オマケストーリー
その夜。
神殿の回廊を歩くひのでは、ふと夜風の中で立ち止まる。
(ユースの過去、全部は分かんないけど
――)
あの夢で見た姿は、確かに“今に繋がっている”。
「
……だったら、今のあいつのそばにいることで、俺も何かしてやれたらいいな」
ぽつりと呟いて、空を見上げた。
そして、気づかぬまま。
石柱の陰で、その言葉を聞いていたユースティスが、
ほんのわずかに目を細めていたことを
――知らなかった。
月が静かに照らす神殿の中庭。
誰もいない、静かな夜。
昼間の会話が頭から離れず、眠れなくなったひのでは、外に出ていた。
「
……はぁ。なんか、変な感じだな」
あのユースティスが、自分にあんな風に心を開いてくれるなんて。
嬉しいような、そわそわするような、くすぐったいような。
――と、そこに足音がした。
「こんな時間に、何をしている」
振り返ればユースティスがそこに立っていた。
「ユース
…… びっくりした。寝ないのか?」
「
……貴方が出て行ったのが見えたから、気になって」
彼の声音は、どこか柔らかくなっていた。
⸻
二人、並んで中庭の石段に腰をかける。
ひのでは、少しだけ間を置いて、口を開いた。
「
……なぁ、ユース。今日、俺の話
……ちゃんと聞いてくれてありがとうな」
「
……こちらこそ。君のおかげで、少し
……楽になった」
照れくさそうにそう言うユースティスの横顔を、月が照らす。
――綺麗だなって、思った。
「
……そうだ。礼と言っては何だが
――」
「ん?」
突然ユースティスが身を乗り出し、ひのでの顔の前に顔を近づけた。
「目を閉じてくれ」
「えっ、ちょっ、おま
――」
反射的に抗議しようとした声は、唇に落ちた静かな感触によって、ふっと途切れた。
優しい、でも逃さないキス。
ひのでは目を開けたまま、言葉をなくして、ユースティスの瞳を見つめ返す。
その瞳は、普段の冷たい硬質ではなくて
――どこか、熱を孕んでいた。
「貴方が、今の私を肯定してくれるなら
――」
「
……私は、それを信じてみてもいいかもしれない」
頬が赤く染まったユースティスが、そっと耳元で囁く。
「
……だからこれからも、私のそばにいてくれ。頼む」
「
…………ずりぃな
……」
怒っているのか照れているのか分からない声で返しながらも、ひのでは小さく笑って、ユースティスの手を取った。
――そのまま、もう一度唇が重なった。
今度は、ひのでも目を閉じたまま。
何も言わずに。
お互いの温もりだけで、想いを伝えるように。

読んでくれてサンキューなのだよ
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