さつま
2025-07-08 19:52:37
2595文字
Public 🎩🟩
 

【こばなし】🎩🟩

みじかいの。
カフェを経営していた一般年上女性。なんやかんやあって革命軍にいる。
※過去に死別した海賊の恋人有り設定。

初手パロ

片翼を失って、何年経っただろう。空を飛ぶのが好きだった、あの人と飛んだ空が今はもう高く遠い。
少しでも空に近づくために、高台に散歩に来た。それだけの筈だったのに老朽化していたのだろう、少しだけ体重を預けた柵が壊れてしまった。
懐かしい浮遊感……ではなく、これは落下というもので。

「きゃ……!」

「危ない!」

意味の無い翼を広げるより早く、よく聞くようになった、男の人の焦った声が近くで聞こえた。
視界に入る大きな黒い翼、わたしのような羽毛が無い、つるりとした立派な竜の翼。

「びっくりした」

「おれも、びっくりした」

姿が見えたから、声を掛けようと飛んできていた所に、落ちたもんだから。と深く息を吐いた彼に、そう言えばお礼を言っていなかった。

「ありがとう、サボくん」

「どういたしまして。よかった、偶然来てて」

本当に。と、わたしを受け止めてくれている手に力が篭もる。羽根ごと受け止められているので、少しだけ窮屈さを感じて身動げば、彼は一度膝にわたしを座らせてくれて、羽根を外に出して抱え直してくれた。
重いだろうから、高台へと戻してほしいと伝えようとした開いた口が、止まる。
羽ばたきで起きる風が、頬を撫でる。彼の上に広がる空が、久しく近く感じてしまった。高台より下に位置しているというのに。

……空を飛んだの、久しぶりだわ」

わたし自身の力では無いのだけれど。そう笑って見せれば、再び彼の腕に力が込められ、僅かに体を引き寄せられた。

「サボく、ん!?」

グンと上がる高度。驚いて目を閉じて、上昇が緩やかになった頃にまぶたを開けば、遠くに見える町と港と、海。何にも遮られない、広い空。
下を見れば、先程までいた場所すらも遠くて。

「どうしたの、急に」

「空、飛びたそうにしていたから」

違った?と首を傾げる彼が、どこか幼くって。つい声を零して笑ってしまった。立派な男の人なのに。

「いいえ、合ってるわ。空が……ずっと遠くて、寂しかったの」

再度お礼を告げれば、彼は無邪気に笑ったのだ。