nuka_boshi
2025-04-24 15:30:16
28180文字
Public 利吉さんで賽殺しパロ
 

【RKRN】転生したら母親が伝子さんだった利吉さん その7【シリアス死ネタ】

遂に最終章です!!
冒頭から利吉さんが曇ります(ネタバレ)。
やったねあとはゴールするだけだよ!

前回の伝子さんに関しては割と罪滅ぼし編のレナ概念で書いてます。本作のメインヒロインは伝子さん。筆者は伝子さん過激派なので、汚いレナとか言ったら怒ります。
とはいえジェネリック伝子さんな上に、伝子さん視点だと実の息子ではない相手への対応なので原作伝子さんとは明らかに行動の内容が違いますね。

ちなみにエピローグ後にTipsを用意する予定なのですが、結構長い内容になりそうで戦慄してます。どうしてこうなった。
たぶん前回唐突に差し込まれたベルンの詩は誰が読んでいたか、Tipsでほんのりわかるかもしれません。……元ネタ履修勢じゃないと意味わからない可能性大だけど!!



 久方ぶりの孤児院に到着した私達は、子供達から想定以上の歓待を受ける羽目になった。正直な所、子供の相手というのは得意ではないし、真っ直ぐな視線もくすぐったいやら何やらで、少し困る。笑みがぎこちなくなっていたからだろうか、土井半助から「利吉君、子供達と接する時は心を開いて相手を受け止めるように、だよ」と耳打ちをされ私は背筋を正した。……忍者としての実績が幾らあろうと、きっと今の私は何も出来ない新人のようなものだ。覚える事が山ほどあるのだろうなと思えば、決して不安がないとは言えなかった。――けれど、それ以上に。真っ直ぐに私を見る子供達の視線に、応えたかった。
 私がこの孤児院での手伝いを申し出た最大の理由はここにある。あの日、乱きりしんから聞かされた事。嘗ての私が、この子達を戦場で助け出していたらしい事。それ故に、彼らから憧れの眼差しを受けているらしい事。――ずっと私が知らなかった、目を背けていた物に、きちんと向き合いたいと思ったのだ。
 ――そして、勿論あの日抱きしめてやれなかった息子にも。
 久しぶりに顔を合わせる息子は、私の事など覚えていないようだった。当然だ。まだ立ち歩きを覚えたばかり、言葉だってままならない彼にとって、私は知らない人間でしかない。
 だから――、私は彼に、父と名乗ることも出来ない。あくまでもたまたま顔が似ているだけの他人として、接する事になる。我が子の心を守るため、そして他の子供達を守る為に。
 だから、この『他人』としての距離は正しいものだった。私より知っている人間の方が安心なのか、小松田の足にそっとしがみつき、私を不安そうに眺める息子を――私はまだ、抱きしめることはできない。
 それでも。私は誰にも聞こえないように、子供達の歓声の中で小さく呟いた。
――――――ただいま」
 自らの心を軽くするだけの謝罪は絶対に口にしない。真実を明かすことも出来ない。けれど――これだけは言っておきたかった。伝子さんに言われた「おかえりなさい」の言葉には、碌に返事ができなかった。だから、たとえ何の言葉も返ってこないと知っていても、言うべきだと思った。
 私は努めて穏やかに微笑み、彼と他の子供達に視線を合わせて屈んだ。右脚に微かに痛みが走るが、そんな物は無視した。
――――はじめまして。私は、山田利吉。今日からここで、土井先生のお手伝いをする予定だ。――よろしくね」
 途端に私の事を既に知っている子供達から、「利吉さんの事ならもう知ってますよー!」「利吉さん、お話聞かせて〜!」と野次が飛ぶ。土井半助が「こらこら、忍者の仕事について聞くのはマナー違反だぞ!」と叱るのを、私は苦笑して宥める。
――そうだね、いっぱい話そうか」
 きっと、教えるべきことは山ほどある。プライドが高くて視野が狭かった私がどんな失敗をしたかも、――いつか聞かせる事もあるかもしれない。
 不安げな息子の視線に、私は穏やかな気持ちで笑みを浮かべた。
 ――ここに、いるよ。どんな時でも。たとえ離れていたって、きっとすぐそばに。君の、君たちの可能性を信じて、私は見守っていくよ。
 ……そしていつか。もし君たちが私のように袋小路の未来に迷い込んでも。何も信じられず頑なに目を閉ざし耳を塞いでしまっても。私はきっと、君たちに届くまでこの手を差し伸べられると思うから。……かつて伝子さんがそうしたように、今度は私が君たちを信じて手を差し伸べるよ。何度でも、きっと何度だって。
 だから、――はじめまして。そして、ここから始めよう。
 無数の可能性と鮮やかないろどりにあふれる、空の向こうのずっと先まで続いている、優しい未来を掴むための物語を。
 きっと平坦ではない、血と泥と苦難に塗れて傷だらけの未来を、それでも私は生き抜こう。
 ――私が消し去ってしまった大切な人達に、誇れる自分であるために。

 ――だから、やり直すのも、始めるのも、……きっとここから。

 愛する息子と再び会えたこの日から、きっと山田利吉わたしの物語は再び始まるのだ。
 私の穏やかな笑みを見て、息子は小さく口を開く。彼の告げようとした言葉は――私を慕う子供達が歓声と共に私に飛びかかってきた事でかき消された。
 ――――まあ、いいや。それでもこれからきっと、話す機会はある筈だから。
 これからは、夏の蝉達の声が知らないその先の未来を、私たちの手でいろどっていくのだから。

《完》