アッポーの本棚
2025-07-04 09:47:50
11888文字
Public
 

崩壊世界の復讐劇

🩵🐏が初めて『崩壊』に遭う話
軽度の流血表現があります、メリバです
会話の中だけですがナリンデルが死んでます
※この話に登場する『お兄さん』の性格と展開はみずちーさん(@/mizuchi2015)の小説
『そして罪人は救世主の夢を見る 』 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18802599
 からお借りしました
(本人には事前に許可&確認済みです)
 先に上記の小説を読んでから読むことをおすすめします。


 その後、ボクは何故か他の世界に流れ着いて、そこの『僕』やナリンデル達によって保護されて、無事に帰ってこられたんだ。
 帰った後、メーデル(商人の名前)に崩壊する世界に長居するなとすごーく怒られちゃったけど。
 ボクは筆記帳を無事に持って帰って、あの時書き殴ったお兄さんとの記憶を整理して、こうして無事にお兄さんの記憶を覚えていられることが出来たんだ。
 だからこうして、目の前にいる『僕』に話してるんだ。

 その『僕』はあの時流れ着いて保護してくれた世界の『僕』。
 あれ以来仲良くなって、遊びに来てはこうして旅の話をしてるんだ。
 今日は珍しくボクが自分の家に誘って、色んな旅の話をしてあげた。
 一通り話終わったあと、彼/彼女は「なんで助かったの?」 と尋ねた。
「うーん、分からないや、その時にはもう寝ちゃってて
もしかしたらいや、なんでもないや、きっと王冠の力がギリギリで発動したのかも
 ボクは少し心当たりはあったけど、その思いは胸の内にしまい込んだ。
『お兄さんが助けてくれた』なんて妄想に近い話なのだから。
 その『僕』は興味津々で、「そのお兄さんはどうなったの?」と続けて尋ねた。
あの後、お兄さんがどうなったのかはボクには分からない。
 きっとどこかの世界で生まれ変わって幸せな人生を謳歌してるのかもしれないし、
 かつての自分と同じ、どこかの別れた選択肢の世界の子羊と一体化したのかもしれないし、
 今の自分みたいに『世界の迷い子』になって旅をしてるのかもしれないけどその答えは逢えないと分からない。
 だからボクはお兄さんの約束を守ってるんだ。『お兄さんの事を覚え続ける』って」
 ボクはそう答えると彼/彼女は『難しくてよく分からない』と首を傾げた。ボクは微笑んで謝った。
「大丈夫。まだ君には早い話かもしれないし、関係ない話になるかもだから
「でも、まだ分からないなら、そのままでいいよ。でも、忘れないで欲しいんだ」
 ボクはその『僕』にそう伝えると
「ボクは、人は『忘れ去られる事』が本当の『死』だと思うんだ」
「だからボクはお兄さんが忘れ去られる 死ぬ事を『止められた』と思うんだ。ボクの住んでる世界のナリンデルみたいに」
「人は忘れ去られる事が『死』である」この言葉は昔、ボクが過去へ遡る時にシャムラに言われた言葉だ。
 もし過去を変えるのに成功したら、自分達は滅んでしまうから、ボクが生きてる時だけでいいから、自分達のことを覚えておいてくれと言われたんだ。
 結果的にボクは、最期に会ったナリンデルに覚えてもらって、それを『絵』として遺してくれたお陰で、ボクは忘れ去られる事はなく消滅を免れたけど、本当の意味で『最後の生き残り』になった。
 だから、今は彼らは、ボクの記憶の中で生きている。
でも、もしもボクに何かあった時、お兄さんの存在やボクが元々居た世界の人達は本当に消えてしまう。だからこうして君やボクの住んでる世界の『僕』にも話したんだ」
 と続けて答えた。
 すると、『僕』からぐぅーとお腹がなる音がした。彼/彼女の頬が少し赤くなった。
 それと同時に、ボクはもうおやつの時間だということに気がついた。
「ごめんね、難しい話してお腹空いちゃった?待ってて!お菓子と飲み物持ってくるから!」
 とボクはキッチンへ向かい、冷えたボックスの中を調べた。
 するとそこには、今日焼いたクッキーと一緒にボクがお兄さんに教えてもらい、作ったベリーシロップの瓶が置かれていた。
 シロップの中にはもう氷砂糖はなく、艶やかな赤い液体とベリーが浮かんでいた。
 ボクは嬉しそうに彼/彼女に尋ねた。
「ねぇ、ボク、ベリーシロップ作ったんだけど、炭酸水か水、どっちで
 そう言いかけた時、炭酸水のボトルの裏から牛乳瓶が顔を出していたのに気が付き、
あ、牛乳あるからベリー牛乳にしちゃおうか!」とシロップとクッキーと牛乳を取り出してリビングへと向かった。
 この世界、何が起きるかは分からない。
 明日ボクが本当に死んじゃうかもしれないし、どこかで頭を打って記憶を失ってしまうかもしれない。
 もしかしたら、この世界全てが滅んでしまうかもしれない。
 ボクは少し酸っぱいベリー牛乳を飲んでいてそう思った。
 この後このベリー牛乳は、『僕』にも好評だったから、ボクは彼/彼女にレシピを教えてあげた。

 少なくとも、お兄さんが教えてくれたこのレシピは、永遠に忘れ去られないと思う。