータバッカ。豊かな白髭をたくわえ、老齢ながらその体躯は矍鑠(かくしゃく)として巌のようだ。軍の精神的支柱であるこの老将は、他の者とは違う、複雑な光をその鋭い瞳に宿してインドラを見ている。
「総司令官殿。見事な采配でありましたな」
労いの言葉でありながら、その声にはどこか試すような響きがあった。アータバッカは、インドラが「十二羅帝最強」と謳われ、光り輝いていた時代を知る数少ない一人だ。
「恐縮です、アータバッカ殿」
「だが、あなたのその瞳は、百年経っても変わりませんな。まるで、戦場で死に場所を探しているかのようだ」
その言葉は、インドラの仮面の奥深く、殺し続けてきたはずの心臓を直接掴むような鋭さを持っていた。インドラは僅かに息を詰める。
「御冗談を。私はただ、ヴィシュヌ様より与えられた役目を果たしているに過ぎません」
「役目、か」
アータバッカはそれ以上何も言わず、ただインドラの肩を一度、力強く叩いて通り過ぎていった。その掌に残された温情が、インドラにはひどく重かった。
自室に戻り、一人きりになったインドラは、窓の外に広がる平和な雲海を見つめた。ヴィシュヌが望む世界。ミトラが託した未来。アータバッカが憂う己の姿。それら全てが、インドラをこの世界に繋ぎ止める鎖だった。
(これでいい。これでなければならない)
彼は自らに言い聞かせる。心を殺し、感情を捨て、ただ完璧な「仮面」を被り続ける。それが、この長すぎる贖罪を生き抜くための、唯一の方法なのだから。
インドラは静かに目を閉じた。仮面の下にある本当の顔は、誰にも見せることなく、永遠の孤独の中で凍てついていく。それが、自らに課した罰だった。
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