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もち粉
2025-06-28 08:53:09
5666文字
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歌えカナリヤ、告げよヒバリ 中
シスヒスの話
シスヒスの過去を捏造してます
あとミスさんの隊を運営してます感を出したかった
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「あら」
西日が差し込む執務室に、カーテンを閉めに入ったシスヒスは、執務机の上に見慣れない花瓶があるのを見つけた。すっきりと白いシンプルな花瓶には、色とりどりの懐かしい花が生けられている。大方、下船したパッタドルが買ってきたのだろう。
「こちらにも、この花は咲くのね」
そっと白い一輪の花弁を撫でる。
こんな花のような髪飾りを、子どもの頃に持っていたことを思い出す。乳白色の石でできていた。今思えば、子どもにやるものだし、そう高価であったとも思えない。だが当時、父親に買ってもらったそれはシスヒスの宝物だった。
白い一本を花瓶から引き抜きかけて、隣の紫に変える。なんとなく耳の横に挿してみた。窓に映った自分は、こんな可愛い花が似合う年頃ではとっくになくなってしまった。こういうのは、あの小娘の方が似合うだろう。
しかし茎が耳の上を通る感触に一つ思い出した。
生家は平民だが裕福な商家で、貴族との付き合いもあった。シスヒスが三〇歳くらい頃だろうか、貴族も集まるパーティーに父親に連れられて出席した。
水色のドレスがシスヒスの薄い茶色の肌によく映えて、小さな貴婦人のように髪を結い上げてもらって、宝物のお花の髪飾りをつけた。
どんな貴族のお姫様にだって負けないと、弾むような気持ちで参加したのに、そんな気持ちは子ども同士遊んでおいでと庭に追いやられた途端にしぼんでしまった。
貴族の令嬢たちは装いも装飾品も、格が違った。そして萎縮するシスヒスに、ご令嬢たちは親切を装って意地悪だった。
大好きな髪飾りも壊されて、堪らず逃げ出して、庭の隅で泣きじゃくった。
ひどくみじめで、悲しかった。
「どうしたの」
びくりと振り向けば、植込みの向こうに、シスヒスより三〇か四〇ばかりは年上の男の子が立っていた。
貴族だ! また何か意地悪をされるかも。ぱっと向き直り、とっくにほどけてしまった長い髪で顔を隠すようにうつむく。
「泣かないで」
草を踏んで近づいてきた男の子は、近くに咲いていた白い花を手折ると、シスヒスの耳の上に挿して、にっこりと笑った。
「白が似合うね」
ふっと窓ガラスの中の自分が自嘲気味に笑うのが見えた。
白なんて、あれ以来髪に挿した事はない。あの男の子、どんな顔をしていただろうか。ピンと美しく尖っていた耳先だけは鮮明に覚えている。
結局、あのパーティーで知り合った貴族に投資を勧められた父親は、よくない筋に手を出して、ハゲタカのような貴族たちに毛の一本までむしられた生家は、あっという間に没落してしまった。
以来シスヒスは貴族というものを憎んでいるし、妬んでいる。
気づけば甲板の方が、わあわあと騒がしい。そろそろ下船した隊員たちも戻りだしている頃だ。酒が入って喧嘩でも始まったのだろうか。
シスヒスは花を挿したままなのには気づかず、甲板へ足を向けた。
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