かずきち
2025-06-18 00:17:56
7038文字
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SS詰め4

アオハルまとめ



 靴を履き替えた後になってから、持って帰らないといけないノートを鞄に入れ忘れたのに気が付いた。こういうののタイミングの悪さと言ったらないけど、思い出しただけマシだと自分に言い聞かせて脱いだばかりの上履きをもう一度履き直して教室へ戻る。
 いつも賑やかな校舎も、生徒が帰宅してしまうと静かになって寂しさを感じる。もうほとんどの部活も終わった時間だから尚更。さっさとノートを拾って家に帰ろう。そう思って辿り着いた自分のクラスーー3-Aの扉をガラガラと音を立てて開いた。

「こ、……………あ」

 ……ら、先客がいた。元から爽やかさ、ってやつをそのまま人間にしましたみたいな(うちの学校そんなやつばっかりだけど)そいつはその爽やかを全力で出した笑顔で出迎えて、……多分人違いだったんだろう、かけようとしてた言葉も途中にその笑顔は崩さないまま、手をあげて挨拶をしてくる。

「まだ残ってたんだ?」
「神無月こそ。ってお前は部活か」
「あー……うん。部活終わって」
「帰るとこ」
……待ち合わせしてるとこ。そっちは?」
「忘れ物してさ」
「なるほど」

 硬くなっていた表情をゆるくほどいて、はにかみながらさっきの反応を誤魔化すように話題を振られてこっちも答える。待ち人でなかっただろうにがっかりした様子を出さないように対応してくれるあたりこいつの人間性といったら。普段一緒に騒いでる時は目立たないが時折覗くそういう部分は、同級生ながら感心してしまう。

「あったあった」
「ノート忘れたんだ?うわ、しかもテストあるやつ」
「そー。危うくやばい点とるとこだったよ。……さて、用事は済んだしさっさと退散するわ」
「え」

 無駄に喋るでもなくすぐ立ち去ろうとするのに驚かれてしまったけどその反応は逆にこっちの方が驚きだ。だってこんな時間なのにわざわざ待ち合わせて帰る相手なんて、神無月とどんな関係の子なのか聞かなくてもわかる。さすが人気のあるバスケ部部長だわ、涼しい顔しといて隅におけない。

「顔見るくらいはしたさあるけど、やめとく」

 相手が誰なのか興味がないと言えば嘘になるけど、詮索するほど野暮ではない。気ィ使ってやってんだよ、とアピールをして手に入れたノートも握りしめたまま、まだ呆気にとられた顔をしている神無月にまた明日、と挨拶して開け放しだったドアへ向かう。

「ありがとう!……あと」

 待ち合わせる場所は人の少ないところを選ぶくせに、見つかれば誤魔化しも否定もしない潔さもあるのか、マジの男前だな。とかいう感想を抱きながら、続きに何を言われるのかと振り返れば至って真面目な表情で口元に人差し指をあてていた。

…………ここで待ち合わせてるの内緒、で」

・・・

 三年の後半に差し掛かった今日、爆発部への入部を考えかけた。こちらは詮索しないと言ったというのに尚もああ言われては、爆発しろと思っても仕方がないだろう。とはいえ変に慌てる神無月というなかなかレアなものが見れたので、忘れ物もたまには悪くないと思いながら階段を降りている横を、忘れ物でもしたのかバタバタと走っていく薄桃色の髪の生徒が通り過ぎた。