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乙麻呂
2025-07-02 21:00:00
17155文字
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俺がアイツでアイツが俺で!?
おわささんとシナリオ交換企画をさせて頂きました。
入れ替わりネタは想像しても書いた事は無かったので、面白かったです。
おわささん、素敵企画に乗らせて頂きありがとうございました。
1
2
3
4
南方は自分の領地であるし、青鬼戚容にも
…………
葬り去りたい事実だが
…………
因縁がある。
裴茗に借りを作るのも御免だ。
自分達が討伐に向かうのは仕方が無い。
だが、ここで一つの大きな問題にぶち当たった。
因縁があるからこそ、今のこの状態で会うわけにはいかないのでは無いか??
戚容はあれで意外と目敏い。
慕情と風信に違和感を抱く可能性は極めて高い。
入れ替わったなどと言う珍事が露呈すれば、三界中に面白おかしく吹聴するだろう。
ではどうすれば良いか?
青灯夜遊、戚容率いる鬼の集団が通るだろう町外れの広い道に、二人の少年が立っていた。
ほんの少し縮んだ背丈。
元の体に比べれば肉付きの薄い体。
だが、本尊に比べれば、入れ替わった体でも違和感や動きづらさは比較的少ない。
軽く体を動かしてみて具合を確かめると、“南風”と“扶揺”は苦い表情で顔を見合わせた。
「私の顔で馬鹿面をするな」
“南風”の姿をした扶揺が言った。
「馬鹿面なんかしていない!お前こそ俺の顔でさっきから変な顔をするな!」
“扶揺”の姿をした南風が怒鳴り返す。
「大体、この体は何だ!?分身だからって軽すぎだろう!」
“扶揺”が自身の胸を叩いて喚いた瞬間、“南風”が“扶揺”を殴り飛ばした。
地面を不恰好にスライディングした“扶揺”に向け、顔を歪めながら“南風”が吐き捨てる。
「軽いんじゃない!!お前が重いんだ!!お前こそ何だ!?この無駄な筋肉は!!」
「おま
…………
戻った後、顔に傷が付いたとか喚くなよ??」
“扶揺”
南風
は頬を引き攣らせながら地面から起き上がる。
“南風”
扶揺
はフンと鼻を鳴らして澄ました顔をした。
「俺が付ける分には良い。だが、お前は傷一つ付けるなよ」
「クソッ
……………
」
“扶揺”
南風
は舌打ちする。
好き勝手言いやがって、と忌々しくは思うが、今乱暴な動きをして傷が付くのは扶揺の体である。
慕情の体ですら、中身の可愛げの無さはともかく、肌は白くて滑らかだし、髪は絹糸のようだし、筋肉はしなやかだ。
武神として申し分無い体力と筋力は持ち合わせているが、風信の頑丈さと比べるとどうしても華奢に思えてしまう。
それが扶揺の体となると、よくもまぁコレであんな事やこんな事が出来ると感心すら覚えてしまう。
勿論、妖魔鬼怪との戦いとかそう言う意味でだ。
冷えたら風邪を引きそうだし、柔らかな肌は簡単に痣や傷や火傷が出来そうだし、力任せに暴れたら体を痛めそうだ。
この体を、傷一つ無く
…………
とはいかなくなったが(南風は悪くない。扶揺自身の手による物だ。よくも自分の体を殴り飛ばせる)出来る限り万全な状態で持ち主に返さなければならない。
南風は、普段自分が負っているような怪我を負った扶揺の姿を思い浮かべてみる。
(
………………………
)
(主に慕情との取っ組み合いで)腫れた頬。至る所に負う擦り傷。
よく壁を殴る手には痣が出来、考えるより体が動く為に、とにかく細かい傷は絶える事は無い。
普段ならば、負った事を意識すらしない。何の傷も負わないと言う事は武神としての本分を果たしていないと言う事で、そっちの方が恥じゃ無いか??
しかし、それが扶揺の体となると話が違う。
南風の体ならば「やんちゃだなー」で済まされる生傷が、扶揺が負うと途端に倍の痛々しさに見えてしまう。
何やら苦虫を噛み潰したような顔で黙り込んでしまった南風を、
“南風”
自分
の顔が怪訝そうに眺めていた。
「
………………
どうしたんだ?お前」
「いや
………………
うん、お前の体を傷付けないよう気を付けるようにはする」
何やら殊勝な態度で視線を落とす
“扶揺”
自分
の姿に、扶揺は何故か寒気を感じた。
「俺の体をいつも乱暴に扱うのはどこのどいつだよ!?何だその態度は!?変な気を使うな!!気色悪い!!」
「あーっはっはっはっはっは!!見ろよ見ろよあのブツだけはご立派な巨陽殿の巨陽将軍と、性格も○○ならアレも○○な玄真将軍の所のチビ神官どもが俺の行く手を塞いでギャンギャン喚いてるぞ?まさかこの俺を待ち伏せていたとか言わないよなぁぁぁぁ!?おい、何だって?『お前の体を傷付けない』!?『俺の体をいつも乱暴に扱ってる』???何だ何だ?巨陽は
風師青玄
クソ○ッチ
とデキてたが、その下っ端は玄真の所のチビに手を出されてたのか!?オエッ、オエェェ!!クソッ!往来のど真ん中で真昼間っから気色の悪いやりとりをするんじゃねぇ!!お前らがそう言う関係だって巨陽と玄真は知ってやがるのか???」
突如喚き声が割って入り、“南風”と“扶揺”は動きを止めた。
振り返るまでも無い。
往来を堂々と闊歩する、髑髏をあしらった趣味の悪い服。
耳障りな声に、人の神経を逆撫でする表情しかしない顔。
どこぞの殿下にほんの少しだけ面影が似ているのが、また何とも気分が悪い。
そして、その後ろからゾロゾロと歩いて来る、青い顔をした鬼の群れ。皆同じように、頭に蝋燭を付けている。
正に青灯夜遊の一団だ。
青灯夜遊の一団なのだが、戚容は何故か戦意喪失した顔をしていた。
闘鶏二羽が爪と嘴で引き裂き合うのを期待していたら、二羽が雄同士であるにも関わらず、交尾を始めてしまったのを見たような顔だった。
「
……………
」
「
……………
」
“南風”と“扶揺”は黙り込んで戚容を見返す。
言葉の全てがあまりに荒唐無稽で、どこから否定すれば良いかも分からない。
その間も戚容が黙る筈が無い。
「ペッ、ペッ、ペッ!!!お前らが出来てると知ったら、あのお固い巨陽と玄真が何て言うか!!アイツらは800年前から仲が悪いのに、その手下がデキてるって!!お前らバレたら殺されるんじゃないか!?特にあの冷血で打算でしか物を見れない玄真が感情を理解する筈ねぇからな!ハーッ、これを知ったら玄馬の奴、あのクソでかい刀でお前の○○を切り取った上で三枚におろすに違いねぇ!!大体アイツは顔は良いのに中身が鬼を100匹合わせても足りないくらい凶悪で、あれで神官なんて
………………………
グギャァァァォォ!??」
興が乗ってきたらしく、意気揚々と喋っていた戚容が突如吹っ飛んだ。
目も眩むような霊光弾に弾き飛ばされ、高く舞うと顔面からズザーーーッと地面に着地する。
何十と言う家来の鬼達がぐるりと取り囲み、口々に「王!?」「大丈夫ですか!!?」と叫んだ。
特大の霊光弾を放ったのは、当然扶揺だった。
800年前から嫌っている戚容に、低俗で卑猥な言葉で罵られたのだ。そりゃ怒るだろう。
だが、その容姿は南風だ。
南風は、自分の容姿が赤面し、涙ぐみながら超特大の霊光弾力を放つ姿を客観的に見ていた。
自分の涙目赤面なんて、見たくなかった。
南風の姿をした扶揺は、肩で息をしていた。ここら一帯を消し炭にする気かと言うような超特大霊光弾を放ったのだ。息切れも一つもするだろう。そうで無ければ、戚容を皮肉と罵倒で往復ビンタし返していたに違いない。
それを見ていたのは、南風だけでは無い。
地面を器用に半回転しながら顔面で滑ると言う芸当を見せた戚容は、泥を吐き出しながらよろよろと起き上がると、自分をぶっ飛ばした相手を見た。
「なっ
……………
お前
………………
」
ぶるぶると震える指先で、信じられない物を見るように
“南風”
扶揺
を指差す。
「鬼より互いをシバく事を優先しやがる巨陽殿の奴が、玄真殿より先にキレて俺様に食ってかかっただと
………
?しかもその表情
…………
まるでガチじゃねぇか
…………
!?」
普段の三丁先にも届きそうな大声では無く、その言葉は低く弱く、おぞましげであった。
何と言っても、巨陽将軍こと風信と玄真将軍こと慕情は顔を合わせれば互いに殺し合わなければ気が済まない(戚容視点)、三界でもその仲の悪さは群を抜く(戚容視点)、信徒同士すら信仰よりも相手を負かす事に躍起になる(戚容視点)、呪われた関係なのだ(戚容的解釈)。
それが、アイツらの直属の神官同士がねんごろになってるなんて!!
バレれば、身の毛もよだつような罰が待ってるに違いない。
“扶揺”
南風
の表情が歪んだのも、よりにもよってこの四大害である青灯夜遊戚容様に露呈してしまうと言う、致命的失態によるものだろう。
“扶揺”
南風
と
“南風”
扶揺
は赤だか青だか分からない顔を見合わせた。
このままでは、尾ひれ所か背びれと胸びれに翼まで生えたようなデタラメな噂がそこら中を駆け巡るだろう。
だが、戚容の言葉は荒唐無稽だが、現実は更に荒唐無稽だ。
南陽将軍と玄真将軍が怒る筈も無い。
だって、デキているのは本人達なのだから!!
だが、すぐに、それは大した問題では無いと結論付けた。
どう
口封じ
討伐
しようか、それだけが重要だ。
二人はまた顔を見合わせた。その表情はそっくりで、無表情の中に並々ならぬ殺意を感じる物だった。
ひとしきりオェェェウゲェェェとのたうち回っていた戚容は、ふと自分に迫る陰に気付いて顔を上げた。
「ァァアン?クソ将軍の脳みそ砂糖漬けのチビ神官が俺様をそんな目で見てどうする気だぁ?まさかこの四大害の俺様とやり合おうって
………………
ヒギャーーーーーーーッッ!?」
戚容の左右から霊光弾が炸裂した。
戚容は木々より高く舞い上がり、到底無事とは言えない格好で地面にめり込んだ。
「何しやがんだ!?」
「それ以上口を開くな!」
“扶揺”
南風
が吠えた。
“南風”
扶揺
もこの世で最も低俗な物を見るような冷たい侮蔑の目を向ける。
「貴様の言葉など誰が耳を貸すんだ?自分の言動よりもいかれていて破廉恥な物があると思ってるのか?」
二人の視線と言動は戚容の憎む二人にそっくりであるが、しかしどうにもゾワゾワとする違和感があった。
「その話し方!その目!テメェは玄真のクズにそっくりだし、テメェは巨陽の奴にそっくりだ!?クソックソックソッ!すっかり互いの言動が染み付いちまってやがる!!どれ程影でいちゃこらしてやがったって言うんだ!?おぞましい!」
南風、扶揺を順に指さしながら、戚容が更に錯乱する。
周囲の青鬼の手下達も、王を援護するべく口々に喚いた。
「そーだそーだ!お前らが仲良くするくらいなら、王と血雨探花や黒水沈舟はとっくにマブダチになってる!」
「自分の将軍を裏切るとは鬼よりも鬼畜だぜ!!」
「普段はいがみ合うくせに、二人きりになった途端愛だの恋だの囁くのか?」
ふるふると
“南風”
扶揺
が俯いて震え始めた。その顔は羞恥で赤く染まっていた。
スラリと剣を抜くと、周囲で囃し立てていた鬼達にまとめて斬りかかりながら叫んだ。
「玄真将軍はそんな色恋に興味なんか無い!!!」
慕情
扶揺
にとって、戚容に玄真殿の神官を淫乱に思われるのは何より我慢出来ない事だった。
しかし、今の容姿は南風なのだ。
「クソッ!!コイツ、既に違う将軍に忠誠まで誓ってやがる!!?」
戚容は更に慄いた。その目が扶揺の姿をした神官へと向く。
腹の底からゾワゾワとするような視線に、
“扶揺”
南風
も思わず吐き捨てた。
「玄真将軍はともかく、南陽将軍は色恋だとか忠誠だとか、気にしない」
だから変に騒ぎ立てるなと睨んだのだが、戚容は目を見開いて絶句した。
コイツも黙る事があるんだなと、南風は現実逃避気味に思った。
「お、お前まで自分の将軍よりもあっちに付いてやがるのか?しかもその口調
………
まさかそのチビだけじゃ無くて、巨陽将軍とまでデキてやがるのか!?」
南風と扶揺は同時に噴いた。
“南風”
扶揺
が呆れたようにボソリと呟く。
「お前
…………
風信
自分
とデキてるのか?いくら巨陽殿だからって、節操無さ過ぎるだろう」
「お前はどっちの味方だ?」
“扶揺
南風
が信じられない物を見る目で
“南風”
扶揺
を見る。
どっちの味方も何も、扶揺にとって南陽殿の風評被害よりも玄真殿の名誉の方が大事なのは当たり前だ。
こんな会話が大声で出来る筈も無く、二人は顔を寄せて小声で低く囁き合った。
二人揃って否定もせずに囁き合う様子に、戚容の確信は更に深まった。
「ヒィェェ!?あのお堅い顔と態度に騙されてたぜ!!流石は巨陽将軍、信徒も自分のトコの
神官
ヤツ
の家来も他所の
神官
ヤツ
もみーーーんな引っくるめて手篭めにしてやがるのか!?いくら巨陽殿も玄真殿も仕え甲斐が無いからって、家来に見限られるなんて哀れだと一瞬でも思ったのが間違いだったぜ!!そりゃ、あのお堅すぎて不能な玄真の冷血野郎が毛嫌いする筈だぜ!!巨陽殿が巨陽()集団になってやがったとは!!」
当代の鬼王が二人とも何故か色には溺れないだけに、神官が好色というのは一層具合の悪い事に聞こえた。
しかも、それでは実際の好色家である明光将軍よりもよりタチが悪く、色欲の権化のようでは無いか??
“扶揺”
南風
の顔が真っ赤に染まった。南陽殿の小神官を指差し、怒鳴り散らす。
「下らない事を言うな!!俺が好きなのはコイツだけだ!!!」
“南風”
扶揺
の顔も赤く染まった。照れているのか怒っているのか、判断が難しい表情をしていたが。
戚容まで顔を赤く染める。
「な、な
…………
お前
………………
つまりこの巨陽殿のチビの為なら巨陽の親玉がどんなクズの○○カスでも受け入れるって言うのか
……………
!?なんて奴だ
…………
」
“扶揺”を凝視すると、戚容はおもむろに踵を返した。
「クソッ、最低の甘ったるさを食わされて食欲を無くした!!今日の所は引き上げてやる!!お前らの将軍に言っておけ!!二度と俺様の目の前でいかがわしい事を匂わせるなってな!!!」
「王!!」
「そうだこんな気持ちで食えるか!」
「王を胸焼けさせるとは何て神官だ!?」
数多の家来の鬼達も口々に罵詈雑言を飛ばしなかまら、ゾロゾロとそれに続いた。
あっという間に引き上げてしまった青灯夜遊の一団に、南風と扶揺は引き留めるわけにもいかずにただ呆然と見送るしか出来ない。
『青灯夜遊を撃退する』と言う任務としては成功の筈なのに、何だか微塵も達成感が無い。
それどころか、何か取り返しのつかない失敗をした気がする。
「
……………………
二日間、もう絶対に自殿から出るものか」
「ああ
…………
」
扶揺の苦渋に満ちた声に、南風が同意を示した。
さて、それから二日間、南陽将軍と玄真将軍は誰の前にも姿を見せず、通霊にも応じなかった。
二人は余程切羽詰まった“何らかの理由”により、二人きりで何やら親密かつ重要な事をしているのだと言う明光の説明は実に真に迫っており、誰もが納得せざるを得なかった。
さて、その後、三界ではとある噂が出回った。
南陽将軍はとんだ
好色
ヤリチン
で、信徒も神官も鬼も男女問わず迫ろうとする。
そして、玄真将軍は実はとても純真で、とんだクズでも見捨てられず、一途に想っていると言う物だ。
二日ぶりに“すっかり調子を取り戻した”両将軍が、肩慣らしに青灯夜遊を
ブチのめし
討伐し
に行ったと言う噂も囁かれたが、その結末は誰も知らない。
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