usagipai
2025-06-04 21:52:38
8912文字
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ユスひの



結局ひのでは、ユースティスに剣の構えを教わる羽目になった。
「!」
「違う。肩の力を抜いて。腰は……もう少し後ろ。そうそう」

「ぅッッ!?むりむりむりむり!!色々心臓に悪ッッ!」
「お前、敵に懐に入られたらどうするんだ。これは基本だ」
「ちがう違う違うそうじゃない~~~!!(物理的な意味じゃない!!!)」
近いし経験したことないしで思わず色々力んでしまう耳まで赤くなるひのでに気づかず、ユースティスは真剣そのものだった。
その真面目さが、またこそばゆくて。

――でも、今だけは。

この優しい時間が、ずっと続けばいいのに。
そんなふうに、ひのでは思った。
そして賑やかも楽しい日々が始まった、帰れるまでの間ユースティスの家で過ごすことになり、初めての家事や神殿の時には見なかった珍しいものなど触れたり、イタズラしたり、ユースの知らない一面たくさん知っていった
ある日、戦場に向かうことになったユースティス別に珍しい事ではなかった騎士団の団長だ、当たり前のハズなのにこの時だけ胸騒ぎが治らなかった

夜なんとなく寝れなくて、焚き火の炎が、ぱちぱちと音を立てていた。
ユースティスが森の奥へ向かってから、もうかなりの時間が経っている。
(遅い……
月がずいぶん高くなっていた。
ひのでは、なんとも言えない違和感に胸を掻きむしられるような気分だった。
(おかしい、とっくに帰ってきてもおかしくない)
こんな“夢”の中で、妙に冷静に状況を整理している自分も変だ。
でも、夢じゃないとしたら──
……ユースティスが、危ないかもしれない」

その瞬間、頭より先に、身体が動いていた。



風が強くなっていた。
森の奥へ進むたび、木々の枝が揺れ、乾いた土の匂いが強くなっていく。
少し外れの森に辿り着くと
唐突に──鼻をつく、血の匂い。

……え?」

ひのでは立ち止まった。

草むらが、赤く濡れていた。
刃で切り裂かれた形跡、転がる布、割れた木の盾。

そこは、つい数時間前まで“戦場”だった。
!」
足が自然と駆け出していた。
まるで、何かに導かれるように。
そして。
暗がりの中――倒れている青年を、見つけた。

「ユースティス!!」

ぐしゃ、と膝をついて駆け寄る。
胸が苦しかった。視界が滲む。
血まみれの服。浅く速い呼吸。焦点の合わない瞳。
折れた剣が、彼の傍らに転がっていた。
「おい……起きろ!!ユース!!」
身体を揺する。返事がない。
それでもひのでは、手を掴んだ。
冷たい。だけど、まだ――生きている。

「しっかりしろよ!起きてくれ……!」

すると、かすかにまぶたが震えた。

…………?」
「!俺だ……ひので!何でこんなボロボロで……!」
彼の瞳が、うっすらと開く。
……ああ、君…………
弱々しい声。それでも、微笑んだ気がした。
……無事で……よかったでもここは危ない早く逃げろ
「そんなことどうでもいいだろ!お前が……っ」

ひのでは言葉を詰まらせた。
手の中の熱が、どんどん奪われていくようで――
「なぁ……死ぬなよ……
その言葉が、ぽろりと零れた。
するとユースティスが、そっと目を細める。

「君は……不思議だな。……まるで、全部を……知ってるみたいだ……

「知ってない、知らねーよ……でも、」
言いかけて、ぐっと奥歯を噛んだ。
泣きそうになる自分が悔しかった。
だって――俺は、本当に“何も知らなかった”んだ。

あのユースティスが、こんなにも傷ついて、こんなにも血を流して。
それでも誰かを守っていたことも。
こんなふうに、命を削ってまで“正義”を貫いていたことも。
「こんな……こんな大事なこと、ジュピターも、誰も、教えてくれなかった」

その言葉に、ユースティスの目がわずかに揺れた。

……ジュピター……?」
……いや、なんでもない今はそんな事どうでもいいそれよりも」

そう言うと、ユースティスの手が、そっとひのでの頬に触れた。
優しくて、儚くて、もう消えてしまいそうな力。

「ははなんだいそれ……
ユースティスは弱々しく笑った。
「でも…………君が……ひのでが……最後にいてくれて……よかった君との時間は宝物のようで幸せだった、ありがと……

その言葉を聞いた瞬間、ひのでの胸は締め付けられた。
ゆっくりと落ちていくユースティスの瞼を見つめながら、ひのでの頬を一粒の涙が静かに伝った。

彼の最後の姿――それは、今まで見たどんな顔よりも儚く、そして美しかった。
生きているユースティスしか知らなかった自分。
だが今、初めて彼のすべてを知った。
痛みと後悔、強さと優しさ。揺るぎない信念と壊れやすい心。

そんな彼の原点を見てしまったからこそ、ひのでの胸はどうしようもなく揺れてしまう。
「ずっと……こんな奴だったんだな」
目の前で静かに消えゆく彼に、どうしようもなく惹かれてしまった自分を、ひのでは否定できなかった。

ただ、言葉にできない想いが胸に溢れて、涙がこぼれ落ちる。
それは悲しみでも、悔しさでも、切なさでもない――
言葉にならない、ただの“愛しさ”だった。

しかし時間なのだろうかゆっくりもさせてくれないようで
次の刹那