HQ【佐久侑】ログ

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佐久侑のSSまとめです


休日


タブレット端末で試合映像を見ている後ろ姿をじっと見つめる。
小さい四角の中にいる人間たちを食い入るように見る姿は、後ろから見ていても真剣だというのが伝わった。
朝イチで染めてきたという金髪は真新しく輝いている。綺麗に刈り上げられた襟足部分に思わず手が伸びそうになったが、さすがに怒られるだろうと我慢した。

今日は丸一日オフで、同じ空間にはいるがそれぞれやりたいことをやって過ごしている。俺は買ってそのままにしていた小説を読んでいるし、この金髪は次の対戦相手の分析をしていた。ブルーライトカットのメガネをかけて「かっこえぇやろぉ」と見せびらかされた時は無視した。
そいつはさっきから同じところを繰り返し見ている。セッターが丁寧に上げたトスを、スパイカーが完璧に打ち切る。その場面が気になるのか、画面を突っついては映像を巻き戻していた。映っている2人は自分たちより若い選手で、最近注目を浴びており代表入りも間近だと言われている。確かに、同じポジションとしては気になる相手だ。ぶつぶつ何かをつぶやき時折首や肩をほぐしながら、奴はいっそう見入っていた。
バレー馬鹿だな、と心の中で苦笑し小説に目を落とした。

半分ぐらいまで読んで栞をはさんだ。
眉間を軽く揉み首を回す。長らくほったらかしにしていたこの本は中々面白く、多分今日中に読み終えるかもしれない。
バレー馬鹿はまだタブレットと睨み合っていた。試合は最終セットにもつれ込んでおり、ここでもまた気になるシーンがあるようで何度も巻き戻していた。
ふとタブレット横に置かれたマグカップが気になった。ソファの上から覗くとすでに飲み干され、底が茶色く染まっていて乾き始めていた。どれぐらいこのままだったんだろう、茶渋が残るのは絶対に嫌だ。小さく舌打ちをして立ち上がり、マグカップを持って台所へ向かった。
水を溜め流してゆすぐ。泡立てたスポンジで洗おうとした時、後ろから抱きつかれた。
おい、邪魔だ」
「ごめん、全然気付かんかった」
片付けてもらったのを少しでも悪いと思ったのか、珍しくしおらしい。
2セット目の、」「うん?」
「お前が何回も見てたところ」
「あぁあそこな。臣くんも気になった?」
背後から顔を出し俺の手元を覗き込んだ。どうやら自分でする気はないようだ。しおらしいと思った自分を殴りたい。
「よく飛ぶ奴だな、日向みたいに」
かつてのチームメイトを思い出す。バレーをするには小柄だがそれをものともせず、誰よりも高く飛んだ。空中姿勢は、悔しいが惚れ惚れするほど美しかった。今も日本の裏側でちょこまかとコート上を駆け巡ってるんだろう。
「やんなぁ俺も思た。まぁ俺らも翔陽くんもえぇ年やしな。特に翔陽くんに憧れて真似する子ぉら増えてきたよなぁ」
で、勝てんの?そいつらに」
洗い終えたマグカップを水切りカゴに置いて向き合うと、そいつは「心外だ」と言わんばかりに片眉を上げた。
「はぁ?臣くん勝てんと思てんの?てかさぁ、」
詰め寄られ流し台にぶつかった。文句を言おうとした口を塞がれる。手入れの行き届いた指で両頬をなぞられ、それがなんとも腹立たしく仕返しに思い切り腰を引き寄せた。どんどん深くなる口づけに、体があつくなってくる。離すと唾液の糸がお互いの唇を繋げ、やがてぷつりと切れた。
何すんだいきなり」
文句を言う俺を気にもとめず、そいつは未だしつこく首周りに唇を寄せた。
「あかんで臣くん。せっかくふたりっきりやのに他の男の名前出したら」
ニヤリと笑う金髪の男。むかつく。お前だって同意しただろうが。腹立たしいぐらい整った顔を掴んで今度は俺からキスをした。お互い噛み合うように口づけ合い、気付いたらダイニングテーブルに押し倒していた。ギシ、と嫌な音がしたが今はどうでもいい。壊れたらこいつに弁償してもらえばいいし。
妬いたのか?」
「ははっ 臣くんこそずぅーっと俺のうなじばっか見てたやん。触りたぁてしゃあなかった?」
もう黙れよ」
クスクス笑う唇を塞ぐ。2人ぶんの体重が一気にのしかかったテーブルが悲鳴を上げた。
「っちょ、待ってテーブルつぶれる」
「じゃあ体重かけんな」
「無茶ゆうなやっ」
あーもう!と悪態をついて俺の体を力いっぱい押し返し、「ベッド連れてって」とぼそっとつぶやいて首に腕を巻き付けてきた。

あの小説の続きはまた今度だな
やれやれとため息をつき、俺の首を好き勝手舐め回すそいつの服の隙間に手を差し込んだ。