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乙麻呂
2025-07-02 21:00:00
17155文字
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俺がアイツでアイツが俺で!?
おわささんとシナリオ交換企画をさせて頂きました。
入れ替わりネタは想像しても書いた事は無かったので、面白かったです。
おわささん、素敵企画に乗らせて頂きありがとうございました。
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3
4
どうやら風信と慕情は体が入れ替わってしまったらしい。
現実を受け入れたく無い慕情は、とりあえず“自殿”
…………
玄真殿へと戻った。
玄真殿の神官らしくいつも冷静な玄真殿の神官の一人は、“慕情”を見ると拱手しながら気まずそうに言った。
「南陽将軍。その
…………………
玄真将軍は
…………
今朝方、酷く狼狽えた様子で寝衣のまま身支度も済ませず、殿を飛び出して行かれまして
……………
まだ帰られておりません
……………
」
「分かった」
南陽将軍の容貌をした慕情は、厳かに頷いた。
この場合の「分かった」と言うのは、玄真将軍の姿でそんな痴態を晒した
風信
馬鹿
への報復を固く誓ったと言う意味である。
可哀想な玄真殿の神官は、玄真将軍が乱心したかと不安と動揺で震えていた。
「時間を取らせた。アイツの事は私に任せ、お前達は普段通りの役目を果せ」
「
是
はい
!」
“南陽将軍”の指示に、神官は頭を垂れて了解を示す。
颯爽と立ち去る南陽将軍を見送り、神官は首を傾げた。
「何だろう
…………
今日の南陽将軍はやけに威厳があるな
………
」
呟き、慌てて口を噤む。
そんなの、普段の南陽将軍に威厳が無い見たいじゃ無いか。
(でも、玄真将軍の話す南陽将軍は到底威厳があるとは言えないからな)
たまに、玄真将軍は南陽将軍の事を“近所に住み着き、誰かれ構わず吠えかかるお馬鹿な大型犬”だと認識しているのでは無いか?と思う事がある。
だが、相手は尊き武神の一人である。威厳があるのは当たり前だ。
そんな事より、玄真将軍はどうしてしまったのだろう。
………………
玄真将軍も南陽将軍が絡むとたまに愚直な所が感染るようなので、また南陽将軍絡みなのだろうなと結論付け、玄真殿の神官は仕事へと戻っていった。
“自分”の肉体が如何に鍛えられており、その拳が重いか。
風信は身をもって思い知った。
寝所の床を無様に転げた“慕情”の肉体を見て、“風信”の顔が蔑むように歪んだ。
「俺の姿で無様を晒すな」
「無茶言うな!!いきなり殴ってきたのはお前だろうが!?」
“慕情”
風信
は頬を押さえながら叫んだ。
何なんだ一体!?自殿に戻ると去って行ったかと思えば、すごい勢いで戻って来て。
何も言わずに殴りかかって来るなど、正気とは思えない。
“風信”
慕情
は硬い声で言った。
「人格が変わったら、とりあえず頭を強く打てと言う民間療法があったような気がしなくも無いから試すだけだ」
「ならまず自分の頭を殴れ!」
怒鳴った後、
“慕情”
風信
は少し思い直した。
それはつまり、風信の肉体のどたまを殴ると言う事だ。
それはそれで、微妙では無いか?
かと言って、今慕情が慕情の肉体を殴った場合、痛い思いをするのも風信である。
どちらがよりマシなのだろうか。
悩む間にも、
“風信”
慕情
は手をわきわきとさせ、険しい目付きで
“慕情”
風信
を睨んでいる。
状況も何もかもが分からない中、たった一つ確かな事は、『コイツに売られた喧嘩は即返す』と言う信念のみだ。
お互いに殴り合えば、どちらの肉体が傷付いてもお互い様では無いか?
“慕情”
風信
は腰を落とし、グッと拳を握った。
“風信”
慕情
も同じように構えをとる。
次の瞬間、全ての現実を拒絶するかのように、二人は一心不乱に殴り合いを始めた。
殴り合いをしてみて、風信は少しばかり自分の分が悪い事を悟った。
慕情の体は筋力も体重も風信よりもやや軽く、純粋な拳の重みでは負けてしまうのだ。
対して、筋力、体力で勝る風信の肉体を使い、本来の計算高さや小器用な戦闘技術を駆使する今の慕情は常よりも少しだけ強いと言わざるを得ない。
“慕情”
風信
はサッと後ろに飛ぶと、手先に霊力を集中させた。
本来ならば弓の形をとる霊力は、身の丈を超える巨大な刀として具現化する。
“慕情”
風信
はそれをくるりと回すと構えた。
一瞬目を剥いた
“風信”
慕情
だったが、そっちがその気ならばと自身も黒く大きな弓を手にする。
弦を引くと同時に、光の矢が番えられる。
弓と剣ならば、間合いでは弓が勝るだろう。
しかし、いくら広いとは言え室内である。そして、弓は狙いを定める瞬間に隙が生まれやすい。
室内での仕合いに向かないのは斬馬刀も同じだが、
“慕情”
風信
は驚く程繊細な動きでもってそれを操り、
“風信”
慕情
の放った矢を全て弾き飛ばした。
矢は部屋のどこかに突き刺さる前に、光の粒となって消滅する。
操るのが難しい斬馬刀を、しかも片手で操ってしまった
“慕情”
風信
に、
“風信”
慕情
が白目を剥く。
「俺の体で斬馬刀を使いこなすな!!」
「無茶言うな」
“慕情”
風信
は斬馬刀を無造作に構えながら呆れた顔をする。
風信は、かつて殿下の侍衛だった頃、剣を始めあらゆる武具を扱っていた。
上玄真祭天遊の催しでは、妖魔役であった慕情の斬馬刀を触った事もある。
慕情程では無いにせよ、風信が差し障りなく斬馬刀を使いこなせるのは、ある意味当然だ。
だが、風信の神器を扱った自分は無様を晒し、自分の神器を風信が難なく扱えるなど、そう簡単に受け入れられる筈も無い。
興が冷めた
“風信”
慕情
は、ベッドに腰を下ろすと冷ややかに言った。
「馬鹿をしている場合か?とにかく、原因を探ってさっさと戻るぞ」
言いたい事は色々とあったが
………
まずは殴った事を謝れ。お前こそ人の体で偉そうにするな。都合が悪くなると無かった事にしやがって。
あと俺の髪に何を付けたんだ?香油なんか、この800年間付けた事が無いんだが?と言うか、せめて殴った理由くらい言え
………………
一刻も早く原因を探って元に戻る事に異論がある筈も無く、大人しく頷いた。
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