獣と獣の小話たち その二

pixivに上げていた同タイトルのまとめより、既にこちらに掲載済の作品を除いた短い作品たちの再掲となります



踊るか焦げるか




 海都がクガネの装いに変わった頃、今回はとあるキキルンが配っていた餅を皆が美味しそうに食べている。先程まで懐かしそうに異国情緒ある景色を見ていた二人がそろそろ帰るかと広場から出ようとしたところで、ふとクルウが渡された餅に違和感を覚えた。
「ねえディル、クガネの餅ってさ」
「ん?」
「こんなに活きが良かったっけ?」
 そう言ってクルウが差し出した袋の中では、とても元気な餅がグネグネと動いていた。



 さて、ここまで元気よく動いているならどう処理しようかと、ヴァルファイアで焼くか剣でさっくりと一刀両断するかで意見は分かれたが、ディルはそういえば……とこんな話をし始めた。
「いいかクルウ、餅はな……人を殺せるんだ」
「マジで?」
「マジだ。種族年齢問わず、ありとあらゆる人を殺してる。だから細心の注意を払わないとこっちも危険だ」
……ちなみにどうやって?」
「まあ大体は窒息だな」
「あー……
 クルウが袋越しに餅をベチベチと手で叩けば、止めろと言わんばかりに餅が弾んで抵抗する。確かにこれが喉に引っかかれば大惨事だろう。
「じゃあ、食べやすいように小さく切って熱して……そうだな、グラタンとかに入れようか。となればチーズが足りないかもしれないからマーケットまで下りて買ってきて……、トマトソースはまだ作り置きがあったな」
「もう対処法を思いついたのか」
「なんだよ、俺だって一応……伊達に調理師ギルド出てないからな?」
「いやさ、てっきり燃やして灰にして再起不能にするのかと」
「仮にも縁起物の食べ物だろう。なんてことしようとしてるんだ、ひんがしの国の人がよ……
 そうして呆れた後に、ディルに自由にしてていいと伝えてからクルウはマーケットへと向かって行った。

 そして時間つぶしにと都市外に出たディルは、この世ならざる強大な餅に挑む冒険者たちに混じって餅を分けつつ、やっぱり燃やすべきだと考えを固めた。