kanaco
2025-05-15 21:18:22
12505文字
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【四信】四信SS(単作)まとめ(フセッター時代)

1P【零れた涙】1度だけ抱いた四仔さんと、1度だけ抱かれた信一くん
2P【その切っ先を向けて】四仔の包容力を信じ切っている信一くんと、彼が思うより心砕いている四仔さん
3P【蜂蜜入りホットジンジャー】睡眠不足の信一くんと、相手がして欲しいことをしてくれる四仔さん
4P【鏡(R18)】四仔さんにも甘えたい日はあるし、満更ではない信一くん


【鏡】

四仔は酷く落ち込んだり疲れたりすると、甘えることに躊躇がなくなる。

今日もそうであった。朝、廊下ですれ違いざまに「本を返したい」と言った時、診療所ではなく自室を指定された時点で怪しいなと信一は思ったのだ。夜になって借りた書物を返そうと四仔の部屋を訪れた時、年上の恋人は朝の時点よりさらに疲れた顔をしていた。いつもの軽口を叩くような気分にもならないようだった。

こういう時、信一は変にちゃかすなど口にしないようにしている。どうして欲しいかは四仔が自分で決めるからだ。部屋に入ってドアがパタリと閉まった瞬間、四仔が信一の腕をひいて力強く抱きすくめた。突然の行動に驚いて、持ってきた本が床に落ちてページが散らかる。

「四仔」
「いい」

静かにも断る声。四仔はマスクを被っていない。自室でその必要はなく、信一の前で被る必要もない。端整ながらも傷だらけの表情はいつもの飄々として余裕ある雰囲気を潜め、瞳の奥に縋るような光を漂わせていた。信一は右手でポンポンとあやすように叩き、左手で慰めるように頬の傷跡を撫でた。

「どうした?大丈夫か」

四仔の瞳の奥が少し和らいで、信一に対する愛しさを灯す。四仔は自分のことをあまり語る方ではないし、天邪鬼な態度をとることも多い。それでも恋人として過ごすようになってから、信一は彼の機微をより感じ取れるようになっていた。マスクのせいで表情に乏しく口数も少ないことに隠されているが、四仔の行動は実は何事もストレートなことが多い。

恋仲になる前、片思いの最中はそれに気がつかず心痛めたこともあったが、でも今なら分かる。特に、そう。こういう四仔が自分に甘えたいと思っている時はいつも以上に素直なのである。

「ね、する?」
俺、準備してきたよ。

悪戯っ子のように微笑んだ信一が恋人の耳にそっと囁く。一度目を閉じた四仔が口元に穏やかな笑みを浮かべ、コツンと信一の額に自分の額をくっつけ、抱きしめる腕に力を込めた。次にその囁いた唇をゆったりと合わせる。四仔の大きな口が自分の口を塞いだので、信一が誘うように小さく舌を出せば絡めとるように彼の舌が入ってきた。

「んっぅぁ...」

口腔で触れ合う柔らかくて温かい舌の感触。塞がれる喘ぎは口の端と鼻から洩れるように抜けていく。唇と体を密着させたまま、もつれるように不安定な足取りで2人は四仔のベッドへと移動した。四仔がトスンとベッドの端に腰をおろし、信一の体をくるりと外むきに変えて、何故か信一の目を大きな手のひらで覆うと、空いている方の腕でそのまま細い腰を自分の前へと引っ張った。

「あっ」

体の向きが変わったせいで唇が離れたのが寂しい、しかもこれじゃお前の顔が見えないと出た声に、四仔が小さく笑う。四仔の股の間に座らせられた信一はもう一度後ろから片手で抱きしめられたので、そちらの逞しい腕をスリスリと撫でた。

四仔が信一の後頭部にキスを落とす。そして耳。息がかかって耳たぶがやんわりと齧られて引っ張られる。くすぐったさともどかしさに小さく身をよじる信一を気に留めず、四仔がカチャカチャと信一のベルトに手を伸ばしてそれを外した。信一は目を閉じて耳に与えられる刺激に夢中になりながらも、パンツや下着を脱がそうとする四仔を手伝って腰を浮かせる。脱ぎ捨てた服が下に散らばると、今度はシャツのほうに手がのばされた。しかし四仔は上から4つまでボタンを外すと、シャツは着せたまま下から手を服の中へ忍ばせて始めた。

「え………ん、あ、はぁ、へ?」

なんで?と目を開けると信一は目を瞬かせた。自分の目の前に等身大ほどの姿見が置かれていた。映るのはベッドに腰かける自分と四仔の姿だ。服装を一切乱していない四仔に抱っこされた自分だけが、下半身を丸出しにして、シャツすらもはだけけさせられて、四仔の手によっていいように顔をトロけさせている。赤に染まる頬の色は既に胸元まで広がってピンクに色づいていたが、目に焼きついた自分の姿にもはや全身が染まりそうだった。

「四仔、ちょ、これ、変態くさすぎっ」

顔を真っ赤にした信一がパシパシと四仔の太ももを叩いて抗議する。

「悪い」

そういう四仔の声は全く悪びれていない。その上、上半身をまさぐっていた手が信一に見せつけるように胸の突起へと触れてカリっとひっかいた。その光景ははだけたシャツの隙間から鏡にしっかりと映り込む。「あっ」と漏れる声とビクリと反応させた信一の肢体、そうしてその刺激に切ない表情すらもしっかりと映していた。

「だが、お前の可愛い姿が、俺に効く」
「もぉ~」
「それに……

「お前はもうちょっと自覚しないとな」
自分がどういう顔をして男を煽ってるのかをな。

……………お前、もしかして疲れてるんじゃなくて、怒ってるの?」

思い起こされるのは昨日のことだ。四仔と歩いていた時に、自分に色目を使ってきた九龍城砦の新人に絡まれて、たしかに挑発的な態度で躱した記憶がある。ちょっと際どい顔で揶揄ったかもしれない。

…………俺がこんなことするのはお前だけだぞ」
「当たり前だ」
憮然とした顔で四仔が言う。
「その上で、微塵もやりたくない」

話は終わりだ。とでも言うように、四仔が信一の左股関節下へと腕を滑り込まで、そのまま左足持ち上げた。その腕は信一の膝下へと移動して、足を掲げ広げさせたままで固定する。残った右腕が強引に信一の顎を掴んで右上へと向かせた。唇が重なる。少し無理な体制のままに、先ほどよりも情熱的に口内を荒らされて、吸われ、どちらのものとも分からぬ唾液が信一の口端から溢れていく。

四仔の右手はさらに移動して下腹部を手のひらでつぅーっと撫で上げた。信一の柔らかい腹がひくひくと痙攣する。左手もその大きく広げた太ももの内側を意味ありげになぞり上げた。今なお続くキスに鼻にかかった声を出しながら、信一は息をつく暇もなく頭をクラクラとさせる。やっと唇が離れて正面を向く。

鏡には、甘美さに喜びトロけた顔をしてはしたなくも大きく股を開いた自分が、四仔から与えられる愛撫に我慢ができないと腰をくねらす姿が映っていた。相手が好きでたまらない顔をしている自分が、その人に翻弄されている様は扇情的だ。まだキスと手による愛撫しか受けていないのに、肉茎からは先走る滴がとろとろと垂れ流し、ぬるりとした艶を放って誘っていた。その上、先ほどからずっと自分の腰に当たっている、四仔の欲望を隠さぬ固く膨らんだソレに気持ちがひどく煽られる。

興奮する。それにまるで、オシオキみたいな。
(誰にも微塵もやりたくないんだって)
執着を感じるほど、愛されていることを感じる。それが嬉しいしホッとしてしまう。

「せぇじゃい」
たまらずに舌足らずに声を上げる。
「何だ」
「な、さわって」

素直にお願いすると、ちゅう、とこめかみにキスが降ってきて四仔の大きな手のひらが前の方に伸びてくる。この後にやってくる気持ち良さと、さらに盛り上がっていく狂おしい程の快楽を期待して信一は嬉しそうに微笑んだ。