usagipai
2025-06-04 21:52:38
8912文字
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ユスひの




オマケストーリー

その夜。
神殿の回廊を歩くひのでは、ふと夜風の中で立ち止まる。

(ユースの過去、全部は分かんないけど――

あの夢で見た姿は、確かに“今に繋がっている”。

……だったら、今のあいつのそばにいることで、俺も何かしてやれたらいいな」
ぽつりと呟いて、空を見上げた。
そして、気づかぬまま。
石柱の陰で、その言葉を聞いていたユースティスが、
ほんのわずかに目を細めていたことを――知らなかった。

月が静かに照らす神殿の中庭。
誰もいない、静かな夜。

昼間の会話が頭から離れず、眠れなくなったひのでは、外に出ていた。

……はぁ。なんか、変な感じだな」

あのユースティスが、自分にあんな風に心を開いてくれるなんて。
嬉しいような、そわそわするような、くすぐったいような。
――と、そこに足音がした。

「こんな時間に、何をしている」
振り返ればユースティスがそこに立っていた。

「ユース…… びっくりした。寝ないのか?」
……貴方が出て行ったのが見えたから、気になって」

彼の声音は、どこか柔らかくなっていた。


二人、並んで中庭の石段に腰をかける。
ひのでは、少しだけ間を置いて、口を開いた。
……なぁ、ユース。今日、俺の話……ちゃんと聞いてくれてありがとうな」
……こちらこそ。君のおかげで、少し……楽になった」
照れくさそうにそう言うユースティスの横顔を、月が照らす。

――綺麗だなって、思った。

……そうだ。礼と言っては何だが――

「ん?」

突然ユースティスが身を乗り出し、ひのでの顔の前に顔を近づけた。

「目を閉じてくれ」

「えっ、ちょっ、おま――

反射的に抗議しようとした声は、唇に落ちた静かな感触によって、ふっと途切れた。

優しい、でも逃さないキス。

ひのでは目を開けたまま、言葉をなくして、ユースティスの瞳を見つめ返す。
その瞳は、普段の冷たい硬質ではなくて――どこか、熱を孕んでいた。

「貴方が、今の私を肯定してくれるなら――
……私は、それを信じてみてもいいかもしれない」

頬が赤く染まったユースティスが、そっと耳元で囁く。
……だからこれからも、私のそばにいてくれ。頼む」

…………ずりぃな……

怒っているのか照れているのか分からない声で返しながらも、ひのでは小さく笑って、ユースティスの手を取った。
――そのまま、もう一度唇が重なった。
今度は、ひのでも目を閉じたまま。

何も言わずに。

お互いの温もりだけで、想いを伝えるように。


読んでくれてサンキューなのだよ