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sunny_seven224
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HQ【佐久侑】ログ
HQ
佐久侑のSSまとめです
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すべては桜のせい
凍えるような寒さから一転、自分の誕生日あたりから一気に春めいて、けれどバカみたいに気温が上がったかと思えば真冬並みに急降下。
加えて年度末というこの精神的にも肉体的にもダメージの多い3月末が憎かった。
バレーボールとは関係のない業務に追われ、気が付いたら4月。
真新しいスーツに身を包んだ新入社員を迎えて、再び慌ただしい日々を送ることになる。
金曜日の午後十時。新人にとっては初めての週末。
令和になっても滅ばなかった歓迎会に1日分、いや明日の分まで体力を奪われた気がして盛大に舌打ちをした。
ものの考え方や価値観、全てが違う新人たちは、自分とは別の生き物のように思える。それは毎年更新されていて、ああこうやって年を取っていくんだなと毎回辟易した。
それなのに俺は何故かいつも参加していた。
……
いや、"させられている"。
それもこれも。
「っあー!だるかったぁ!」
脱いだジャケットを片手に、俺の前をだるそうに歩くこの金髪がいつも無理矢理引きずり込むせいだ。
「スーツめんどいわぁ 着るだけで肩凝る」
なぁ臣くん、と諸悪の根源が振り返った。
「若い子らの話はよぉわからんわ」
「ジジイだな」
「うっさいなぁ!まだピチピチや!」
歩く速度を緩めて俺の隣に並んだ自分より少し背の低いそいつは大きく欠伸をしてだらだらと歩く。
「なんで毎回連れて行くんだ」
「いや臣くんが勝手についてってるだけやん」
「無視してもしつこいからだろ」
「なんやかんやゆうて優しいんやから臣くんは」
話が噛み合わないことを全く気にせずそいつは笑う。
何を言っても無駄だと俺はため息をつく。
いつになく機嫌がいい金髪がまた俺の前を歩く。しかし、自宅へ向かっているはずの足はどんどん明後日の方向へと進んで行った。
「
…
おいどこ行くんだ」
今日はスーツだから当然足下もスニーカーではなく革靴だ。履き慣れていない靴で寄り道をするのは避けたいし土の多い所を歩くなんて論外。あと単純に疲れて一刻も早くベッドに入りたかった。
そんな俺を無視してそいつはずんずん突き進み、気付けばあまり来たことのない川辺へと連れて来られていた。
「
…
帰るんじゃないのか」
立ち止まった奴の隣に自分も並ぶ。
「やーここ最近くっそ忙しかったからやぁ、全然拝めてないなぁ思て」
「は?何を」
「これこれ」
指を差す方へ顔を向けると、そこにはついこの間満開になった桜が俺たちを見下ろしていた。
「綺麗やなぁ」
「お前でも綺麗だと思うんだな」
「ひどっ!あ、そやそやえぇとこ見つけたんやった」
こっちこっちと腕を引っ張られ、まだどこかへ連れて行かれるのかとげんなりした。
「おい、引っ張んな」
「見て見て!めっちゃ懐かしない?」
結局引っ張られたまま連れて来られた先には1台の自動販売機。しかも缶ビールしか売られてなかった。
趣のある酒屋の軒先に佇むそれは、いわゆる「古き良き時代」からぽつんと取り残されていて、まるで自分たちが幼少期にタイムスリップをしたかのような感覚になった。
「1回これで買ぉてみたかってんなぁ」
「は?まさか飲む気か?」
しつこいようだが今日は歓迎会があって今はそれの帰りだ。後輩や女性社員たちに囲まれジョッキ片手に大口開けて笑っていたこいつを思い出す。
「酔い潰れても連れて帰らねぇぞ」
「えぇ?臣くんあんだけ俺のこと見てたくせに気付いてへんの?」
「
…
なにが」
ニヤニヤした顔に腹が立つ。なんだよクソが。というかお前のことなんか見てねぇし。
「え!ペイペイ使えるやーん!」と手際よく決済を済ませると、間もなくガコッと音がしてシルバー色の缶が落ちてきた。
「俺、飲んだん乾杯の時だけであとはノンアルやで」
「
…
は?」
「飲むんなら臣くんと2人で飲みたかったし」
やからこれ2杯目、と缶を持ち上げて笑った。
……
だったら
「ひとりにするなよ」
「へ?」
「
…
いや。1杯であのテンションとかイカれた奴だなと思って」
「臣くんは俺の悪口言い続けな死ぬ病気なん」
俺の憎まれ口にちゃんとツッコミを入れて、そいつはヘラっと笑ってプルタブを倒した。
腹が立つ。
毎度毎度しつこく誘って連れて行くくせに、いつの間にか隣からいなくなっていて他の奴らとよろしくやってるこいつに。
なのに俺と2人で飲みたかったなどと宣う。意味がわからない。なら最初から参加しなきゃいい話だ。
スマホを取り出して自販機のボタンを乱暴に押した。ピーという間延びした音と缶が叩きつけられる音が重なる。奴が「おっ!いっちゃう?」と茶々を入れたのに舌打ちをした。
ひんやりした缶が手のひらの熱を奪っていく。辛口は好みじゃない。我ながら勢いが過ぎたとため息をついた。
「お、こっからでも綺麗に見えるやん」
土手を上がった先にあるこの酒屋からは先ほどまでいた川辺の桜が見えていて、隣にいる奴はさておき確かに絶景だった。
「この店ボロ儲けやな」
「この時期はな」
ビールを口に含む。焼けるような炭酸が少し痛い。
「それにしても臣くんファンが多くてかなわんわ」
「は?なんの話」
「牽制かけんのめんどいねんからちょっとは有り難く思ってや」
意地の悪い笑みを浮かべそいつはビールを煽った。
「だったらひとりにするな」
今度ははっきり面と向かって言ってしまった。ビールのせいにしてしまいたいが生憎そこまで減ってない。
突然上体が傾いた。何事かと思考を巡らせる前に唇同士が重なった。ネクタイを引っ張る強引な手に抵抗するが中々離れない。クソ、この馬鹿力。
キスは、しかし恐ろしく柔和で優しかった。諦めて素直に応えると、ネクタイを握る手が腰に回された。もしも勢いでビールをこぼされたら思い切り蹴ってやろうと思った。
「
…
2人でおると絶対邪魔入るやん?」
体をくっつけたままそいつが言う。
「臣くんかて静かなグループにおりたいやろ?」
駄々をこねる子どもを諭すような言い方にむかついた。
「それに、俺は楽しみを最後にとっとくタイプやし」
「
…
なんだそれ」
俺が聞くとまたニヤついた顔をした。ほんと腹立つなこの顔。
「鈍いなぁ臣くん、俺なんのためにノンアルにした思ってるん?」
「
……
」
「あとさぁ、この道真っ直ぐ行ったらどこに着くと思う?」
ざあっと風が吹き抜けた。夜桜の枝が揺れ、花びらが雨のように降り落ちる様が幻想的で、澄んだ空気も心地よい。
…
ああ、こういう日じゃなければ
ネクタイを引っ張り額に唇を落とした。
「
…
酒、強くねぇくせに勃つのかよ」
「はぁぁ!?ガン勃ちですけどぉ!?俺かてふにゃチン突っ込まれんのいや、ほがぁ!」すかさず両頬を力いっぱい掴んだ。
「うるせぇ声でけぇ」「いひゃいおみくんいひゃい」
でかい舌打ちをかましてやったら「せめてチューで黙らしてや」などと言うので苛立って代わりに唇を噛んでやると、そいつはあははと笑いやがって舌を器用に俺の口内に潜り込ませた。
片手にぬるくなったビール、もう片方は互いの腰。
満開の桜をバックに夜風にあたりながらキスをする、なんて言ったら風情があるように聞こえるだろうが実際はただただイカれた野郎どもが噛み合っているだけだ。
「
…
ちなみに、」「あ?」
「俺はこれが1杯目だ」
目の前に缶をちらつかせ飲んでみせると、そいつは目を丸くして驚き、けれどすぐに不敵な笑みを浮かべ、「上等や」と啖呵を切った。
…
こういう日じゃなければな
お前のせいだよ、と嫌味なぐらい咲き誇った桜を睨み付け、浮かれた野郎とともに秘め事の場へと向かって行く。
*******
あ、イく もうイくっ
別に言いたいわけじゃないのに口から勝手にこぼれ落ち、間もなく絶頂を迎えた。相手ももうすぐだなと思っていたらふいに繋がりが断ち切られ、しばらくして精液がゴムの中に吐き出された。
肩で息をしながら相手をぼんやり見る。
臣くんは絶対、イく時俺の中から出て行ってしまう。
その瞬間ふたりの世界がぷっつり切られたように思えて、実はほんの少し寂しさを感じていた。
…
絶対ゆうてやらんけど。
事が済めばさっさと離れていく体を、今日は引き留めた。
「
…
おい、さっさと片付けろ」
掴んだ腕をぐっと引き寄せ唇を重ねる。抵抗されようが構わない。
出したばかりの俺の精液が臣くんの体を汚した。あーあ、あとでブチギレられんなぁこれ。
「おい」
「ひとりにすんなゆうたんは誰?」
「離せよ」
「なぁ中に出してや」
「は?」
「俺かてひとりはいやや」
臣くんが目を見開いてしばらく俺を見つめる。
そして強気に微笑んでおでこに唇を落とし、またゆるく勃ち始めている俺の性器に手をかけた。
「寂しいのか?」
「はっ それは臣くんやろ?」
鼻で笑ってこの腹立つ恋人の唇に噛み付いた。
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