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かずきち
2025-06-02 00:37:28
4983文字
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夜っぽいのまとめ
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なんにもない日、なんでもない時間
ソファに座って雑誌をめくっていた郁の隣に恋がやってきた。あー、とかわー!とか唸っているので気になって、文字から視線を外してチラリと見やるとスマホを横に持ってゲームをしているようだった。確か直助と同じものにハマっていて盛り上がっていたような。いや、いつだったか剣介とマルチプレイしようと約束していたやつだったかもしれない。膝に肘を乗せて前傾姿勢でゲームをしているせいで画面がよく見えなくてどれをプレイしているのか判別がつかなかった。まあ、後で聞けばいいかと諦めて恋の背中へ視線を移す。寒さも薄らいできたから着ているものも薄手で、襟元がゆったりとあいていて首筋が晒されていた。
ふむ、と、郁はソファの背から身体を起こした。普段から時間の共有をしているぶんこういう動きくらいでは気にも止められないのをいい事に、ゲームに夢中になっている恋にそっと近付いて、うなじに舌を這わせてやわく噛む。
「きゃー!?」
想定以上の反応をする恋の悲鳴がおかしくてイタズラのしがいがあるなあ、なんて呑気にしていれば反射で首をおさえた恋が丸くした目で郁に振り向く。
「なになに!?どしたの!」
どうしたと聞かれても、理由あってのイタズラではないので郁は出した舌をべ、と仕舞わないまま首を傾げてとぼけてみせる。それであらかたを悟ったのかぷくりと頬を膨らませてじっとりと郁を睨め付けられる。じっとり。
流石に怒らせてしまったかと謝ろうとしたら恋の手が伸びてきて、耳を摘まれた。少し強めに込められた力に、これは仕返しがきたと思ってそちらに意識を向けて油断していたら、舌ごと口に含まれた。けれどそれは少しだけ、ほんの少しだけで、すぐ離れていった後のむくれ顔が、摘んでいた耳を優しく引っ張る。
「あーとーで!」
「あはは、残念」
それだけやって、後引かれる素振りもなく元の姿勢に戻ってしまう。どうやら恋の今の最優先は画面の中のスコアのようだった。だが郁は郁で後回しにされて残念だと言っておきながらその扱いに不満を抱くでもなく、途中だった雑誌をまた開いて読みはじめる。戯れが楽しいだけで二人とも続きなんて期待していなくて、雑誌を読み終わっても、ゲームが終わっても、きっとまた別の話をするのだろう。
思いつきのイタズラなんて、こんなもの。二人にとってそういう時間も幸せなだけ。
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