紫輝
2025-05-05 10:05:05
5939文字
Public リとヌと御仔の話
 

日刊うちの仔可愛い

リとヌと御仔の話の~2500字くらいまでの短編のまとめです。全然全く日刊ではない。思いついたら増えます(最終更新:10/18)


#01

 レヴィの食が細くなった。好物のふわふわフレンチトーストも、とろとろスクランブルエッグも、フォークの進みがよくない。気分、とか、味覚の変化、とか思わないでもなかったが、ヌヴィレットさんのスープですらそのスプーンを進めさせないとなれば話は別だ。口に合わないかと聞いたら首を振られた。二人で触れて確かめた体温はいつも通り。痛いところや気持ち悪さもないと言う。いよいよ困り果てて顔を見合わせると、そんな俺たちを見て心を痛めたらしいレヴィが重い口を開いてくれた。曰く、「おおきくなりたくない」「おおきくなったらだっこしてもらえなくなっちゃう」。
 数日前に街で見かけた親子がそんな話――「大きくなったな、そろそろ抱っこできなくなっちゃうかもしれないなぁ」なる会話――をしていたのだと言う。そういえば抱き上げたレヴィに「大きくなったな」と声をかけた記憶がある。ヌヴィレットさんも「重くなったな」と口にした記憶があるそうだ。お互い我が仔の健やかな成長が嬉しい以外の気持ちはなかったのだが、どうやらタイミングがよくなかったらしい。食が細くなり始めた時期とも合致するので原因はそれに間違いないだろう。理由はわかったが意味はわからない。うちの仔可愛すぎないか?
 レヴィの愛らしさに撃ち抜かれた心がきゅんきゅんと音を立てるのを好きにさせて、恐らく同じことを考えているのだろう、表現の難しい顔で唇を結んでいるヌヴィレットさんを手招く。素直に寄ってきたこちらはこちらで可愛いひとを片腕で抱き上げると、慌てたようなテノールが降り、アイオライトがくるりと丸くなった。
「パパは結構力持ちなんだ。とうさまを片手で抱っこできるくらいな。それに、とうさまも本気を出すと俺を片腕だけで投げ飛ばせるくらい力持ちだ。だから、お前が少しくらい大きくなったって平気だよ」
 そんな事はしない、と不本意そうに呟くヌヴィレットさんをものの例えだよとフォローしつつ下ろすと、夜明けの瞳がちらりと睨みをくれてからレヴィを見つめる。
パパの言う通りだ。私たちにはお前が大人になってもお前を抱き上げてやれる自信がある。だから安心して大きくなりなさい。お前がたくさん食べて、元気に大きくなってくれた方が私たちは嬉しい」
 銀髪を撫でながら柔らかく言い聞かせるヌヴィレットさんと合わせてうなずく俺をじっと見つめていたレヴィが、わかった、と安心したように笑って。
「えっとおかわり、していい?」
 小さなカップ(レヴィ専用のスープ用カップだ)を差し出しながらそっと聞いてくるのに、ヌヴィレットさんと顔を見合わせて破顔した。