kanaco
2025-05-16 23:36:45
12216文字
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【3少信/4少仲良し】4少仲良し(信一愛されor総受)SS(単作)まとめ(フセッター時代)

1P~4P【チャージ!】信一が洛軍と十二と四仔にギュってしてもらって、ひたすらご満悦になるだけのはなし。
5P【包子】信一と十二が包子食べてて、洛軍と四仔が見守ってるだけのはなし。

【チャージ!】

■■【SAID:信一】■■

九龍城砦、自室、10:00。
信一はゆっくりと目を覚ました。

いつもに比べれば遅い起床時間である。それでも十分に睡眠がとれた清々しい目覚め……とは言えなかった。信一は寝返りをうつと未練がましく掛け布団の中に潜ったが、それでも数秒後、諦めたようにモソモソとベッドから這い出した。

体がだるい。
風邪などの病気的な体調の悪さではなかった。
単純に“疲れ”が抜けていない。

龍捲風の指示により黒社会関係の仕事で3日ほど九龍城砦を空かした。なかなかスムーズにいかないというよりは段取りが多い仕事であり、計画を狂わせないようにほとんど寝ずに奔走した結果、昨晩やっと帰ってきたのだ。報告だけはちゃんとしないと、と龍捲風に挨拶したところまでは記憶がある。しかしその後は砦に無事に戻れたことや兄貴に会えた安心感からか、脳は最小限しか機能しなかったらしく、今日ではどうやってベッドに入ったかさえ覚えていないような有様だった。

寝たから回復した、と前向きに考え、体を目覚めさせるために信一はググっと伸びをする。お気に入りの服に着替えて、ボサボサな髪も整えて、今日から日常が戻ってくる。部屋を移動すると机には信一のための朝食が作られていて、もう少し元気が出た。こんなサプライズをしてくれた優しい龍兄貴はすでに理髪店にいるだろう。自分も巡回に出なければ。



砦内にて厄介事が発生していないか目を配り、いつものルートを辿る。運が良いことに今日は住人同士の小競り合いすら起きていないようで安心する。

何しろ、体が鉛のように重いのだ。
(今日って一日中これ~?)
それだけで気分が滅入るんですけど、と信一は気落ちした。ネガティブに陥るとますます体が重くなるような気さえする。


「信一」

後ろから声をかけられた。振り向くとそこには良く知った人物……洛軍が立っていた。いつもの通りに信一を見つめる柔和で穏やかな瞳が、会わなかったのはたったの3日間だけというのに懐かしい。九龍城砦の敷地は広く高く、数日顔を見合わせないような住人も多くいる。しかし洛軍は信一の自室に近いところで就寝しているため、龍捲風を除けば一番顔を合わせる機会が多い友人だった。

「洛軍、おはよ。3日振り」
「おはよう。昨日の夜に会ったけどな」
「あれ?」

本当に覚えがない、とキョトン顔をする信一に洛軍は「気にするな」と笑んだ。
「昨晩、お前が龍兄貴に挨拶に来た場に俺もいたんだよ。でも信一はあの時本当にぐったりしていたから……ポヤポヤしていて会話もままならなかったし。足取りもおぼつかなくて、申し訳ないが俺が抱えて部屋まで運び込んだんだ」
「ああ~そりゃ悪かった。サンキュ、洛軍。重かっただろう」
「かまわない。それに信一は軽いから。でも心配はした。回復したか?」
「したした」
…………そうは見えないが」
洛軍が信一に近づいて、眉をひそめながら顔色を覗った。指でそっと目の下に触れてそこにある隈をなぞる。
「顔色が優れない気がする。今日は1日休んでいた方がいいんじゃないか?」
「そういうワケにもな。3日分の仕事は溜まっているし、それにダルいけど別に具合が悪いとかじゃないから」
信一は「それでも納得いきません」みたいな表情をする洛軍の肩を安心させるようにポンポンと叩く。

出会ったばかりの頃の洛軍は他者への拒絶のためか表情に乏しさがあったが、九龍城砦の住民たちに、そして龍兄貴に受け入れられてから次第に柔らかな人間になっていった。相変わらず雄弁な方ではないが、素直なので感情は伝わりやすい。経歴不明で謎ばかり持つ男だが、自分たちの前で素が出せてきたというならば、信一にとって嬉しいことだった。

だからこのように洛軍に率直に心配を寄せられると、なかなか心に刺さるものがある。相手が十二や四仔であればワガママを言ったり反抗したりと躱したくなるのに、洛軍が相手になるとそういかないのだ。それに心優しい洛軍には心配をかけたくないし、情けない姿も見せたくはない。まぁ、自室へ運ばれている時点で手遅れかもしれないが。

「大丈夫だって、ほら」
このまま洛軍と喋っていると「仕事しなきゃ」という奮起が萎みそうだ、と信一は場を去ろうとした。しかし3歩ほど進んだところで、クラリと小さな眩暈がしてヨタリと足を縺れさせる。立ちっぱなしで喋り続けていたのが良くなかったのかもしれない。

「わっ」と小さく声を上げた洛軍が慌てて信一の体を抱きとめた。そうして不満そうな顔がますます深まる。
………四仔のところまで運ぶか?」
「いや、ちょっとよろけただけで、本当に大丈夫なんですけど」
思わずの敬語になりながら(困ったな)と信一は思った。洛軍は優しい男だが、押しが強い男でもある。基本的に他者の意見を優先してくれるが、自分がそうだと思ったら融通が効かない一面があるのだ。今、洛軍は信一に対して過保護なモードに入っている気がする。こうなってくると「大丈夫」と信一がいくら言っても納得してもらえる可能性は極めて低い。

どうしたものかと考えていた時、ふと今の自分の状態に改まった。倒れてしまわないように洛軍にギュっと体を抱えられているままだ。つまりは抱きしめてもらっている状態なのだが、どうもこれが落ち着いて心地がよい。体を動かす億劫さや気持ちの塞ぎに対し、優しくじわじわと効いている気がするし、これって回復しているのでは。そして回復の兆しが見えれば洛軍も納得するのでは。

「洛軍」
「なんだ」
突然に名前を呼ばれて、本人がキョトンと首を傾げた。
「四仔のところには運ばなくていいけど、悪いがしばらくこのままでいてくれね?」
「このまま?」
疑問符を浮かべる友人に、信一は軽く自分の体を押しつけた。
「んー。なんかこう……、この体勢が癒される、かも」
それを聞いて目をパチパチとさせた洛軍は、それでも信一の言うことに対し素直であり、体勢を解くことはせずに好きなようにさせていた。少し考えたような素振りもみせる。
「そうか」
そして突然、信一の膝に腕を通すと体を一気に上へ抱き上げた。
「うわっ」
突然に浮いた自分の体に信一が驚いた声を上げる。
「ええっ、何してんの!?」
「言っただろう、信一は軽いから大丈夫だ」
全く成立していない問答をして、落ちるのを回避しようと信一が自分にしがみついたのを確認した洛軍が悠々と歩き出す。
「抱くのはいいが、あそこでは少し目立つからな」

(いや、どう考えてもこの運んでる姿が一番目立つだろ)

という事実は、抱えられたことで目の位置が高くなった自分を見上げてくる、キラキラと輝く温かい瞳に封じられてしまう。この「オール善意です」みたいな顔、何をしてても強すぎるよなぁ~と信一は苦笑を禁じ得ない。

(まぁ、いいかぁ)

洛軍が建物と建物の隙間の奥、通路を歩く人々から死角になる場所まで信一を運びこみストンと優しく下に降ろす。

(紳士~。いや、どっちだこれ。むしろ連れ込まれてんのか?)

そんなことをツラツラと考えているうちに、洛軍が改めてやんわりと信一を抱きしめる。その腕の緩さ加減、柔らかさが丁度いい。戦闘ではあんなに力強く豪快に暴れるというのに、信一に触れる時はいつも丁寧で気遣いを感じる。穏やかに背中や頭を撫でてくれて、くすぐったそうに笑う信一と同じように微笑んでくれる。波長が合うのだ、この男とは。

「ん~」
これぞ洛軍だ。優しい、安心感がすごい、そして癒される。

「好きなだけいいぞ」
「ははは、洛軍チャージ!」
信一が顔の顔をあげて朗らかに笑うと、洛軍も合わせるようにニッコリと微笑んだ。