ながひさありか
2025-07-05 04:37:14
18127文字
Public STR-Phaidei
 

#23570001:かつての見知らぬ人

・3.4/ヒアンシーの説得後、自分の中に芽生えた「なにか」を確認したくなり、今まで決して選ばなかった、「子どものころのモーディスをステュクスから拾い上げ、育てて、手放し、輪廻を終了させる」話。すべてが「ない」、ご都合、捏造満載。
※「最初の二人はパートナー関係にあった」と言う前提で書いていますが、拾った子どものモーディスにカスライナ(=永劫回帰終了後のファイノンと同一人物となる、と解釈しています)は恋愛感情は抱きません。歪な師弟関係と感じており、あくまで、大人になってからの彼にのみ恋愛感情が発生しますが、気になる場合は読まないほうがいいです。
※原作の各種資料等の個人解釈、曲解、設定捏造が大量に含まれており、個人の感情整理の話です。



「なんだいじろじろと人の顔を見て、クレムノスでは初対面の相手を不躾に見るのが礼儀なのか?」
「口に気を付けろ新兵、——いや救世主。ただ、どうにもお前の間抜け面に見覚えがあるような気がしただけだ」
「それ、どういう意味で言ってるんだ? もしかしてクレムノス流の友達になろうよって誘いかい?」

 ファイノンの言葉に、モーディスは片眉を跳ね上げた。友人だと? そう口をつきそうになったが、腕を組んで目を閉じ、怒りを静めるために数秒待つ。
 目の前の男は軽薄そうな見た目をしていたが、腕は確かだった。
 オクヘイマへ攻め入らない代わりに移住と生活を容認しろと金織に交渉したところ、決闘でオクヘイマの勇士に勝てれば考えましょう、と彼女は答えたのだ。
 そうして行われた決闘は十日にも及び、結局決着はつかなかった。しかし元よりオクヘイマへ攻め入るつもりもなかったモーディスはこれでパフォーマンスは済んだと考え、オクヘイマの主人と聖女もその建前を正しく受け取る。
 エスカトンを迎えたこの世で、英雄同士が争い合うことに意味はない。

「今回決着がつかなかったからといって図に乗るな、俺に救世主と呼ばせるのであれば、お前はその名に相応しい将として成り上がる義務がある」

 僕に勝てなかったら新兵じゃなくて救世主と呼ぶように、と明らかに場慣れしていない男に言われた際には呆れてしまったが、結果的にモーディスは勝てはしなかった。
 約束は「勝てなければ」で、そこに引き分けが含まれるかどうかは決めなかったため、であれば仕方があるまい、と律儀に救世主と呼んでやる。
 しかしこのファイノンと言う男は、自分から呼べと言っておいて、されればされたでなんだか気まずそうな顔をしている。
 自分から勝負をしかけておいてそんな顔をするな未熟者め、とモーディスは鼻を鳴らす。
 何年も自分と対等に競える相手はこの世になく、手合わせをする相手はもはやこの世に存在しないのかと感じて久しかったが、これはモーディスにとって嬉しい誤算だった。

「なんだろう、君って人を貶しているのか鼓舞しているのかよくわからない物言いをするな……。アグライアもそうだけど、王族とか貴族ってどうにも上からというか、人を委縮させるのが得意と言うか。まあでも、確かに僕は黄金裔として救世主になる覚悟を決めているし、君の言葉は激励として受け取っておくよ。ええと、メデ……なんだっけ? クレムノス人の発音はちょっと難しいな」
「『モーディス』。オクヘイマではこちらのほうが呼びやすいだろう」
「モーディス、モーディスか。よし覚えた。――さて、君は一族の件をアグライアや元老院と話し合う必要があるだろう? それが終わったらオクヘイマを案内するよう彼女に頼まれてるんだ。黎明の崖で待っているから、終わったら僕を探してくれ」

 モーディスにかけらの嫌味もなく明るく笑う男に、やはりどこかで見覚えがあるような気がしたが、どこで見たのか、結局思い出すことはできなかった。

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