nuka_boshi
2025-04-03 18:53:21
26903文字
Public 利吉さんで賽殺しパロ
 

【RKRN】転生したら母親が伝子さんだった利吉さん その5【シリアス死ネタ】

さて、漸くこのパロもメインディッシュと呼べるところまで来たのではないでしょうか。
個人的にはエピローグ含めてその8までで終わらせたい所ですが果たしてどうなるやら。

ネタバレですが今回も利吉さんがめちゃくちゃ曇ってます、というかここからはクライマックスまで曇ります。大丈夫、エピローグのイメージソングは『そらのむこう』なので。

ついでに今回は瞬間最大風速イケメン滝夜叉丸回です。滝夜叉丸のことほぼ知らない段階でこれやるの決めてた過去の私の本気をご覧下さい。……と言いたいところですが、予想外の事が起きて爆笑しながら書いてたのでいまいちシリアスやれてる自信がありません、すみません。

ちなみに前回の利吉さんの名付け理由ですが、アレ実は初期想定になかったのですが、伝子さんの性格考えるとあの場でビンタに繋げるの無理だなと途中で気付き、10分で慌ててでっち上げました。つまり苦し紛れの大ウソ、土壇場の勢いによるセリフです。……一応漢字の意味に関しては調べ直したから多分矛盾してないと思うんですが、あそこだけ浮いてしまってたらすみません。



 夕暮れ時のスーパーマーケットはそこそこの賑わいを見せていた。私は道路に面した場所にある植え込みの傍らに立ち、道行く人々を眺めていた。
 下校途中の子供達の中には、かつて父が勤めていた忍術学園の生徒として見かけた顔触れがちらほらと存在している。……私の知る関係性とは違う、けれども幸せそうな姿。サイコロの目を違えたかのように、明らかにかつてとは違う光景。けれどもきっとそれが、この世界では当たり前なのだろう。
 ――と、ぼんやりと考えていた時だった。コツン、と何かが私の胸に当たった。胸に当たった何かは、厚紙をくり抜いて作ったと思しき戦輪に何かの紙を結び付けられていた。ソレが飛んできた方向を見ようとすると、
「とぅっ! 輪子ォーっ! 百発百中〜ッ!!」
 あまりに芝居がかった声の先に、滝夜叉丸は居た。「流石は室町の頃から衰えぬ、この腕前! スーパースター忍者の華麗なる妙技!」などと大袈裟にぐだぐだと自語りを始めている。鬱陶しいと呆れられそうなその姿だったが、それでも私は彼を見た瞬間、僅かに涙腺が緩みそうになるのを感じていた。――彼が投げて寄越したものを一応拾いながらも、話しかけようとしたその時だった。
「オイコラ滝夜叉丸っ! だから街中でそんな恥ずかしい真似するのは――ッ!? お、お前は!」
――――え? 君は……
 叫んだ彼はこちらに気付くと、私ををキッと睨み、勢いよくツカツカと足早に歩み寄ってくる。……その一歩一歩に確かな怒りを感じ、私はガラにもなく動揺し、反応が遅れてしまった。少年・田村三木ヱ門は沸々と湧き上がる怒りをその目に宿し、こちらを睨んでいる。
――今、滝夜叉丸から何を受け取った!? 寄越せっ!」
「お、おい三木ヱ門……確かに私の美しさに嫉妬しているのはわかるが私がファンに渡したプレゼントを横取りするのは流石に」
「そのわけのわからない演技いい加減辞めろよッ!」
 三木ヱ門の叫び声に、周囲の人々がギョッと目を向ける。叫び声に驚いた鳥たちが慌てて羽ばたく音、なんだなんだと声を上げる人々の声。騒めく周囲の音など耳にも入らないかのような様相で、三木ヱ門は滝夜叉丸に怒りと悲しみの目を向けていた。
……流石に僕にだってわかる。お前たち二人して、何か隠してる事くらい。そりゃ、友達だって言ったって、触れてほしくない事くらいあるのは分かってるさ。――けど! なんでソイツなんだよ!? タカ丸先輩から聞いたぞ、一昨日真夜中に誰かとコソコソ会ってたって! それもコイツの事なんだろう!? ずっと一緒に居た僕やタカ丸先輩より、交流も何もない怪しい奴を頼るってどういうことだよ!? 僕らはそんなに頼りないか!? ふざけんなっ! ――友達なのに、なんで隠し事するんだよ……ッ!」
 ずきりと胸が痛んだ。……そうだ、何故忘れていたんだ。今の滝夜叉丸は、彼の友人たちから心配される立場にある。元の世界に戻るため仕方なく、私は滝夜叉丸を頼っていた。けれどもそれは、滝夜叉丸に、彼を大切に思ってくれているであろう友人の心を踏みにじらせる行為だと、……頼るべきではないと、もっと早くに気付かなければならなかったのに。
……三木ヱ門……
「友達だと思ってるのは僕だけなのか? ……それとも、お前の言う『前世』のせいなのか? 本当に前世ってヤツがあって、それを僕が知らないから。だから僕にはお前に関わることも心配することも許されないって、そう言いたいのか?」
……すまない、三木ヱ門……
 悔しさに涙さえ流す三木ヱ門に、滝夜叉丸がそっと歩み寄る。そして、彼の手にそっと一枚の紙切れを渡した。
――お前がそこまで私の大ファンだったとは思わなかった! 安心しろ、お前の分のブロマイドもちゃんと用意してある!」
 堂々と発言した滝夜叉丸に、ピシリと空気がひび割れる音を聞いた気がした。――待て、この空気でその発言はどうなんだ。
「は……? ブロマイド……??」
「いや、何しろここにいらっしゃる利吉さんは前世からの私の大ファンでな! ファンサービスの一環として戦輪投げを披露しつつ、私のブロマイドを渡そうと思ったのだ。……ほら、よく見てみろ。今お前に渡したものと同じ内容だろう?」
 滝夜叉丸はそう言って私の手から紙製の戦輪に結んであった紙を外すと、それを広げて三木ヱ門に見せた。そこには薔薇を咥えた滝夜叉丸の写真がしっかりと写っている。……いやなんだこの状況。
「いやあ、流石は私! 美しすぎるのも罪というものだな! まさか三木ヱ門までをもこれほどまでにとりこにしていたとは! いや〜、このような身近にこれほど熱烈なファンが居ると気付けなかったのは確かに私の落ち度だ! ……と言うわけで、この戦輪も記念にお前にプレゼントしてやろう! なあに、利吉さんの分は後日改めて作るから遠慮するな!」
「ムキーっ、腹立つッ! そして要らないっ! 切実に要らない!!」
 三木ヱ門は怒りのままにペシャリと紙戦輪を地面に叩きつける。「ああっ、何をするっ!」と滝夜叉丸が悲鳴をあげるが、「人の心配をなんだと思ってるんだ!」と怒鳴り返されている。
「僕はお前が妙な犯罪にでも巻き込まれてたらと思って……ああもうっ、言うんじゃなかった!」
 そこまで叫んだ所で我に返ったのか、三木ヱ門は胡乱うろんげに目を細め、地面に叩きつけた紙戦輪を裏返す。
「ん? どうした三木ヱ門。やはり私の美しい戦輪が惜しくなったか?」
「ちょっと黙ってろ。……こっちには細工はなし、と。……滝夜叉丸、そっちの写真、もう一回ちゃんと見せてみろ」
「ほほう、つまり私の美しい写真が見たいと。なるほど確かに、この写真は最高の角度で撮られたものだからな! しっかり目に焼き付けておきたくなる気持ちも分からなくはない。だが欲張りは良くないぞ? お前には先程一枚渡したではないか」
「そうじゃない! 裏面とかどっかに何か伝言とかおかしな事書かれてないか確認するから寄越せって言ってるんだよ!」
 怒りながらバッと写真をひったくり裏返すと、三木ヱ門は眉を寄せた。
……なんだこれ。……落書き?」
「あーーーッ! さてはあンのアホ八郎!! 私の美しさに嫉妬して落書きしたなぁ〜!? おのれ許せんッ! しかし私の美しさに躊躇して顔に直接落書きしなかっただけまだ良心が残っていたと見るべきか……? いいや! やはり私のブロマイドに勝手に落書きする事自体許せんっ!」
 怒りに震える滝夜叉丸を見て、三木ヱ門は呆れたように溜め息を吐くと、『落書き』入りの写真を私に寄越した。
……とりあえず、僕の考えすぎだったみたいだから今日の所は見逃します。……けど、コイツ巻き込んでおかしなことしようとしてるって言うんなら、友人として警察に突き出しますから」
「あ、ああ……。わかった……
 最後に敵意の籠った眼差しを向けると、彼は滝夜叉丸を無理矢理引っ張ってきびすを返す。滝夜叉丸は「利吉さん、次こそは私の美しい姿をご覧にいれますから〜!」などとかつての世のような調子でとぼけてみせている。
 騒動の原因だった滝夜叉丸と三木ヱ門が去った事により、路上は徐々に平穏をとりもどしていく。……しかし私は、その場に足を縫い付けられたかのように動けなかった。――今更ながらに、私がここにいる事によって踏み躙っているものの重みを、思い知らされた気がして。
 カナカナというひぐらしの鳴き声が、『早く平静を取り戻せ』と私に囁いている気がして、私は急かされるままに三木ヱ門から受け取った写真を確認する。……確かに、無駄に気取ったポーズの滝夜叉丸の写真と、裏側に三木ヱ門の言うところの『落書き』が描かれている。……青・黄・赤・黒・紫の、色とりどりの、点が。
 ――五色米ごしきまい。忍者同士の暗号だ。
 五色米の組み合わせは、その城や身内同士、任務の内容で変える事が度々ある。故に滝夜叉丸からしてみればそれは殆ど博打ばくちに近かっただろう。だが、フリーの忍者として、忍術学園からの依頼を受ける事も度々あった私には、忍者学園の五色米の組み合わせは、ある程度見当がついた。
 ――こんや、にじ、おなじところへ。……今夜二時、同じ所へ。
 読み取った暗号を見て、私は深く溜め息を吐いた。……胃がじ切れそうだと思った。私はまた、この世界に住む罪なき人の心を踏みにじろうとしている。それどころか、他人にまで踏みにじらせている。だというのに、……すがれる場所があると思うだけで、こんなにもホッとしてしまっている。そんな情けない自分のどうしようもない弱さが――あまりにも浅ましく、辛かった。

 そこからの事は、――あまり覚えていない。いつ帰ったのか、どうやって帰ったのか、何を思っていたのか。ただ義務的に足を運び、ただ義務的に『山田利吉』の家へと帰った。――考えたくなかったのかもしれない。思考を放棄し、何もかもを投げ出したかったのかもしれない。
 そんな私を、山田伝子はただ心配そうな目で待っていた。彼女が「おかえりなさい」とただ一言、それだけを告げて私を抱きしめた時、私は自分の目から涙が溢れるのを確かに感じた。――暖かく、神々しい熱が、神懸かりの力が、……間違いなく彼女に宿っている。その絶望と、彼女のどうしようもない優しさが、私に涙を流させずにはいられなかった。