紫輝
2025-05-05 10:05:05
5939文字
Public リとヌと御仔の話
 

日刊うちの仔可愛い

リとヌと御仔の話の~2500字くらいまでの短編のまとめです。全然全く日刊ではない。思いついたら増えます(最終更新:10/18)


#04
 レヴィとリオセスリ殿が、片手を少し超える数の猫たちに囲まれている。色も大きさも様々なその猫たちは、所謂『地域猫』というものなのだろう。動物を愛する国民の多いフォンテーヌでその存在は珍しくない。
「つやつや!」
「そうだな。パパもこんなに毛並みのいい地域猫にはあまり会ったことないよ。毎日美味しいご飯をもらってるんだろうなぁ」
 動物に好かれるリオセスリ殿のさがを受け継いだレヴィも動物に愛される仔だった。小さな手に押し付けられる毛皮の感触を、レヴィは笑顔で楽しんでいるようだ。
「うーん、並んでくれたら順番に構ってやれるんだがなぁ
 その隣で触れた生き物の全てを籠絡する――と言うと彼は苦虫を噛み潰したような顔をするが、私は適切な表現だと思っている。なお“生き物”の中には私も入っていると認めよう――オーラと手つきで愛でるそばから猫たちに戯れられているリオセスリ殿の困ったような、けれど隠しきれない喜悦を滲ませたテノールが空気を揺らすと、まるで彼の言葉を解したように、猫達がその立ち位置を変化させた(ように見えた)。
 心なしか行儀の良くなった猫の輪の端、銀と、蒼と、黒の毛並みがいっとう愛らしい仔が一匹ひとり、その美しいラベンダーの瞳を輝かせながらしゃがむのを認めて小さく笑う。
 律儀に端から順に猫達を撫でてやっていたリオセスリ殿の手が、その仔を前にしてぴたりと止まった。向かい合いぱちりぱちりと、それぞれ困惑と期待を宿した瞳が二度ほどまたたいただろうか。
「あのね、ぼく、ぼくもまいにちおいしいごはんたべてるから、えっと、けなみ、いいよ!」
 いっとう愛らしい仔が口を開く。
「いつもパパととうさまがくしでおていれしてくれるから、つやつやでさらさらだよ!」
 一生懸命な主張があまりにも可愛らしくてそっと胸を押さえた。困った。うちの仔が可愛い。早晩縮んで消えてしまうのではないかとあり得もしない事を考えてしまうほど、心臓をきゅうと締めつけるその心情の正体が『愛おしさ』なのだと、今の私は知っている。
そうだなぁ。レヴィととうさまの髪は世界一綺麗だもんな」
 同じものに襲われていたのだろうリオセスリ殿が息をつくように笑って(流れるように褒められて違う意味で胸が締まった)『つやつやでさらさら』の毛並みをその指で梳り、しろい頬を両手で包み込むようにしてふにふにと撫でると、いっとう愛らしい仔は――レヴィは「んふふ」と満足げに笑った。
 そこまでを見届けて、そっと足を踏み出す。
 さて。リオセスリ殿とレヴィ、どちらに混ざりに行こうか。